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中年猫の頼み

 部屋で寝ようとしてたら、突然、中年猫が現われた。

 一mほど離れた空中に浮いてやがる。


 「なんだ。なんだ。人の部屋に、ノックも無しに侵入するとはどういう了見だ」


 「申し訳ない。緊急事態なんだョ。頼みがあるんだョ」


 「ハァー、無断侵入して、おまけに頼みことだと。ふざけてるのか」


 「ふざけてなんかないョ。至極真面目な話だョ。困っているんだョ。助けてくれョ」


 「どうして、お前を助ける義理があるんだ」


 「この町を守護しているじゃないか。それと助けてくれたら、豪華な特典を与えるョ」


 「特典てなんだよ。普通は宝物とか黄金だろう」


「エッ、特典が好きなんだろう。信じられないくらい吃驚する特典だョ。「天智猫」にしか与えられない特別なものだョ。誰も持っていないものだョ」


 「それは、どんなものだ」


 「今は教えられないョ。頼みをきいてくれてからだョ。子猫と母猫を、保護して欲しいだョ」


 「子猫と母猫? なぜ、保護がいるんだ。お前が面倒見てやれよ」


 「母猫が年老いて弱っているんだョ。このままじゃ子猫も助からないんだョ。「天智猫」は猫と違って、栄養を取得させる方法がないんだョ」


 「アー、嘘つくなよ。何か栄養を取らないと、生きていけないだろう」


 「嘘じゃないョ。神獣を形作っているのは魔法だョ。空間に存在している、魔素を取り込むことによって保たれているんだョ」


 「それなら、魔法でネズミとかを、捕まえれば良いんじゃないか」


 「「天智猫」は守護するものだョ。攻撃する魔法は無いんだョ。猫と違って、ネズミとか餌は取れないんだョ」


 「カー、使えないヤツだな」


 「ムッ、失礼な。しかし、今は許そう。早くしないと死んじゃうョ」


 「何故、僕に頼むんだ」


 「言葉が、通じるのは君しかいないョ。経済的にも、場所的にも猫を飼う余裕がある。おまけに自分以外に、面倒を看させることが出来るョ」


 中年猫が勝手なことをほざいていやがる。

 が、領地の中では、僕が猫を飼う余裕が、一番あるのは確かではあるな。

 〈サトミ〉に、猫の世話を押し付けても多分怒らないと思う。

 スキルがあるから、動物の世話が得意な気もする。


 何かろくでもない物かもしれないが、特典も気になる。

 それに、子猫と母猫を見殺しにするのは、やはり気がとがめる。


 中年猫の計算づくの作戦に、引っかかるのはしゃくだが、ここは恩を売っておこう。

 古人曰く、「情けない人はならずもの」だ。うーん、「情けは人のためならず」だったかな。

 まあ、同じようなもんだろう


 「子猫と母猫を見殺しには出来ないと、僕の心がシャウトするよ。仕方がない。何とかしよう。無垢な少年の心に付け込むとは、計算高いヤツだ。ただ、上手く世話が出来なくても、責任は取らないぞ」


 「おお、ありがたい。感謝するョ。決して計算なんかしてないヨ。誤解だョ。世話は、君の婚約者に頼んだら心配する必要はないョ。特典は期待してくれて良いョ」


 やっぱり、僕より〈サトミ〉をあてにしてたな。

 〈サトミ〉のスキルも知っているって事は、町を守護すると言いながら、あちこち覗いているんじゃないのか。疑わしい。何せ中年だからな。


 それから、中年猫が先導して、細い路地の奥で子猫と母猫を保護した。

 母猫は痩せ衰えて、子猫はお腹が凹んで、ピィピィ泣いていた。

 ほんの僅かでも保護が遅れていたら、危なかった気がする。


 館で飼うのは、説明が面倒だし、〈サトミ〉も来にくいだろう。

 だから、改修した小屋で飼おうと思う。

 小屋を改修しておいて良かった。先見の明がある。流石だな。


 早速、母猫にミルクを与えて、子猫と母猫を使い古しの毛布に包んであげた。

 母猫が「ミャー」って鳴いて、子猫はお乳を吸って、ウトウトとしだした。


 もう夜なので、今日のところはこのぐらいか。明日は、〈サトミ〉を連れてこよう。

 〈サトミ〉の反応が楽しみだな。


 中年猫はこれで安心ですと、しきりにお礼を言ってきた。

 猫達を見守る目も優しくて、コイツにも良いところがあるようだ。


 去り際に、目を瞑りながら僕の胸に肉球を当てて、何やらゴニョゴニョ言っていた。「

 天智猫」のお礼の仕方なのかな。

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