表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
539/710

スーパーな秘書

「こんなのが来たんだ。行く必要はないよな」


「おぉ、やっと来ましたか。軍の動きに緊迫感が出ていたため、少し探りを入れていたのです。〈ベン島〉以来の大規模な軍編成になると思います」


 〈リク〉が、憂鬱になることを生真面目に応えてくれた。

 いや、そうじゃないだろう。

 僕の質問は完全スルーかよ。


 「親父も言っていましたが、西側で大きな衝突があると思います。〈オクート〉さんから、〈海方面旅団〉が運搬する物資は既に聞いています」


 大きな衝突って、戦争のことだよね。

 それに〈海方面旅団〉が、運搬する物資って何だ。

 西側は山の方だぞ。

 海はどんな関係があるんだ。

 それに知らない女性の名前が出来てきたな。


 「はぁ、〈オクート〉さんって誰なんだ」


 「あっ、ご領主様は名前をお忘れですか。〈海方面旅団〉の副旅団長の奥さんで、秘書のかたですよ」


 「副旅団長の奥さんは、〈オクート〉さんって名前だったのか。どうして、〈レィイロ〉が知っているんだ」


 名前を聞いたかな。

 それは名乗るよな。

 でも全く覚えがないな。

 憶えているのは、力強くて頼りになることだけだ。

 それと雄大なお尻だ。


 「えぇ、十年以上前ですが。王国軍司令部付きの秘書をされていた時に、実家と取引をされていたのです。その時、お菓子を頂いたのを良く覚えています」


 取引先の商店の子供に、お菓子をあげたのか。

 まさかのショタ好きだったのか。


 「えっ、武器の購入に、秘書は関係しないだろう」


 「普通はそうだと思いますが。あの人は〈超秘書〉と呼ばれていました。武器のことから、王国軍司令部の事務の一切合切いっさいがっさいを取り仕切っていたらしいですよ」


 〈超秘書〉って何だ。

 スーパーな秘書ってことか。


 「ご領主様、副旅団長の奥さんは、今でも軍に特別な情報網をお持ちのようで。今回の〈海方面旅団〉の役割をかなり正確に掴んでおられます。それで、私達に情報を流して物資の調達を依頼されてきたのです」


 〈リク〉が少し呆れたように話しているぞ。

 副旅団長の奥さんって、軍事機密を入手出来るってことなんだ。


 「物資の調達って出来るの」


 「〈オクート〉さんは、嫁の実家もご存じでした。それと《ラング領》の農産物が輸入出来ると言っておられました。今、〈ソラィウ〉さんを通して在庫を確認しています」


 領主の僕も正確には知らない、農産物の出来高や備蓄状況も把握しているってことか。


 「ひゃー、超優秀だけど超怖いな」


 「えぇ、お袋と〈カリナ〉以外に、初めて怖いと思った女性です」


 〈リク〉が手を握りしめて言っているのは、心の底からだからだろう。


 「僕もそうです。嫁が〈ルメータ〉で本当に良かったです」


 けっ、良い嫁で良かったですね。


 それにしても、もし副旅団長の奥さんが嫁だったら、あらゆる情報を握られて、常に先回りをされてしまうのだろう。

 良いこともあると思うが、情けない気持ちになり息も詰まってしまいそうだ。

 嫁は少し抜けている方が、可愛げがあって良いと思う。

 その点、僕の許嫁達は良い線いっていると思う。


 良い線いっている許嫁達が、〈ロローナテ〉嬢のお茶会から帰ってきた。

 大勢の学舎生が集まって、盛り上がったらしい。


 それに比べて、僕の方は著しく盛り下がっている。

 許嫁達に、冬休みが軍の用事でなくなることを伝えた。


 「お役目お疲れ様です。冬休みは残念ですけど、直ぐに逢えると信じて待っていますわ」


 「〈タロ〉様、気をつけてね。〈サトミ〉は、毎日お祈りをするよ」


 「くれぐれも健康に留意して欲しいです。お腹の薬とかを準備しますので、持っていってください」


 「〈海方面旅団〉の役割は、物資を運搬することらしいので、たぶん危なくはないと思うんだ。でも十分気をつけるよ」


 「《ラング領》へ帰って、開発が円滑に行くよう気をつけておきます」


 かなり心配だな。

 〈クルス〉の方が、領主として優秀だと判明したらどうしよう。


 「〈サトミ〉も、〈マサィレ〉さんと子供達の様子を見ておくよ」


 〈サトミ〉は、まさかあの男の子の、十一人目のハーレム要員になったりしないよな。


 「〈タロ〉様、全て私に任せて安心してください。《ラング》に帰って、後宮と結婚式の準備を進めておきますわ」


 〈アコ〉は結婚式の準備をするのか。

 まだ半年あるって思うのか、もう半年しかないって思う違いなんだろう。

 でも、全て任せて大丈夫なのか。

 変な風に暴走しないか、少し心配ではある。


 それにしても、固く心に誓った。

 猛烈で、燦然さんぜんと輝き、噛みしめるような冬は経験出来なくなってしまうよ。

 つばが、あふれてれるような、興奮も味わえそうにないな。

 辛辣しんらつで、散々(さんざん)で暗く、吐き捨てるような冬を経験しそうだ。

 おしっこが、溜まってらすような、無残むざんさを味わってしまうのだろう。


 おっぱいの代わりに、ストレスが僕に押し付けられるってことだ。


 「ご領主様、その汚れた棒は何ですか」


 〈リク〉が不思議そうに聞いてきた。

 ドロドロの汚い棒だから、無理もない。


 「〈ガリ〉が掘った穴から出てきたんだ。すごく重いんだよ」


 「へぇー、重いのですか」


 駆け落ち夫は、興味がいたようで、手に取ってしげしげと泥の棒を調べている。

 あぁー、知らないぞ。

 そんなに手を汚したら、子供はおろか、色っぽい嫁さんのおっぱいも触らさせて貰えないぞ。


 「〈ガリ〉が掘った穴はかなり深いです。相当昔の物かも知れませんね」


 〈リク〉が夢見がちなことを言っている。

 男は、いつまでも少年の心を持っているんだ。

 無駄にしかならない、宝探し的なことが大好きなんだと思う。


 それに比べて許嫁達は、泥の棒を嫌そうにちょっと見ただけで、〈リーツア〉さんとまた新作のお菓子の話をしているぞ。

 食べることにしか、興味がないのかと言ってやりたい。

 怒られるから、決して言わないけど。


 「ご領主様、一度父に見せてみます。中がどうなっているか、分かりませんが、太さの割に軽いので全てが錆びついてはいないと思います」


 「おっ、そうか。この泥の棒が何か気になるので、教えてくれるとありがたいな」


 少し贅沢過ぜいたくすぎるけど、もし泥の棒に価値が少しでもあったら、〈ガリ〉に肉付きの骨をあげよう。

 狂喜乱舞して、〈おでぇかんさま、ありがとうござりまする〉と鳴くかも知れないな。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 いつも読んで頂いて、ありがとうございます。


 遅くなりましたが、「ブックマーク登録」をして頂いた方、「評価」をして頂いた方、「感想」「いいね」をして頂いた方、誠にありがとうございます。


 大変励みになります。全て、明日への活力です。


 作者を応援しようと思われる方は、お手数ですが、評価をよろしくお願いします。


 さて、第八章が終わり、次話から、第九章「冬休みは、流れ去った」編になります。

 この第九章は、短いものになる予定です。


 これからも、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ