表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したら許嫁がいたんだ(エッチなことでも怒らないんだ)  作者: 品画 十帆
第10章 【最終学年は、待ってくれない】
562/710

職場実習生

 今の僕は職場実習生なので、手は別として〈汗っかき〉くらいのくだけた対応が正解のように思える。


 僕達第三班は、この前きた〈中央広場通り〉を四人でゆっくりと歩いている。

 四人とも営繕係の制服である、くすんだ青色の作業着姿だ。

 今まで特別意識していなかったが、この青色の作業着をどこかの道で見た気もするな。


 その営繕係の人は、許嫁達と腕を絡めて歩いている僕を見て、殴りたいほど腹立たしかったと思う。


 後ろを振り返ると、同じ作業着姿の人が三人見えるので、僕が見逃した不具合箇所をフォローする体制を整えているのだろう。

 当たり前ではあるが、僕は完全にお客様でまともに作業することを期待されていないんだな。

 この一週間、何でモチベーションを保てばいいのだろう。

 贅沢な悩みと言われそうだが、僕にとっては切実な悩みだよ。


 〈汗っかき〉が、見つけた穴ぼこを報告書に記入するやり方を教えてくれる。

 道路の地番と穴ぼこの形状を、所定の様式に記入するようだ。


 一見とても簡単なものと思うけど、小さな穴ぼこの場所と形状を的確に伝えるのはそれなりの経験がいりそうである。

 ○○商店前の丸い穴では、場所も分かり難し、どんな補修が必要かもよく分からないってことだ。


 〈中央広場通り〉を過ぎて〈噴水広場通り〉にぶつかる時に、〈先頭ガタイ〉が声をかけてきた。

 〈先頭ガタイ〉も高位貴族家だから、実習先が〈王都代務局経路部門営繕係〉なんだろう。


 「よー、〈タロ〉君も頑張っているな。〈ヨー〉さんは元気にしているか」


 はぁー、僕は《白鶴》じゃないから、〈ヨー〉の現況を知っているはずがないだろう。

 〈アコ〉のおっぱいなら、この前もスベスベであることを確認したけどな。


 「ご苦労様、〈バクィラナ〉君。〈ヨー〉のことは良く知らないよ」


 「そうか。それは残念だ。君の許嫁に聞いておいてくれよ」


 〈先頭ガタイ〉は「ガハハハッ」と笑って、〈噴水広場通り〉へ帰っていった。

 今の会話で豪快に笑える箇所があったかな。


 たぶん僕が、〈ヨー〉と仲良くないことが分かって機嫌が良いのだろう。

 だけどライバルは僕じゃなくて、近衛隊のエース〈ガルスィト〉先輩だぞ。

 〈ヨー〉には憧れの先輩がいるのだから、「ガハハハッ」と笑っている場合じゃないと思うな。


 〈汗っかき〉に書き方をダメ出しされながら、二つの穴ぼこを処理するともうお昼休憩になってしまった。

 はぁー、実習の一日目だから、こんなもんなんだろう。

 ボソボソとした弁当を道端で食べて、縁石の上で休憩することになった。


 「班長さん、雨が降った時はどうするんですか」


 「ははっ、大きな店の軒先を貸して貰うんだよ」


 そうなんだ。

 これは思ったより結構辛い仕事なんだな。

 雨降りや炎天下でもずっと外を歩くんだ。

 お金を貰うのは、簡単なものじゃないんだな。


 僕は、たまたま商売が上手くいったから、お金儲けを軽く考えていたと反省するべきなんだろう。


 午後からも〈中央広場通り〉を綿密に調査して、夕方近くで今日の作業は終了した。

 王宮から少し離れた場所にある、〈王都代務局〉の建物に入って報告書を提出するようだ。


 〈経路部門〉の窓口には、〈アコ〉がちょこんと座っていた。

 内勤の制服なんだろう、濃い青の膝丈の事務服を着ている。

 〈アコ〉の実習先は同じ〈王都代務局経路部門〉だけど、総務的な部署のようだ。


 事務服でもカッコ良く見える兄ちゃんが、〈アコ〉の後ろから何やら指導をしているぞ。

 あの目の角度は、〈アコ〉の胸の谷間を目指している感じだ。

 勤務中に実習生へセクハラか、ふざけるなよ。


 「あっ、〈タロ〉様だ。お疲れ様です。ふふ、この制服はどうかしら」


 〈アコ〉が椅子から立ち上がって、チョコチョコと僕の前に来てくれる。

 事務服の兄ちゃんは、〈えっ、俺を無視して営繕係の方へ行くのか〉と吃驚した顔になっているぞ。

 ざまあぁ。


 「おぉ、良く似合っているよ」


 〈アコ〉は事務服がそれほど似合わない。

 胸とお尻が大きいせいだと思う。

 おかしいとまでは言えないが、平凡の範疇はんちゅうだ。

 そのことを正直に言うほど、僕は善良じゃなくなったんだ。


 「ふふふ、そうかしら。でも少し胸が苦しいの」


 少しじゃないな。

 胸が合うサイズがなかったのだろう。

 はち切れそうで、胸がかなり苦しそうである。


 「〈アコ〉、気をつけろよ。後ろにいた男が胸を見ていたぞ」


 「はぁ、やっぱり。あの人、実習の初日から距離が近いのよ。〈タロ〉様心配しないで。今度近づいて来たら、私は《ラング伯爵》の婚約者だとハッキリと言ってやるわ。今までも学舎生にそう言えば、もう近づいては来なくなったわ」


 えー、今さらっと想像外のことを言ったよな。

 〈アコ〉も、複数の男から言い寄られていたんだ。


 たぶん、〈アコ〉のおっぱいに目がくらんだとは思うけど、絶対に許せないな。

 万死ばんしあたいする、根源的かつ悪逆非道あくぎゃくひどうとがだと思慮するぞ。


 「えっ、〈アコ〉は前にナンパされたことがあるの」

 

 「はっ、今の話を気にしているのですか。ナンパではありませんわ。過去のことですので、〈タロ〉様が心配する必要はないのですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ