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閻魔リーマン  作者: 居飛車穴熊
1/2

働き方改革INあの世

これは、「働き方改革」、この言葉が使われ始めてそれなりの時が経った時のお話。


その言葉が日本の津々浦々にある程度浸透した時、

()()()から()()()に向かう人、

即ち、「死者」の中にも「働き方改革」についての知識を持つ者が増えていった。


()()()にそういった者が増えていった結果、

ある時、あの世の裁判所の一つ、「閻魔庁」にてある事が起きた。


いつものように、人頭杖、浄玻璃の鏡、閻魔帳を使い、

死者を裁かんとしている閻魔大王が死者と会話をしていた。



「・・・・・では、お前の生前の行いは、この閻魔帳、浄玻璃の鏡の通りであるな?」


閻魔は手元の閻魔帳と、閻魔の机の横の浄玻璃の鏡を見ながら、目の前の死者に向けて言った。


「はい、その通りです。」


死者は緊張の面持ちをしながらも閻魔の言葉を肯定した。


「そうか、ならばよし。では、次の変成王庁へ・・・」


閻魔がいつも通り裁判を終えようとしていた時、死者がこう言った。


「閻魔様、質問は受け付けておりますでしょうか?」


閻魔は自分の言葉を遮って喋りだした死者に困惑をしながらも、

「たまにはいいか」という軽い気持ちで質問を許可する事にした。


「お前もには分らぬだろうが、私は忙しい。手短にせよ。」


許可を得た死者は喜びながら、こう言った。


「ありがとうございます。質問は2点だけです、まず、閻魔様が使う道具においては、「人頭杖」という道具が有ると聞き及んでおりますが、私の裁判では使われませんでした。それは、何故でしょうか?、もう1つは、閻魔様は「働き方改革」という現世での言葉はご存知でしょうか?」



閻魔は以上の質問を受けて、数分の沈黙をしたのち、こう答えた。

「まず、「人頭杖」についてであるが、あれは嘘をつく死者への脅しのような物であり、お前のような、正直者に使う物ではない、という事だ。それから、「働き方改革」という現世での言葉についてでは有るが、私の仕事は現世の知識も持たなければやってはいけぬ故、無論、知っているぞ。」


閻魔の返答を聞いた死者は喜び、閻魔の目を見据えながらこう言った。


「返答のほど、ありがとうございます。胸のモヤモヤが晴れた気分です。それで、再度質問をさせて頂きます。「働き方改革」に関しては、あの世でもやってみてはいかがでしたか? 裁判を受ける中で、今のあの世の裁判には改革の余地が有ると思うのです。」


この言葉にいち早く反応したのは、死者の後ろに控えていた鬼であった。


「貴様、閻魔様の偉大なる裁判に無駄があると言うのか! 許さんぞ!」


こう言った鬼が死者に金棒で殴りかかろうとした時、閻魔は鬼を静止させ、

こう言った。


「まぁ待て、鬼よ、私も裁判においては、何らかの改善点が有ると思っていたところだ。」


閻魔がそう言うと、鬼はなんとも言えぬ表情で元の位置に戻った。


それを見て安心した死者は、言葉を続けた。


「閻魔様、寛大なるお言葉、感謝致します。それでは、改善点について述べさせて頂きます。まず・・・」


この日、名もなき死者が閻魔大王に提案した幾つもの改善点は閻魔庁のみならず、あの世全体、現世にも影響を与える事となった。


_______



ある日を境目に閻魔大王の仕事は急変した。

それは、現世で言う、いわゆる「働き方改革」があの世で行われ、

その結果として、1番影響を受けたのは閻魔庁だったからである。


「働き方改革」を実行に移す中で、閻魔大王の道具、


「人頭杖」、「浄玻璃の鏡」、「閻魔帳」は閻魔大王でなくとも使用可能、という事であった。


この影響により、閻魔大王は事実上の休職となり、あの世で1番暇な王となった。


あの世で1番暇となった閻魔は、あの世をフラフラと彷徨う事になり、あの世の他の王や鬼からは哀れみの目を向けられる事になった。

それ故に閻魔は現実逃避の一環として現世に関して調べる事を始めた。



閻魔庁

資料室


閻魔は一応の所属部署である閻魔庁にコソコソと入り込み、今まで余り入ることの無かった資料室入り浸る事にした。


「ふむ・・・現世では、心霊スポットや事故物件が人気なのか・・・、しかし、これは・・・成仏できぬ死者が増えているのでは・・・・」


閻魔は声を潜めながらブツブツと呟きつつ様々な資料に目を通した。


「やはり、現世では成仏できぬ死者が増えているようだ・・・何とかせねばなるまい。さて、どうしたものか。」


閻魔は資料を睨みながら小さく呟き、思案を巡らせた。


(確か、鬼や地獄の獄卒が現世で人間に化けて活動しているらしい。ならば、私も可能な筈。私も久しぶりに現世を見てみたい・・・よし・・・)


閻魔は心の中でこう決心をすると、勢い良く資料を棚に戻し、資料室から退出した。





















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