第2話 エピローグ後編
「クラウス」
自室で魔術開発をしていると、誰かがオレに語りかけてくる。しかし、それは知らない声だ。
「誰だ?」
オレに勘付かれずに近付くなんて何者だ。
オレは自室の窓のそばに佇んでいる見知らぬ女性に質問する。
その女性は銀髪のロングヘアーでルビー色の目をして、誰も寄せ付けない、そんな雰囲気をしていた。
「わたしは『犠牲』。君たちが『ウィルスキル』と呼んでいるものだ。わたしが君の前に姿をあらわしたのは契約を結ぶためだ。」
「契約?どういうことだ?」
「しょうがない…。質問を受け付けよう。」
「まず、一つ目の質問。そもそも契約とはなんだ?」
「普通のスキルはスキルを得ることができれば何もしなくても発動する。しかし、『ウィルスキル』を使うには契約が必要だ。ただ働きはごめんだからな。持ちつ持たれつの関係だ。」
「なるほど。意思を持つのであれば、自分の能力を使わせるのに見返りを要求するのは当然か。次に二つ目の質問だ。なぜオレを選んだ?」
「君の内に秘めた野望。それに惹かれたからだ。その野望が成された後の世界を見てみたいと思ったからだ。」
「最後の質問だ。なぜ、このタイミングで声をかけた?」
「そんなことは分かり切ったことだろう。『ウィルスキル』は契約をした時点で発現するが、人間に発現する普通のスキルは18歳になると発現する。そして、君は明日で18歳になる。18歳になればどんなスキルが発現したか、父から鑑定されるだろう?そして、忌み嫌われている『犠牲』が発現していることが露呈する。露呈すれば、君は処刑される。そうすれば、処刑から逃れるためにわたしが必要になる。だからこのタイミングで声をかけた。」
「契約の内容はなんだ?」
「わたしが君に提供するものは、わたしの力だ。君がわたしに提供してもらうのは、君の野望に全力で遂行すること。そして、君自身の命を犠牲にしてもらう。ちなみに、君はわたしと契約を結ぶしかないよ。もし、結ばないというなら、強制的に君の中に入り込むだけだ。そうすれば、君は使えない忌み嫌われたスキルが発現し何もできず殺されるだろう。君なら処刑される前に屋敷から脱出できるだろうが、それはわたしが妨害をする。」
「一つ聞きたいんだが、お前はオレの命が欲しいと言ったがどういう意味だ?オレに死ねということか?」
「そのとおりだ。一度君が死んだあと、わたしが生き返らせる。わたしが君を生き返らせることで、君とわたしの意識が同化する。そうすれば、君はわたしの能力を十二分に発揮できるようになる。」
「わかった。お前と契約する。」
こうして、オレと『犠牲』は契約を結んだ。
「そうか。次に『犠牲』のスキルの詳細について説明する。」
オレは『犠牲』のスキルの詳細を聞く。要約をすると、何かしらの犠牲を払うことで、その犠牲に見合う神器の贋作を生成できるということだった。そして、一度生成した神器は自由に取り出すことができるようになるようだ。
オレは本当に生き返ったことに驚いた。父親の死体を一瞥した後、目の前にいる銀髪の女性に話しかける。
「すぐに移動するぞ。まずは、隣国の『リンデ』に向かう。」
「一度死んだというのに随分落ち着いて見えるな。」
生き返るということを知っている。
なら、驚く要素はどこにもないだろう。
オレは飛行魔術を展開し目的地の方角に飛ぶ。
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