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異世界転生したら許嫁がいたんだ(エッチなことでも怒らないんだ)  作者: 品画 十帆
第11章 【前払いなんて、あんまりだ】
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〈西部大街道〉

 うーん、それにしても。

 総司令官と副司令官か、間の司令官はどこへ行ったんだ。

 どこにも行ってないのか。

 ここにいるおっちゃんが、まだ司令官なんだな。


 そう考えて〈バクィラナ〉公爵の方をチラッと見たら、また僕にウインクを返しやがったぞ。

 うげぇー、まさか僕に気があるんじゃないだろうな。

 勘弁してちょうだい。


 それに比べて《セミセ》公爵は、いつになく真剣な表情で座っているぞ。

 〈王都旅団〉と〈西部方面旅団〉が、誰が考えても上手くいきそうにないから、胃が痛くなったんだろう。

 一度たりとも合同演習などを、やっていないに決まっている。

 〈海方面旅団〉もやっていないと、胸を張って言えるぞ。


 《ナセ伯爵》の方はと言うと、全く何も考えていないようだ。

 たぶん、〈副旅団長〉に丸投げしているので、自分は関係ないと思っているのだろう。

 まあ、〈旅団長〉としては、当たり前のことだな。

 大変良く分かる話だよ。


 〈王国御前会議〉が終わり、ゾロゾロと部屋を出て行く時に、〈サシィトルハ〉王太子に呼び止められた。


 「《ラング伯爵》、兵站を君に指名させて貰ったよ。今回の作戦は迅速が肝だから、直ちに兵糧を《ルダ》の町へ届けて欲しいんだ」


 かぁー、指名なんてするなよ。

 これが〈サシィトルハ〉王子を、応援していたむくいなのか。

 嫌になるな。


 「はっ、ご命令仰おおせつかりました」


 僕は長い物にクルクルと巻かれ、権威にびへつらい、安寧あんねいを勝ち取ることをモットーしているんだよ。


 〈サシィトルハ〉王太子は僕に言い捨てて、速足で颯爽さっそうと去って行った。

 〈王都旅団〉を率いて、直ぐに出立するつもりなんだな。

 《セミセ》公爵が、ヘコヘコと後をついていっているぞ。


 「〈副旅団長〉、《ルダ》の町へ兵糧を直ぐに届けろってさ」


 「はっ、準備は整っております。いつでも命令をしてください」


 何だか言っても、〈副旅団長〉も真面目なヤツだな。


 「それじゃ、出発だ。でもくれぐれも、王太子を追い抜いちゃいけないよ」


 〈海方面旅団〉は、三十台以上の馬車のキャラバンを組んで、《ルダ》の町へ歩みを進めている。

 追い抜く心配は、全く必要なかった。

 普通に進めば、兵站部隊より前線部隊が遅いわけがない。

 こっちは、重い荷物を運んでいるのだからな。


 王都から《ルダ》の町へは、〈西部大街道〉と言う大きな道を通って行くので、それほど日数はかからないようだ。

 これなら、〈サトミ〉の〈緑農祭〉に、何とか間に合うだろう。


 まん丸のおっぱいが揉めそうだと、天幕で眠る前に、僕は満月を見て思ったよ。

 両手が痴漢をする前のように、〈サトミ〉のおっぱいを想像して、お椀型わんがたになっていたはずだ。

 〈サトミ〉もきっと僕のを想像して、ほうきを握っているはずに違いない。

 細い柄だったら悲しいな。


 まさか痴漢のように、箒で僕を叩いたりしないよな。

 ちょっと心配だよ。



 《ルダ》の町へ近づくと、戦闘が町の周りで繰り広げられていた。

 〈青白い肌の男達〉が、《ルダ》の町を取り囲んでいたのを、〈王都旅団〉が急襲したらしい。


 包囲戦をしている背後を突かれれば、軍隊はとてももろいと学舎で習った覚えがある。

 軍隊は後ろからの攻撃に、とても弱いのは常識だと思う。

 おまけに町を包囲するために、大きく広がっているので、陣形の厚みがほぼゼロだ。

 一千人以上いたらしいけど、さすがに町を囲えばとても薄くなってしまう。


 敵の勢力圏で立てる作戦じゃないぞ。

 無茶苦茶やってやがる。

 こいつ等には、戦術がまるでないんだな。


 王太子の緒戦は、これ以上ない鮮やかなる完勝だ。

 速さを優先した作戦が、バッチリと当たったな。

 見る見るうちに、〈青白い肌の男達〉が散り散りなって逃げていくぞ。


 倍以上の敵をわずかな死傷者を出しただけで打ち破り、町を解放したんだ。

 王太子は、表情筋がピクピクと動いて笑みが隠せないみたいだな。


 敵が掃討された町の門に、王太子が入って行くようなので、僕達も入ることにしよう。

 馬車に積んでいる荷物を降ろせば、僕の任務は完了だから〈緑農祭〉までには帰れると思う。

 後十日は、あるからな。


 「えぇー、《ラング伯爵》は、もう着いたのか」


 王太子が呆れたように僕に言うけど。

 良く言うよ。

 あんたが、直ぐに届けろって言ったんだろう。


 「はぁー、直ぐって言われましたよ」


 「それはそうなんだが。異常に早過ぎて吃驚しているんだ。兵站部隊なのに、普通の部隊と変わらないじゃないか。荷を集めるだけで、普通はもっとかかるはずだよ」


 「ははっ、部下が優秀なんですよ」


 半分以上は〈副旅団長〉の奥さんの功績だ。

 僕の嫁が、特別に手土産を渡すだけのことはあるな。


 《セミセ》公爵は、困ったような顔をしているな。


 「それにしてもだ。早過ぎるぞ。〈西部方面旅団〉は、今ようやく出発したんだぞ」


 《セミセ》公爵は、あまりにも早く戦闘が決着したので、〈西部方面旅団〉にグチグチ言われるのだろう。

 でもそれは、〈海方面旅団〉には関係ない話だ。 

 〈はき違えてもらっては困る〉とは、僕は言わなかった。

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