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すごい、大っきい。思ったより大きい。

 領地に帰って、儲けを執事の〈コラィウ〉に渡した。


「〈タロ〉様、良くこんな短時間で利益を上げられましたね。

 蜜柑を販売すると聞き及んでいましたが、脱帽するしかありません。

 これで、《ラング》子爵家は安泰です」


「そんな大したことじゃ無いさ。幸運が重なったのだよ」


「謙遜されますね。幸運だけではないと思いますが。

 そうそう、例の水車が完成しました。もう設置も終わって、順調に水を汲み上げています。

 農長が張り切って作付けすると言っていましたよ」


 設置してしまったのか、最初に汲み上げる感動シーンを見たかったな。

 仕方がない、後で見に行こう。一人じゃ侘しいので、〈クルス〉と〈サトミ〉を誘って行こう。


「煉瓦職人を一人連れて帰ってきたんだ。住むところと煉瓦を焼く窯なんかの手配を頼むよ」


「ほう、煉瓦職人ですか。《ラング》の町にはいないですから有難いですね。

 一人だけなら住む場所の手配は何とでもなりますが、煉瓦を焼く窯の方は、私にもとんと見当もつきません。鍛冶屋の〈フィイコ〉さんに相談してみます」


「急で悪いけどよろしく。鍛冶職人でもあるらしいから、丁度良いんじゃないか」


 適当なことを言ってるけど、後の諸事は〈コラィウ〉に任せてしまえ。

 執事なんだが、家臣なので構わないだろう。


〈クルス〉と〈サトミ〉を誘って、水車を見に行った。

 農場を過ぎて、人目が無くなった所で、三人で手を繋いだ。


 右手に〈クルス〉、左手が〈サトミ〉の両手に花状態を満喫する。


 二人の手は、柔らかくてすべすべで、両手が同時に幸せを感じている。


 許嫁達の手を握るのは、平気で出来るようになった。

 二人とも嫌がる素振りが微塵もない。はずだ。

 僕は「手繋ぎスキル」をマスターしたのかも知れない。

 それがどうした、小学生か。


〈クルス〉と〈サトミ〉は、少しウキウキしているようで、「三人一緒で楽しいな」とか、「仲良し家族みたい」とか、ほのぼのと大きく手を振って歩いていく。

 僕の手も道連れだ。


水車は、直径3mはある大きなものだった。


「〈タロ〉様、すごい。大っきいね。〈サトミ〉、こんな大っきいの初めて見た。

 川の水をジャバジャバ汲み上げているよ。これで農地も一杯増えるよ。すごいね」


「すごい迫力です。思ったより大きいものなのですね。

 この水車を考えられた〈タロ〉様は、天才です。益々尊敬します。

 町の人達も、〈タロ〉様のことを傑物だと褒めそやしていますよ」


「そうか。褒めてくれてありがとう。

 大きいか。

 今後は、農地を増やして、領地を豊かにしていくつもりだ」


 初めて見た時、「〈タロ〉様のは、思ったより小さいものなのですね」とか、

 「こんな小っちゃいの初めて見た」とか、

 真実であっても、どうか言わないでおくれよ。

 何もかもが折れてしまうから。


 帰りは、何故か「大きい」という言葉に、過敏に反応した心を、感触が良い二人の手で慰めつつ、上をむいて、足を前後に動かした。


 新しい農地には、まず荒地に強い「そば」と「いも」を植えるらしいので、〈サトミ〉は食べるが楽しみと笑い、〈クルス〉は手料理を食べて欲しいと、珍しく大きな声で話しかけてきたよ。


 日課の勉強と鍛錬と領地の政務に精を出していると、王宮から使者がやってきた。

 王から、《ベン》島の奪回作戦に参戦して欲しいという密書を携えてだ。


 王国としては、情けなく負けたままでは、沽券にかかわる。

 有力貴族が、現王の資質を疑問視し始めている。

《ラング》子爵家も、前回があのようなことになったので、このままでは体面が保てず、他の貴族に侮られてしまうだろう。

 また、親の敵討ちに、年若い跡継ぎが立ち向かうのは、戦意を大いに盛り上げる。

 少年が、領地貴族の義務を健気に果たせば、他の貴族からの評価も上がるしかない。

 ただ、跡継ぎは一人しかおらず、まだ子供なので、前線はおろか陣にも加わらず、船に待機しておいてほしい。

 敵側の船舶を牽制する役割だけを行ってほしいとのことだった。


 親が亡くなったばかりで、経済的にも負担を掛けるわけにはいかないと、戦費も30金貨くれるようだ。


 執事の〈コラィウ〉に一応相談したが、危険がほぼなくて、戦費も持ってくれる話を常識的には断れないとのことだ。

 そうだろうな。


 前回の戦は、領地貴族である父親が討たれた印象が強いから、王様は、何としても、それを払しょくしたいんだろうな。


 仕方がないので、使者には参戦する旨伝えた。

 使者は秘密の厳守と作戦開始は、おって連絡するといって、王都にとんぼ返りで帰っていった。


 戦争に行くとは言ったが、正直怖い。

 船で待機とはいえ何があるか分からないのが、世の常だ。

「深遠の面影号」は大きくて丈夫な船だが、もっと安全にする方法はないか。


 必死に考えた、というか、思い出した。


 丈夫さと大きさを生かして、船首にラム・衝角を付けよう。

 これなら「深遠の面影号」に近づける船はいないぞ。


 善は急げだ。


 そこらへんにいた、若い執事補佐に、船長の〈サンィタ〉を鍛冶屋まで来させるよう言いつけた。

 僕も鍛冶屋に行って、作製を依頼しよう。


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