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第1話 エピローグ前編

「クラウス、お前を処刑する。時刻は翌朝だ。お前を殺す都合の良い理由ができてうれしいよ。養子であったとしても上位貴族である、わがシーベルト家から簡単に死人を出すにはいかなかったからな。」


18歳の誕生日にオレは右目と左腕を失った義理の父親―シーベルト家の当主―からそう告げられた。


「わかりました。」


オレは淡泊に答える。


「処刑の時間まで、自室で待機しておけ。」


オレは父親からその言葉を最後に、屋敷の3階の自室に軟禁された。

オレはベッドに横になり考え事にしていると、扉番をしている兵の話し声が聞こえてくる。


「それにしても、『犠牲サクリファイス』のスキルが発現してクラウス様が処刑されるとはな。」

「クラウス様が発現なされたスキルは『ウィルスキル』の中でも凶悪とされているものだ。『犠牲サクリファイス』のスキルが発現した者は世界を揺るがすほどの大罪を犯す。ただ、クリストフ様にとっては吉報だったろうな。実力で言えばあらゆる面でクリストフ様の実の息子であるグンテル様ではなく、養子であるクラウス様が遥かに凌駕しているが、実の息子を次期当主にしたがっているクリストフ様にとってクラウス様は邪魔だろうからな。」


18歳になるとスキルが発現する。

今日で18歳になったオレは、父親からスキル鑑定を受けて、『ウィルスキル』の一つである『犠牲サクリファイス』が発現していることが露呈した。


本来、スキルというものはスキルでしかない。

しかし、稀に意思を持つスキルが発現することがある。

これが『ウィルスキル』だ。

『ウィルスキル』は他のスキルと比べても強力だ。

意思を持つスキルは意思を持つが故に人を選ぶという言い伝えがあるが、どうやらこれは事実らしい。

このスキルは、オレの内に秘める野望を読み取ったのだ。


そんなどうでもいいことを考えている暇はない。

すぐ行動を起こさなければならない。

今までずっと聞き分けの良い息子を演じてきたが、それはへたに反抗するより合理的だったからだ

養子というだけで身内から嫌われているオレにとっては、何も考えずに指示に従って、波風立てないほうが楽だし、反抗をして身内に恨まれたり疎まれたりするほうが面倒だ。

しかし、今回は別だ。死ねといわれて死んでやる道理はない。


この屋敷の護衛で雇っている兵は他のところと比べてレベルがかなり高い。

とは言ってもオレにとってはそれは全くの障害ではない。

問題はオレの義理の父親、クリストフ・シーベルトだ。


武術も剣術も魔術もオレに遠く及ばない。

厄介なのは父親のもつ『等価破壊』というスキルだ。

このスキルはたとえば、自分の右足を破壊すれば、誰か一人の右足を破壊することができる。

つまり、どんな難敵でも確実に相打ちには持っていける。

父親に右目と左腕がないのはこのスキルを行使したからだ。


誰にも見つからずに屋敷の外に出る必要がある。

オレの隠密行動の練度であれば屋敷にいる兵には絶対に見つからない。

しかし、おそらく父親はこの晩のうちにオレが脱出すると思っているだろう。

父親はかなり頭がきれる。

それくらいは想定しているはずだ。


犠牲サクリファイス』の発現が露呈した時点ですぐに殺さなかったのはあの場でスキルを使わずにオレを殺すことは不可能であり、『等価破壊』を使って自身の命を引き換えにオレを殺したとしても次期当主であるオレの兄になんの遺言を残すこともなく死ぬことになり、領内に大きな混乱を招くことになるからだ。


今晩中に兄のグンテルに遺言を残し、そして、オレを『等価破壊』のスキルを使って殺してくるだろう。『等価破壊』の発動範囲は視界に入っている人間だ。

つまり、父親の視界に入ればその時点でゲームオーバーだ。


オレが脱出できないようにもちろん窓はふさがれている。

自室から出るには扉を開けるしかない。

扉番の兵は部屋の中に2人、外に2人。


まず、部屋の中にいる兵にオレが攻撃をすることも悟らせず、音も立てず、急接近し、手刀で瞬殺する。瞬殺するのは叫ばれて部屋の外の兵に感づかれると厄介だからだ。


次に部屋の外の兵を無力化する。自分から扉を開けるのではなく、兵に扉を開けさせる。

そのほうが警戒心が薄くなるからだ。


「おい、お前ら、少しこっちに来てくれ。」


オレは部屋の中にいた兵の声色を真似て、部屋の外の兵に呼びかける。


「わかった。扉開けるぞ。………ん?誰もいない?」


オレは兵が困惑しているうちに握力で首の骨を折り瞬殺した。


四人の扉番をしていた兵を殺した後、廊下の窓を叩き割り3階から飛び降りた。

そして、庭を囲んでいる6メートル程度の塀を軽いジャンプで飛び越えた。


そして、塀を飛び越えるとオレのゲームオーバーが確定した。

飛び越えた先にはオレの父親が立っていた。


「やはり、ここで待っていたか。」


「死んでもらう。」


「わざわざ地下独房ではなく、オレの自室に待機させたのは逃げる猶予を与えるためではなく、そうするまでもないからか。」


「抵抗はしないのか?お前ならわたしを1秒もかからずに殺せるだろう?」


「する意味はないだろう。スキルはスキルを使うという思考だけで発動する。オレがどんなに速く動いても、スキルが発動するほうが早い。」


「さすがにわかっているか。これ以上の問答は無意味だな。この場でおとなしく死んでもらう。」


『等価破壊』のスキルが発動した。父親の心臓が破壊されると同時に、オレの心臓が破壊され、オレたち二人は息絶えた。


オレは死んだ。父親に心臓を破壊され死んだ。いや、本当に死んだのか?死んでいなければ困る。


「おい、聞こえるか?」


どこからともなく女性の声が聞こえる。


「聞こえている。犠牲は払ったぞ。早く生き返らせろ。」


「ああ、君はわたしを使うために自分自身の命という犠牲を払った。すぐに生き返らせる。」


こうして一度死んだオレは『犠牲サクリファイス』によって生き返った。オレと犠牲サクリファイスの間に何があったかは昨日の夜に遡る。

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