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ピョンピョン太もも

 翌日〈サトミ〉に小屋へ来て貰った。


 「〈タロ〉様、おはようございます。〈サトミ〉に御用ってなんですか」


 「実は、猫を拾って来たんだ。〈サトミ〉にも、面倒を看て貰えないかなと、思っているんだ」


 「うぁ、猫ちゃんですか。見せて見せて」


 「慌てなくても、そこに居るよ。母猫と子猫なんだ」


 「うぁ、子猫ちゃんが三匹もいる。お母さん猫もいる。触っても良いですか」


 「僕は構わないけど。母猫が、怒るかもしれないよ」


 「お母さん猫に聞いてみます。お母さん、私は〈サトミ〉っていいます。始めまして、よろしくね。綺麗な寅縞ですね。少しだけ触っても良いですか」


 〈サトミ〉は母猫に、ゆっくりと話しかけながら、母猫の背中を優しくさすっている。

 あれ、触るのは、子猫じゃないのか。

 母猫は最初、身体を固くしていたが、段々力が抜けて、〈サトミ〉にさすられて、気持ちよさそうにしている。

 ノラ猫と思っていたが、案外人に慣れているな。

 〈サトミ〉の安心させる力が、凄いのかもしれないが。


 「お母さん、怖くないですか。気持ち良いですか」


 「ミィアー。ミィアー」


 「お母さん、可愛い赤ちゃんですね。ご自慢のお子ですね。〈サトミ〉も少し撫でても良いですか」


 「ミィアー」


 〈サトミ〉は、母猫が見ているのを確認しながら、ゆっくりゆっくり、指先を伸ばして行く。

 子猫に触れる手前で、一度止まって、母猫の反応を見ているようだ。


 「お母さん、赤ちゃんに触りますよ」


 「ミィアー」


 返事をしているように鳴くな。


 〈サトミ〉は、指先を伸ばして、子猫に触れた。優しく背中やお腹を撫でているようだ。


 「〈タロ〉様、赤ちゃんが〈サトミ〉の指をチュッチュッします。可愛いな。お腹が空いたかな。お母さんにお乳をもらおうね」


 〈サトミ〉は、子猫を撫でるのを止めて、母猫に返した。

 子猫は、お乳を夢中で吸っているようだ。


 「〈タロ〉様、〈サトミ〉は動物を飼うのが夢だったんです。家で飼うのは、ダメって言われて、出来なかったんです。この猫ちゃんのお世話を、〈サトミ〉がしても良いですか」


 こっちが、面倒な世話を押し付けようとしてるのに、自分からしたいとは。 

 〈サトミ〉は、本当に扱いやすいな。

 聞き分けが良すぎて、悪い男に好きな様にもてあそばれるぞ。気を付けるなよ。


 「〈サトミ〉、もちろんだ。僕も手伝うよ」


 「うぁ、〈タロ〉様、ありがとう。〈サトミ〉、頑張ってお世話するよ。やった。やった。猫ちゃんのお世話だ」


 〈サトミ〉は、嬉しくて堪らないのか、「猫ちゃんだ」って言いながら、満面の笑みでピョンピョン跳び跳ねた。


 飛び跳ねる度に、スカートが捲れあがって、ピンクの太ももがチラチラ見える。


 それを見て、僕も嬉しくて堪らなくなり、一緒にピョンピョン跳び上がった。

 〈サトミ〉が喜んでいるんだ、共に分かち合うのが、正しい婚約者の務めだ。


 しばらく、二人で笑いながらピョンピョン跳んでたら、母猫が「ミィアー」と鳴いた。


 「ゴメン。落ち着かないか」


 「お母さん、ごめんなさい。もうしません」


 「母猫に怒られちゃったよ。でも楽しかったな」


 「〈サトミ〉も、すごく楽しかったよ。〈サトミ〉は、嬉しくなると跳んじゃうの。我慢できなくなるの。皆に変って言われるんだ。一緒に跳んでくれたのは、〈タロ〉様が始めてだよ。〈タロ〉様、ありがとう。〈タロ〉様大好き」


 いぇー、初大好き頂きました。〈サトミ〉は、本当に素直で可愛いな。


 「僕も〈サトミ〉が大好きだよ」


 「ヘヘッ、〈タロ〉様、嬉しいけど、恥ずかしいよ」


 その後、二人で大人しく猫達の様子を見てたら、〈サトミ〉が急に焦って聞いてきた。


 「〈タロ〉様、名前はどうするんですか。もう決めてあるんですか」


 先程とは一転、僕を非難しているよう口調だ。


 「名前って猫の」


 「そうです。あたりまえです」


 「うーん、考えてないや」


 「直ぐ考えて、可哀そうですよ」


 猫は名前が無くても気にしないと思うけどな。

 でも、こんなことで〈サトミ〉の機嫌を悪くするのは得策じゃない。


 「うーん、母猫は「ミア」でどうだ」


 「〈タロ〉様、鳴き声のまんまだよ。でも可愛い名前だから良いか。赤ちゃんの名前は」


 僕は「名前」、「名前」とブツブツ言いながら、子猫を見て考えた。


 子猫のうち、二匹は母猫と同じ寅縞だ。一匹は鯖寅だ。

 こっちは、中年猫の血が濃いんだろう。可哀そうに。


 良く見ると瞳が、万華鏡のようにキラキラして輝いている。ヒゲも長い。

 この子猫は「天智猫」か。


 「天智猫」でも、子猫の時はお乳を吸うのか。それとも魔素を吸っているのか。

 中年猫の言ってることは、鵜呑うのみには出来ないからな。良く分からん。


 「〈タロ〉様、まだですか。赤ちゃんが待ってますよー」


 赤ちゃんは、待って無いと思うけどな。〈サトミ〉が待っているんだろう。


 「この茶色い縞の濃い方が「トラ」で、薄い方が「ドラ」でどうだ」


 「うん、うん。ちょっぴり変わってるけど、良い感じ。もう一人まだですよ。〈タロ〉様早くー」


 確か、中年猫は「ジュジュシュ」だったな。


 「銀色の縞は「ジェジェシェ」でどうだ」


 「えっ、〈タロ〉様、どうしたんです。そんな神様みたいな、長い名前はダメだよ」


 「えー、そうか。じゃ「ジェ」だけでどうかな」


 「うーん、この子だけ、名前がちょっと違う。でも色が違うから良いのかな」


 「そうだよ。色が違うからね」


 「〈タロ〉様、ちゃんと考えました」


 〈サトミ〉が猫の名前に、こんな厳しいとは思わなかった。人のこだわりは千差万別だな。


 「もちろん、必死に考えたよ」


 「〈タロ〉様のつけてくれた名前、ちょっぴり変わってるね。でも〈サトミ〉は、〈タロ〉様につけてもらえて嬉しい。お母さんと赤ちゃんも、あんなに喜んでるよ」


 特に猫が喜んでいるようには、見えないな。でも、〈サトミ〉がそう言うなら、そうなんだろう。


 名前も無事付けられたので、母猫にエサをあげて、今日は解散とした。


 〈サトミ〉は鼻息も荒く、「明日からお世話頑張ります」と気合十分だ。

 頑張り過ぎないか、心配になってくるな。

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