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異世界転生したら許嫁がいたんだ(エッチなことでも怒らないんだ)  作者: 品画 十帆
第11章 【前払いなんて、あんまりだ】
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〈在る〉と言われてもな

 朝の鍛錬では、亡くなった兵士へ皆で黙祷もくとうを捧げてから、始めることになった。

 兵士達はいつになく真剣に、鍛錬に取り組んでいたと思う。

 お調子者の〈ハヅ〉さえ、黙々と剣を振るっていた。


 「つい先日まで、ここで一緒に鍛錬を行っていた僚友りょうゆうが、残念なことに戦死をいたしました。とても悲しいことでありますが、軍では珍しいことではありません。少しでも悲しい事態を防ぐため、今の苦しい鍛錬があるのです。さあ、皆で乗り越えていきましょう」


 〈ハパ先生〉の訓示は、僕の心へ深く染みとおっていくようだ。


 「ご領主様、大きな声で号令を願います」


 〈リク〉が珍しく僕に要求してきたな。

 そう望まれたらのなら、僕は真摯に応えよう。


 「鍛錬、はじめ」


 僕は出来るだけ大きな声で、掛け声をかけたつもりだ。

 〈リク〉がニッと笑ったので、そこそこの大きさだったんだろう。


 引きまった顔の兵士と共に、滝みたいな大量の汗をかくと、おりのように僕の底へ溜まっていたものが、皮膚から外へ噴き出して地面を濡らした。

 ボタボタと垂れ落ちる汗と僕の後悔は、地面に意味をなさない図表を描き出している。

 兵士の一人が、その図表を足でかき消して、僕に打ち込み稽古を願ってきた。

 その兵士は、かき消したことに気づいてはいないけど、違うもっと大切なものに気づいているのだと思う。


 溜まっていた執務をこなして、嫁達と夕食を食べる時には、僕も普通に会話が出来ていたと思う。

 〈アコ〉の後宮に行くと、今日は〈クルス〉の後宮に行けと言われた。


 あれー、日を間違えたらしい。

 〈クルス〉の後宮に帰ると、〈クルス〉がニコニコとして出迎えてくれる。


 「さあ、早く服を脱いでください」


 「えぇー、いきなりなの」


 僕は服を脱がされて、身体中を〈クルス〉に点検された。


 「うーん、薬が塗られていますが、擦りすりきずが見られます。お薬を塗りますので、一度身体を洗いましょう」


 僕は裸のままお風呂へ連行されて、裸になった〈クルス〉に洗われていると言うか、マッサージを受けている。


 「旦那様は、とても気を張っておられたのですね。首筋が大変凝っていますよ」


 〈クルス〉のマッサージを受けながら、僕は違和感を感じる。

 背中にポタポタと水滴を感じるんだ。

 湯気が天井で水滴となり、落ちてきているのか。


 「〈クルス〉、水滴が…… 」


 僕が後ろを向くと、赤い目をした〈クルス〉が一生懸命僕の首を揉んでいた。


 「うぅ、旦那様、どうしました」


 「〈クルス〉、泣いているのか」


 「うぅ、感情が高ぶって押さえられないのです。旦那様を抱きしめても良いですか。この手と身体に、旦那様を感じたいのです」


 僕は〈クルス〉に向き直り、〈クルス〉を正面からグッと抱きしめた。

 〈クルス〉も僕の背に手を回し、強く抱きしめてくれる。


 「あぁ、旦那様は私の腕の中にるのですね」


 〈在る〉と言われてもな。

 僕はここにいるのだから、それは〈在る〉だろう。

 無いって死んだことだろう。

 〈クルス〉は難しいことを言うよ。


 しばらく抱き合ったら、〈クルス〉は満足したようで、僕の身体を隅々(すみずみ)まで洗ってくれた。

 そして僕の身体をタオルで拭いて、り傷や打ち身に薬を優しく塗ってくれる。

 ただ変なのは、〈クルス〉も裸のままなんだ。


 「うふふ、旦那様も私の身体に、この乳液を塗ってくださいね」


 「これを塗れば良いんだな」


 僕はお返しに、〈クルス〉のおっぱいやお尻を中心に、びんの中に入っている乳液を手の平で塗ってあげた。

 おっぱいやお尻が中心になったのは、〈クルス〉の身体に誘導されたためだ。

 僕がおっぱいやお尻を、なかなか触らなかったんだろう、〈クルス〉が僕の手の方へ自分から寄せてきてくれたからだと思う。


 〈クルス〉のおっぱいは、プニュプニュと僕の手で形を変えて、〈クルス〉のお尻は乳液でさらにスベスベになっていく。

 僕はその触り心地のせいなのか、とても眠たくなってしまう。


 「うふふ、旦那様はもう目が引っ付きそうですね」


 僕は〈クルス〉に、裸のままでベッドへ連れていかれた。

 はぁ、〈クルス〉も裸のままだぞ。

 〈クルス〉は裸のままで、僕を柔らかく抱きしめて、首筋を触ってくれている。

 僕はそれが、とても気持ちが良くて、もう目を開けてはいられなくなった。




 《アルアン》の町から、綿花を輸入出来ることになったので、木綿糸を作る工場を建設することを決めた。

 工場と言っても、糸車を沢山並べて、一斉に人の手で紡ぐと言うだけの原始的なものだ。


 だけどこれで《ラング領》にも、いよいよ工業製品的な物が誕生するんだ。

 歴史的な快挙と言えるだろう。


 ただ場所がな。

 新町にはまだ空き地があるけど、今後の人口増を見越して残しておきたいんだ。

 大きな工場のために、全てを埋めたくないんだよ。

 空白があれほど怖かった、少し前から思うと、なんて贅沢な悩みだと感慨深いな。


 それで、《ラング》の町と、入り江の間に細長い工場を造ることにした。

 城壁を入り江へと続く道沿い建設して、その城壁を工場の壁として利用するって言う、二番煎にばんせんじの案である。

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