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〈サトミ〉と手を繋ぐ

 今日は、〈サトミ〉との約束を果たす日だ。猫達の世話は〈クルス〉がしてくれている。


 農園まで散歩するだけという、簡単なものとなった。


 〈サトミ〉がこれが良いと言ったんだ。

 簡単過ぎるので、再度確認しても、これが良いと譲らなかった。


 「〈タロ〉様、お早うございます。遅れてごめんなさい」


 〈サトミ〉は、髪にピンクのリボンを付けて、少しお化粧もしているようだ。


 両手で大きなバスケットも持っている。これはどうも、デートのお誘いだったのか。


 「〈サトミ〉、お早う。僕も今来たばっかりだから、全然遅れてないよ」


 「そうなんだ、良かった。〈タロ〉様、早く行こう。〈サトミ〉は、楽しみなんだ」


 「〈サトミ〉、そのバスケット重いだろう。僕が持つよ」


 「そんな、〈タロ〉様は貴族だよ。〈タロ〉様に、持たせられないよ」


 「構わしないよ。女の子に荷物を持たせて、男が手ぶらじゃ恰好つかないよ」


 「うーん、しょうがないな。じゃこれ、重たいけどお願いします」


 〈サトミ〉からバスケットを受け取った。結構重いな、何が入っているんだろう。


 ふと、〈サトミ〉の手を見ると、両手で持ってたバスケットが無くなって、手持無沙汰になっている。

 手が寂しそうだな。


 「〈サトミ〉、手を繋いでも良いか」


 「ふぁ、手を繋ぐの。恥かしいけど、〈タロ〉様が繋ぎたいなら良いよ」


 〈サトミ〉と手を繋いで、町をゆっくりと歩きだした。

 〈サトミ〉は、ピンク色に頬を染めて恥かしそうだけど、嬉しそうにも見える。


 道行く人が、物珍し気に見てくるな。この世界では、あまり手を繋いだりしないのかな。

 同年代の子供達とも何人かすれ違ったけど、こっちを見て、何か話しているようだ。


 〈サトミ〉はますます頬を染めて、僕の手をギュッと握りしめてきた。


 僕は可愛い〈サトミ〉と手を繋げて、とっても気分が良い。心が弾んでしまう。

 ただ、町の門を出る時、門番が微笑ましそうに見ていたのが、少し恥ずかしかった。


 丘の上まで、二人で歩いて行く予定だ。農場までくれば、人影は殆ど無い。


 「〈サトミ〉は、〈タロ〉様と手を繋げて、恥ずかしかったけど、とっても嬉しかったよ」


 「僕も〈サトミ〉と手を繋げて、嬉しいよ。〈サトミ〉、聞くけど、町の人はあまり手を繋がないの」


 「えーっと、あまりつながないよ。つなぐのは新婚の人ぐらいかな」


 〈サトミ〉の元に戻っていた頬が、またピンク色に染まった。


 丘の上は、多少高い場所なので、農場や《ラング》の町も見渡せる。景色の良い場所だ。

 丘の上にある、ほんの少し窪んだ場所に着くと、〈サトミ〉がバスケットを開けて、準備を始めた。


 周囲からの視線を遮れるこの場所で、お茶するようである。

 畳んであったマットを広げて、茶器を出して、お茶が入ったポットも取り出した。

 そうか、ポットが重かったのか。


 「〈タロ〉様、お茶の準備ができましたよ。クッキーもあるので、食べてください」


 「〈サトミ〉に全部任して悪いな。美味しそうなクッキーだな。頂くよ」


 「〈サトミ〉がやりたかったんだから、気にしないで」


 「〈サトミ〉、お茶も旨いし、クッキーも美味しいよ」


 「ほんとに。ヘヘェ、クッキーは〈サトミ〉が作ったんだよ。嬉しいな」


 「へぇー、〈サトミ〉が作ったのか。〈サトミ〉はクッキーを作るが、とっても上手だな」


 「ヘヘェ、また、〈タロ〉様に褒められちゃった。〈タロ〉様大好き」


 「僕も可愛い〈サトミ〉が大好きだよ。ところで、これからどうするの」


 「〈タロ〉様がイヤじゃないなら、ここでお話したいな。ここはお父さんと、お母さんの思い出の場所なの」


 「ほー、思い出の場所なのか」


 「そうなんだ。お母さんは、〈サトミ〉が小っちゃな時に死んじゃったから、お父さんに聞いたの。お父さんとお母さんが結婚する前に、良くここで会ってたんだって」


 「兵長も、青春してたんだな。あのゴッツイ顔で口説いたのかな」


 「もぅ、〈タロ〉様。お父さんには言わないでよ」


 「分かったよ。兵長をこの話でからかったりしないよ。ここは良い場所だから、僕の両親もここに来たのかもしれないな」


 「あっ、〈タロ〉様、ごめんなさい。お母さんのこと思い出させちゃったね。自分のことばかり考えて、〈サトミ〉はほんとバカだな。ダメな子だよ」


 「何言ってんだ。〈サトミ〉はバカなんかじゃない。お母さんを思い出すのは、全然悪いことではないよ。お母さんは思い出して貰って、きっと喜んでいるはずさ」


 「〈タロ〉様、ほんと。お母さん喜んでいるかな」


 「だって子供なんだから。〈サトミ〉も子供や孫に、時々は思い出して欲しいと思うだろう」


 「うん。少しも思い出してもらえなかったら、〈サトミ〉はきっと寂しいと思う。〈タロ〉様の言うとおりだよ」


 「そうだよ。〈サトミ〉は、心が優しくて、可愛くて、素敵な女の子だ。もっと自信を持ってよ」


 「ふぁ、〈サトミ〉は、素敵じゃないよ〈タロ〉様、褒めすぎだよ」


 「そうかな。僕は〈サトミ〉が素敵な女子だと思っているよ。髪のリボンもとっても似合ってるよ」


 「えへへっ、似合ってるかな。今日はちょっぴりおしゃれしたんだ」


 「可愛い〈サトミ〉と居られて幸せだよ」


 「ふぁ、そんなことばっかり言われたら、〈サトミ〉変になっちゃうよ。胸がふわふわ、しちゃうよ」


 「それは良いな。もっと、もっと、胸をふわふわにしちゃえよ」


 「もー、〈タロ〉様、違うよ。胸の中がふわふわしちゃうんだよ。胸じゃないよ」


 「そうか、ゴメン。でも〈サトミ〉の胸が、もっとふわふわになったら、嬉しいな」


 「やだ、〈タロ〉様、ちょっとエッチだよ。〈サトミ〉の胸をジーッと見ないで、恥ずかしいよ」


 〈サトミ〉は、顔をピンク色に染めて、両手で自分の胸を抱きしめている。

 手を胸の前で交差して、僕の視線から、胸を隠しているようだ。

 恥ずかしそうにしている様子が、すごく可愛いな。


 〈サトミ〉のは、ふわふわと言うより、ぷにゅぷにゅって感じがする。

 ハァーもっと見たいな。


 「ゴメン。ゴメン。つい見ちゃったよ。もう見ないよ」


 「うー、〈タロ〉様、ジーッとはイヤだけど、ちょっとなら〈サトミ〉の胸を見ても良いよ」


 〈サトミ〉は、さらにピンク色が強くなった顔で、嬉しいことを言ってくれる。

 手も緩めて、胸を見せてくれるようだ。

 こんな風にされると、服の上から見るだけなのに、特別感があってドキドキする。

 〈サトミ〉は、堪らなく良い子だな。


 こんな風に〈サトミ〉と話していたら、あっと言う間に時間が過ぎて、もう帰る時間になった。


 「〈サトミ〉、大部寒くなってきし、もう帰る時間だよ」


 「えっ、もうそんな時間なの。〈タロ〉様といると、びっくりするぐらい時間が早いよ。〈タロ〉様、今日はありがとう。とっても、楽しかった。一生の思い出になったよ」


 「〈サトミ〉は大げさだな。僕も凄く楽しかったよ。また、来ようね」


 〈サトミ〉と僕は、後片付けをして、町へと帰った。もちろん、手を繋いでだ。

 〈サトミ〉は行きよりかは、恥かしくないみたいだった。


 手もしっかりと握ってきたし、僕の顔を見て、笑いかけてもきたよ。

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