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〈アコ〉の膝枕

 王宮での戦勝祝賀会は、夜に開かれることになっているので、それまでの時間で〈アコ〉に会いに行こう。


 西宮に〈アコ〉を訪ねると、門番の初老のオッサンが、声をかけてきた。


 「今度の戦争では、大活躍でしたね。信じらないような戦勲を立てられましたね。

 王宮の兵士の間でも、子爵様の話でもちきりですよ」


 「いやいや、そんな凄くはないよ。運が良かっただけだよ。

 それより、《アンサ》の港でのバスケットは有難う」


 「何、たいしたことではありません。

 〈アコーセン〉様に頼まれて、《アンサ》の港まで、護衛として同行したのです。

  昔、投槍で少しは鳴らしたこともあるので、上手く行きました。

 〈アコーセン〉様は大層感激されて、お役に立ててなによりです」


 取り留めない話を暫くしていると、〈アコ〉が来てくれた。


 〈アコ〉が少し遅かったのは、詩歌を創作したり、評価し合う集まりに参加してからのようだ。


 今日は、〈アコ〉の母親が不在だからか、一人がけの椅子じゃなくて、ソファーの方に座ることになった。

 〈アコ〉の母親は、王宮の一員として、戦勝祝賀会の差配を一部任されて、その準備で忙しいようだ。


 「〈タロ〉様、無事に帰っていらして、私は心の底から嬉しいですわ。

 毎日、お祈りしていました。本当にお怪我をされて無いのですか」


 「有難う。このとおり何処にも怪我はないよ」


〈アコ〉は、それでも心配なのか、僕の方に身体を向けて、顔や首や手を優しく撫でて、確かめるのに余念がない。

 〈アコ〉に、スーと触られたところが、ゾックってしてしまう。


 続けて、下から覗き込むように僕の目を見ながら、問いかけてきた。


 「泥だらけのパンを食べさせてすいません。美味しく無かったはずです。

 お腹はくださなかったですか」


 「心配しないで、とても美味しかったし、全く大丈夫だったよ」


 「〈タロ〉様に、私が作った、あんなパンを食べて頂いて、とても、とても感動したのですけど、すごく心配でしたの。

 そう言って、頂いてほっとしましたわ。

 今ならまともなパンがありますけど、お食べになります」


 「有難う。せっかく、勧めてくれたんだけど、今は食欲はないんだ」


 「そうですよね。ついこの間まで、戦争に行ってらっしゃったのですもの、無理もありませんわ。 

 疲れていらっしゃるのですね。少し横になって、お休みになります。

 良ければ、私の膝を使ってくださいね」


 膝枕をしてくれるのか、こんな申し出を断るわけにはいかない。

 膝に対する、失礼千万だ。


 「良いの。〈アコ〉が言うとおり、少し疲れているんだよ」


 「もちろん良いですわ。私の膝は、〈タロ〉様の自由にしてもらって良いのですよ」


 僕は、おずおずと〈アコ〉の膝に、頭を乗せた。

 正確には太ももだ。膝では先端過ぎる。

 どうして、太もも枕とは言わないんだろう。語感が、イヤらしいからか。


 安定するポジションを捜して、頭を太ももの上で、モゾモゾさせていると。


 「キヤッ、〈タロ〉様。頭をあまり動かさないで、くすぐったいですわ」


 「ゴメン。動かさないようにするよ」


 でも、〈アコ〉が、まだくすぐったいのか、身を捩るので、また、不安定になってしまう。

 何回も、安定するポジションを捜すしかない。


 「キヤッ、もう、〈タロ〉様、ダメです。

 私のももをスリスリしないで、じっとしていてください。

 私、困ります」


「ゴメン。やっと、頭が安定したから動かさないよ」


「もう、動かしたらダメですよ。

 私の膝枕はどうですか。〈タロ〉様、疲れは取れそうですか」


「〈アコ〉、柔らかくって、暖かくて、良い匂いがして、癒されるよ」


〈アコ〉は、少しふっくらとしているから、太ももも、むちゅっとして、柔らかい。


 フニュフニュって感じだ。

 適度に太さもあって、右顔が柔らかいお肉で、包み込まれる。

 温かいし、〈アコ〉から出て来る良い匂いもする。

 深呼吸しよう。


「キヤッ、〈タロ〉様。そんなところで、深呼吸されたら、恥ずかしいですわ。

 そんなことをする〈タロ〉様には、こうして差し上げますわ」


〈アコ〉が、匂いを嗅がせないためか、僕の鼻を優しく摘まんでくる。

 可愛いことをするなと思って、僕はそのまま黙ってさせておいた。


〈アコ〉は、続けて話しかけてきた。


「何度も言いますが、私は、〈タロ〉様が、無事なのでウキウキしています。

 羽が生えて飛んでいきそうな勢いですわ。

 素晴らしい軍功を立てられたそうですが。

 流石は私の〈タロ〉様ですが、無事に帰ってこられたのが、何百倍も、何千倍もうれしいですわ。〈タロ〉様、聞いてらっしゃる」


 僕は本当に疲れていて、〈アコ〉の膝枕で眠ってしまったようだ。

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