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衝角の発注

鍛冶屋に来たが、相変わらず小汚い店だ。

中から人が話しているのが聞こえる。

客がいるのか。僕は領主だ、構わない、入ってやれ。


「失礼するよ」


「なんだ、若領主さんか。あんたとこの執事に頼まれて、大忙しさ。喋っている暇はないよ」


「これは、領主様。この度は住処も、良い親方も紹介して頂いて有難うございます。

新規一転、頑張ります。今、親方と窯の相談をしているんですよ」


「それは、良かったな。ただ、煉瓦は後回しだ。先に作って欲しい物がある」


「突然、煉瓦窯を押し付けて、今度は急に違うことを言いうのか。

良い加減にしてくれよ。勝手にもほどがあるよ」


「そう怒るなよ。凄い発明なんだ。歴史に残るよ」


「普通なら、フンと鼻で笑うところだが、水車のことがあるんで、一応聞いてやるよ」


「そう来なくっちゃ。今度のは、衝角って言うんだ。船首に取り付けて、敵船を突き刺す装置だよ」


「衝角ってものは、聞いたことがねえな。まさか、船に槍みたいものを付けるのか」


「頭が良いな。そういう感じだ。船腹に穴を開けて沈めるんだよ」


「確かに理屈は、間違っていねえ気がする。喫水線の下に穴が開いたら、沈むわな。

ただ、刺しに行った方の船も、もたないんじゃないか。船体に凄い力がかかるぞ」


「「深遠の面影号」なら、何とかもつと思うよ」


「確かに、あの船は丈夫で大きいからな」


「肝心の衝角って言うのは。どんなものなんだ」


おぅおう、鍛冶屋が乗ってきたぞ。水車っていう実績が効いているな。


「幅が1m位の三角形の先に、短い槍が二本付いているのを考えているんだ」


そこに呼び出しておいた。船長の〈サンィタ〉がやってきた。


「若領主様、何か用ですかい」


「船長、良い所にきたな。「深遠の面影号」に衝角を付ける相談をしていたんだ」


「若領主様、その衝角っていうのは一体何ですかね」


 僕は船長に衝角の説明を行った。


「「深遠の面影号」に、そんな変なものを付けるのは反対だな。

 格好悪いし、船が壊れてしいますぜ。おまけに、船首に取り付ける箇所なんかないですぜ」


「そうなんだ。困ったことに、船首には取り付けるところが無いんだよ。 

 そこで考えたんだが、船腹の左右に長い丸太を固定して、丸太の突端に取り付けるのが良いと思う」


「取り付けることは、決めているのか。ひでぇ話だな。俺の意見は無視かよ」


「そんなことはないさ。もう決めているけど」


 船長は悲しそうな顔をしている。

 不思議とおっさんが悲しんでも、全く気にならない。


「それじゃ、鍛冶屋は丈夫な鉄で、槍付きの三角形を作ってくれ。

 船長は船腹の左右に長い丸太を固定する準備をしてくれ。分かったな」


 鍛冶屋はやれやれという感じだ。

 船長はもう泣きだしそうだ。


 煉瓦と鍛冶職人の〈カリィタ〉だけが、「歴史に残る凄い発明にかかわれるなんて、光栄です」とやる気に満ち溢れている。

 どこの世界でも、若者は思考が柔軟で、年寄りは思考が凝り固まっているな。

 困ったもんだ。


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