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嫌な予感

 学舎の日課は、起床七時、朝食は八時前まで、授業開始八時三十分、授業二コマ、昼食十一時から二時まで、午後授業二コマ、夕食七時まで、就寝九時となっている。

 門限は就寝の九時だ。


 それぞれの開始と終了は、鉦の音で知らせるそうだ。

 そういえば、鉦がなってたな。


 食事は三食とも予約しておけば、寮の食堂で食べることが出来る。

 僕は前日に、三食とも予約済だ。


 しかし、お金の余裕がある生徒は料理店から配達して貰って、食べることも許されている。

 昼食時間が長いのは、このための配慮らしい。

 お貴族様は優雅だな。


 それと、十日に一度ある休養日以外は、学校から出るのは、基本禁止されていると、厳しい口調で言われた。

 決まりを守れないヤツが、どこでもいるんだな。


 十日も、〈アコ〉と〈クルス〉に逢えないのは寂しいな。

 妄想で誤魔化すしかない。


 他には、「武体術」用の武体服など、必要な学用品を購入して用意しておくようにも言われた。

 これも三日後だ。


 最後に学舎証と学舎章が配られて、入学説明は終了した。

 学舎証は悪用されるので無くさないように、無くしたら直ぐに届けるようにと、学舎章は胸の位置に必ず付けるように言われた。

 お決まりの注意だな。



 鉦が鳴って、最初の授業の「政務科」は、担任の〈ウギィユ〉先生が、引き続き受け持つ。


 貴族はこの国の主導者だから、崇高なる義務もある、という心構えからスタートだ。

 気取ってフランス語で言うと、「ノブレス・オブリージュ」か。

 扉の取手ノブが無い(レス)ので、「リージュ」が休み(オフ)という意味でない。


 午前中の授業が終わったので、食堂にいったら、どうしたことか閉まっている。

 あれ、僕の昼ごはんは。


 とぼとぼと食堂から帰る道すがら、歩いていた職員の人に聞いてみた。


 「どうして食堂は閉まっているんですか」


 「今日は入学式だけだから、午前中で時間割はお終いですよ。知らなかったのですか」


 「皆、ごはんは、どうするのですか」


 「入学式に出席した父兄と取る人が多いですね。学舎町に飲食店がありますよ」


 「そうですか、ありがとう。助かりました」


 そうだったのか。聞いて無かった。


 〈アコ〉のメロンおっぱいと、〈クルス〉のスリップ姿を妄想してた時か。

 それでは、聞き洩らしてもやむを得ないな。


 食堂の周りでウロウロしてたから、腹ペコだ。

 そうと分かれば、《黒鷲》の門を出て、学舎町にいくことにしよう。

 門は開いている。


 門番の衛士には、


 「明日からは、護衛がいないと、休養日以外自由に出入り出来ませんから、お覚えておいてください」


 と言われた。

 棒読みのセリフだ。

 毎年、沢山の生徒に言っているから、いい加減嫌になっているのだろう。


 学舎町に並んでいる飲食店は数件なので、それほど迷わない。


 あそこの店から良い匂いがする。

 お手軽なミートパイの店だが、肉汁の匂いがそそる。


 前に食べた〈クルス〉の手料理を思い出していたら、そうだ二人と一緒に食べれば良いんだと、はたと考え付いた。

 向こうも入学式だし、同じじゃないか。


 はっ、二人は今どうしてるのだろう。まさか。

 嫌な予感がビクビクする。

 おしっこをチビリそうだ。


 店の前を急いで離脱すると、《赤鳩》の制服を着た女子が、父兄や護衛と歩いているのがやたらと目につく。

 《白鳩》も少しいる。


 さっきも歩いていたのだろうが、昼ご飯のことしか頭に無かった。


 楠の広場に行ってみたが、〈アコ〉も〈クルス〉もいない。

 約束をしていたわけでも無いしな。

 たぶん。


 《白鶴》の門までいっても、門は固く閉じられている。

 どうしたものかと、立ちすくんでいると、門番の衛士が、


 「学舎生の呼び出しですか」

 と聞いてきた。


 いないかもしれないが、念のためだ。


 「《ラング》伯爵なんだけど、許嫁の〈アコーセン〉を呼び出して欲しいんだ」


 「何か、身分を証明するものはありますか」

 

 「学舎証でも良いか」


 「結構です。それではお呼びします。しばらくお待ちください」


 衛士は、伝声管を使って連絡しているようだ。


 待っている間に、疑問を衛士に聞いてみた。


 「《黒鷲》の門は開いているのに、どうして《白鶴》の門は閉まっているの」


 「それは、男子と違って、女子はより安全に気を使っているからです。

 女子の学舎生は、身分が保証された方の同伴がなければ、基本的に学校の外へは出られない規則となっています」


 そうなのかと頭を抱えているところに、〈アコ〉が小走りでやってきた。


 衛士には、「お手数をかけました」と言ったが、僕には無言だ。

 取り敢えず僕は、「ごめん」と言っておく。


 〈アコ〉は、僕の目の前まで近づいてから、


 「〈タロ〉様、式が終わったら直ぐ迎えにきてくださいと、お願いしましたよね」


 「すいません」


 「ふー。〈クルス〉ちゃんも待っていますから、直ぐに行きましょう」


 《赤鳩》の門までいっても、やはり門は固く閉じられている。

 同じ手順で、〈クルス〉も呼び出して貰った。


 〈クルス〉も衛士に礼を言った後、僕に話しかけてきた。


 「〈タロ〉様、ずいぶん遅かったですが、何かあったのですか」


 「すいません」


 「〈クルス〉ちゃん、〈タロ〉様は、きっと私達のことなんか、さっきまで忘れていたのよ」


 「えっ、〈タロ〉様。そうなのですか」


 「そんなわけ無いじゃないか。それより、昼ご飯を食べよう。美味しそうな店があったんだ」


 お腹が空いてる時は、イライラするもんだ。

 取り敢えず何か腹に詰め込ませて、頭に上った血を胃に落とそう。


 「お店を探す時間はあったのですね」


 「私達より、美味しいご飯なのですか」


 「そんなこと無いよ。二人のところへ向かう時に、良い匂いがしただけだよ」

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