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選んで貰えますか

 「はい。入ります」


 「素直に入って頂けたのなら、問題無いです」


 〈アコ〉は、ストレスが思ったより溜まっているな。


 〈クルス〉と、キスをしたのもバレている感じだし、〈ミ―クサナ〉という子に嫌味を言われたのも、内心イラッとしたのかも知れないな。


 店に入ると、二人はペチャクチャ話しながら、服を手に持って身体に当てている。

 「似合う」「可愛い」「素敵」と、笑いながら誉め言葉の応酬をしているぞ。


 もう、十着以上服を手にしたけど、止まる気配がない。

 まさか、店の服を全部確認する気か。


 勘弁してくれよ。バツゲームじゃないんだから。


 僕は何もすることが無いので、呆けた顔で二人が服を選んでいるのをただ見てた。

 とても長い時間見てた。


 〈アコ〉さん、〈クルス〉さん、僕の腹時計はもうお昼を指していますよ。


 ようやく、買う服の候補が決まったようで、手招きで僕が呼ばれた。


 「〈タロ〉様、この白い服と青い服のどちらが、私に似合うと思いますか」


 と〈アコ〉が、試験を行う監督官のような目つきで聞いてきた。

 正解を選べなかったら、決して許さないつもりの刺すような目だ。


 僕には、女の子の服が、似合う、似合わないは、正直分からない。

 店で売っているんだ、そんなに変なのは無いはずだ。どちらでも良いと思ってしまう。

 下着の好き、嫌いなら言えるんだけどな。


「どちらでも、大差は無い。同じだ」とは口が裂けても言えない。恐ろしいことが起こる。


 女性の多くは、男に選ばさせる時に、もう既に自分で決めていると聞いたことがある。


 たぶん、正解の服は、持ちやすい利き手で持っているはずだ。

 何という僕の推理力。冴えわたっているぞ。


 「右手で持っている白い服が、〈アコ〉に似合うと思うよ」


 どうだ、正解だろう。


 「うーん、そうですか。何だか違うような気がします。もう少し選んでみます」


 僕の何がいけなかったのだ。チンプンカンプンだ。最初にチンを追加したいほど理不尽だ。


 「〈タロ〉様。私には、この黒い服と赤い服のどちらが良いですか。選んで貰えますか」


 と今度は〈クルス〉が尋ねてきた。


 〈クルス〉が選んだのは、胸の上の部分にレースが使用されているが、それほどはヒラヒラしていない、少しだけお嬢様っぽい服だ。


 色違いを二枚、目の前に突き付けて僕を試している。

 あなたに、私の正解が分かるかしら、という僕のセンスを侮っている顔に見える。


 でも、〈クルス〉のことはお見通しだ。下着はモロに見たし、キスも二回した仲だ。

 性格からいって、赤はないだろう。


 「黒色が〈クルス〉に似合うよ」


 「〈タロ〉様、ありがとうございます。感性が同じなのですね。

 私も黒かなって思っていたのです」


 やっぱり思っていたのか。それなら自分で選べよ。


 しかし、正解を言い当てて良かった。

 〈クルス〉は満面の笑みで、黒い服を胸に大事そうに抱きしめている。

 僕が一発で言い当てたのが嬉しいようだ。単に二分の一の確率だけどな。


 迷走している〈アコ〉の方は、


 「〈タロ〉様、試着しますので見てください」と言ってきた。


 「どうですか」と少しはにかんだ顔だ。


 〈アコ〉の選んだ服は、白いレースが胸のところにも、お尻のところにも、ふんだんに使われたお嬢様用のドレスだ。


 だが、〈アコ〉の大きく張り出した胸とお尻が、レースにより強調されて、何とも変になっている。

 正直似合っていない。

 グラマーな雪ダルマに、白いキクラゲを付けたようだ。


 〈アコ〉もお嬢様だし、ヒラヒラした服を着てみたかったんだろうな。可哀そうに。


 「〈アコ〉、似合っているよ。最高だ」


 横で〈クルス〉の目が点になっている。

 しかし、何も言わずに黙っているのは、頭が良い子の証拠だ。


 「〈タロ〉様、本当に似合っている。私、一度で良いからこんな可愛い服を着てみたかったの。  〈タロ〉様、買っても良い」


 「もちろん良いよ。ただ、魅力的過ぎるから、その服を着るのは僕の前だけにして欲しいな。

 僕がその服を独占したいんだよ。良いかい」


 「えっ、そうなの。胸が悪目立ちするのね。子供の時に読んだ絵本で憧れていたの。

 でも、私には合わないのね」


 「そんなことは無いさ。僕が似合うと言ったら、〈アコ〉は似合っているんだよ。違うかい」


 「〈タロ〉様 ……… 。ずいぶん強引ですね。分かりましたわ。この服は〈タロ〉様専用にしますね」


 〈アコ〉は、満面の笑みとはいかないが、それでも少し微笑んでいる。

 少しはストレスが発散出来ていたら良いな。


 二人の服を買って店からやっと出れた。お金を出してあげたから、二人とも恐縮してたけど、嬉しそうでもあった。

 

 〈リク〉を長い間待たせて悪いことをしたけど、〈リク〉は「これが役目です」と全く気にしていなかった。

 それどころか、〈アコ〉と〈クルス〉が、「待たせてすいません」と謝ったら、「もっと、長くても大丈夫ですよ」と洒落にならないことを言い出す始末だ。

 真面目バカもたいがいにしろよな。


 服屋の近くの料理店で、やっとお昼にありついた。

 麺料理のお店だ。パスタとほぼ同じような料理に見える。

 人間の考えることはどこでも、変らないな。 

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