走馬灯のように、グルグルと
〈アコ〉と〈クルス〉と〈サトミ〉は、手足を縛られて、馬車の中に転がされていた。
もちろん、猿ぐつわを噛まされた状態でだ。
幸い意識はあるようで、僕が入って来たのを見て、「うぅ」「うぐ」「えぐ」と声を出しながら泣いている。
僕は、三人を見つけることが出来て、胸の辺りが燃えるように熱くなってしまった。
心を支配していた焦燥感が、嘘のように消えて、そこに日の光が差し込んでくるようだ。
油断していると、溢れ出して泣きそうになる。
三人の縛を解ほどくと、僕へ突進するように抱き着いてきた。
「うぐぐっ、じゃろたま」と言いながら、すがりついて離れない。
他の女性達も、解放しないとは思うけど、すがりつかれて動くことが出来ない。
今は許嫁達を、振り払う意欲も湧かないし、してはいけないと思う。
もう少し、この幸せを、四人で感じていたいんだ。
馬車の外では、歓声が轟いている。
〈リク〉が、青白い肌の男達の、制圧を完了させたようだ。
後続の馬車の中から女性達が、次々と解放されているようで、すすり泣く声と慰める声が、やけに遠くで聞こえている。
この馬車の女性達も、解放され出した。
許嫁達の泣き声と、解放された女性達の泣き声が、ハウリングを起こしたように、僕の頭は真っ白になっていく。
緊張と不安と集中が、一度になくなって、僕の脳が活動を休止したのだろう。
さっきまでの反動なのか。酷使した脳の保全対策なのか。脳があまり動いていない。
まあ、無事助けられたのだから、些細なことを、気にしても仕方がないよな。
「ご領主様、腕の治療が必要です」
〈リク〉が怖い顔で、僕を睨んでいる。
怒っているわけじゃないと思うけど、鬼の形相にしか見えない。
「ぴゃ、わ、分かっているよ」
腕の血を見た許嫁達が、「じゃろたま、じんじゃいゃー」と、また大きく泣き出した。
慌ててスカートをまくり、懸命に破ろうとしている。
裂いて包帯代わりに、するつもりなんだろう。
中々破れないので、めくり上げたスカートの奥の、ショーツが丸見えになっている。
白と白と赤だ。
これが、許嫁達の助けられた、お礼なんだろう。
至近距離で、見せて貰ているから、これで十分だと思う。
なぜか、切られた腕の痛みも、引いていくようだ。
あまり働かない頭に、許嫁達との思い出が、走馬灯のように、グルグルと回り出した。
緊急事態に陥たからか、この世界へ来たとこから、鮮明に始まった。