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中年猫

 興に乗って歌っていると、突然笑い声が聞こえてきた。


 「ヒィャヒィャヒィャ。可笑しすぎるー。バカ丸出しの歌詞に壊滅的な音程。すごいネタだ。今まで聞いた中で最悪のギャクだ。天才バカが居るよー」


 「いきなり何だ。何者だ」


 「苦しいョー。お腹が捩れて千切れるー。助けてくれー」


 良く見ると、デブった中年ッポイ鯖寅模様の猫が、目の前で笑っている。

 苦しがっているのか、ジタバタしているのが、とても見苦しい。


 猫で中年ってどうかと思うが、艶がない毛並みとか雰囲気が中年にしか見えない。

 中年猫にバカにされて、腹立たしいし、恥ずかしいし、もはや悲しい。

 誰にも聞かれたくなかった、恥ずかし歌を聞かれてしまった。

 顔が真っ赤になったじゃないか。どうしてくれるんだ。チクショーめ。


 後、言葉を喋っているぞ。コイツは何だ。


 「失礼だろう。笑うのを止めろ。お前は何なんだ」


 「ヒィヒィヒィ。ゼィゼィ。あぁ、苦しかったョ。あまりに酷くて、面白くて、我慢できなかったョ」


 「本当に失礼な猫だな。もう一度言う、お前は何者なんだ。言葉を喋れるのは、どうしてなんだ」


 「そう怒るなョ。吾輩は「ジュジュシュ」という名前の「天智猫」だョ。人間の言うところの魔法生物の一種だョ。人語を話しているわけではないョ。吾輩の言葉を、君が理解出来ているようだな。

意志疎通出来ることは、こちらが聞きたい話だョ」


 「魔法生物。何だそれ」


 「魔法生物は、魔法生物だョ」


 「はぁ、答えになっていないぞ」


 「面倒だな。魔法生物とは、魔法が前提となっている生き物だョ。魔法で構成されているということだョ」


 「はぁ、全然分からない」


 「ふぅ、頭が悪いのか。ようは不思議で、偉大な生き物だョ」


 「もう良い。偉大は冗談でもないけど、魔法生物とは、ネコマタやチュシャ猫みたいなものか」


 「その概念は、良く分からないが、まぁ、そんなものだョ。偉大は厳選なる事実である。譲れるものではないョ」


 「魔法とはなんだ。人間も、魔法が使えるようにならないのか」


 「人間には魔法は使えないな。使えるのはスキルだけだョ。魔法を使えるのは魔法生物だけだョ。」


 「ケッ。つまらない話だ」


 「君は子爵家の一人息子の〈タロ〉君だと思うけど、とても一四歳の子供とは思えないョ。今の会話の中にも、聞いたことがない概念が出てきたけど、君こそなに者なんだョ。「天智猫」の言語を理解するスキルなんて聞いたこともないョ」


 この猫中々鋭いな。興奮して喋っていたら、つい襤褸が出たかな。

 ここは安全優先で、誤魔化すに限るな。


 「何を言うか。僕は正真正銘、この子爵家の一人息子の〈タロ〉様だ」


 「ハァー、自分で正真正銘とか、様付けとか、怪しすぎるョ」


 「ムッ。そんなことは無い。断固として〈タロ〉様だ」


 「…… こんなことで言い争っても、らちが明かないのでもう聞かないョ。やれやれ」


 「フッ、僕の勝ちのようだな」


 「…… 勝ちね。どうでも良いけどね」


 「ところでネコマタは、ここに何の用でいるんだ」


 「ネコマタじゃないけど…… 。「天智猫」は町に居つくというか、町全体を縄張りにする生物なんだョ。この町が、良い波動に包まれつつある前兆があったので、少し前から住んでいるんだョ」


 「勝手に僕の町に住んじゃ困るな。何かよかなることを、企んでるんじゃないのか」


 「…… 住処を悪くしてどうするんだョ。「天智猫」は、町を守護し、町に恩恵を与える聖なる存在と、世界中で敬愛されているんだョ。神獣とも呼ばれて偉大なんだョ」


 「住んでいると何か特典があるのか」


 「…… 特典てなんだョ。商売しているのでは無いョ。町を悪意ある者から、守っているだけでも十分偉大じゃないか」


 神獣か。本当なんだろうか。瞳の色が万華鏡のようにクルクル変わるし、ヒゲがやたらと長い。

 普通の猫では、ない気もする。喋っているし。


 良く分からないものは、適当に対応するしかないか。


 「偉大が好きだな。今日のところは、良く分からんので、処遇は保留にしておいてやる。ありがたく思え」


 「…… 生意気だョ。こっちこそ、変な奴が居るけど、しばらく住んでやるョ。有難く思えョ」


 中年猫のクセに、生意気な物言いだ。


 「決して思わん。その辺でウンコして、町を汚さないように気を付けつけろよ。それと、人の物を盗ったりするなよ。そんなことをしたら、ネコババに成っちゃうからな。グフフー。うんこと盗るで、ネコババ。恐ろしく決まったな」


 「…… 付ける薬がないョ。辻褄があってないョ」


 「フッ。バカな話をしていたらもう夜更けか。眠いから僕は館に帰る。サラバだ」


 中年猫が、まだ、ブツブツ言ってるけど、無視だ。無視。


 「フゥー。発展の予兆があったのでこの町に来てみたけど、不思議な人間がいるョ。目の前の子供が、発展の因子であることは間違いないけど、町が変な方向に発展しそうだョ。だけど面白そうではあるね」

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