やり直し悪役令嬢は全てを受け入れて幸せを掴みたい!!
悪役令嬢シリーズ、第三弾です!
今日から平日で学校なので、投稿や更新が減るかもしれません。ご了承ください。
「どこから道を踏み間違えたの?」
牢獄に入れられ、目の前には断罪という道しかなくなってしまった私、ミアはそう呟いた。
道を踏み間違えたのは婚約破棄の手紙が届いた時?それともリリーの物を隠した時?もしくは最初から、王子と婚約したときから?
少なくともリリーに嫌がらせをした時点ではすでに踏み外していたのだろう。実際にその結果こうして捕まっているのだから。
王子とリリーはずっと仲が良さそうだった。周りにも美男美女のお似合いと言われていたし、今頃は私と代わってリリーが王子と婚約しているのだろう。
もし、もう一度やり直せたら…。嫉妬なんてしないで、リリーと王子が仲良くしているところも、婚約破棄も、全てを受け入れるのに。
空腹と未来への絶望感で私の意識は途絶えた。
「ミア、ミア!」
「はいっ!…っ⁉︎」
思わず返事をして前を見る。その瞬間、そこにいるはずのない人がいて私は目を見開いた。
「…王子?」
目の前の王子は優雅にカップに口をつけながら問いかける。
「ちゃんと聞いてたか?」
「え、あ、その…」
周りを見渡せば牢獄とは違い綺麗な花が咲き誇る庭園だった。
たしかここは、学園の庭園よね?なんでここに…。
「その顔は聞いてなかったな?もう一度話すぞ。今度はちゃんと聞くんだ。実は、明日ある卒業パーティーだが、俺がミアのエスコートをさせてもらってもいいか?」
「もちろんです!」
急いで理解しきっていない頭を落ちつかせていつも通り微笑む。王子は私の答えを聞き頷くと私に告げる。
「この後はリリーと会う約束をしてるからそろそろ失礼する」
「わかりました」
リリーと会う、その言葉に胸がチクリどころではなくグサリと痛んだが、急いでそんな心に蓋をする。
牢獄で決めたじゃない。嫉妬なんかしないって。
王子が先程言っていた言葉は聞いた記憶がある。というか昨日の会話だ。そして、先程話題に出していた明日の卒業パーティーの朝に婚約破棄を告げる手紙が家に届いて…そのあとのことはよく覚えていない。自暴自棄になってリリーの家に行き暴れたという事は覚えているが気づいたら牢獄にいたのだから。
つまり、明日私は捕まるのだ。
「いや、神様、どうせならもう少し過去へ行かせてくれないかしら?」
明日とかもう何をすればいいのかがわからない。ちょっと、近すぎない?すでにリリーには嫌がらせしたあとだし…。
その日は眠れぬ夜を送ったのは言うまでもない。
「ミア様、大丈夫ですか?顔色がよくありませんが。」
「大丈夫よ、気にしないで…」
もうすぐ。もうすぐ届くんだ婚約破棄の手紙が。
「ミア様!大変です!!王子から手紙が!」
「…ありがとう」
震える手でそれを受け取り私は手紙を見つめる。
たしかあの日は、王子からの手紙を喜んで受け取ったわよね。それで、手紙を開けて読んで絶望して…。うーん、やっぱりそのあとがよく思い出せないわ。
ふぅ…と息を整えると私は思いっきり手紙を開く。
今度こそ、全てを受け入れるのよ!
『ミア、君との婚約を破棄させてもらう』
忘れることのないあの時と同じ文字。ふわりと香る甘い匂い…。
ドクンドクンと心臓が嫌な音を立て始めた。
意識がぼんやりとしていき、頭にはリリーと王子が仲睦まじく並ぶ姿が浮かぶ。
あぁ、そういえばあの日も甘い匂いがした後、心臓がドクドク波打ち始めたんだわ。
ハッと私は我に帰り急いでハンカチで口元を覆った。
「この匂い、幻覚を見せる毒物じゃない‼︎」
へなへなと床に座りどのくらいしただろうか?部屋に誰かが飛び込んできた。
「ミア、ミアッ!」
「王…子…」
「大丈夫だ、ミアにはちゃんと意識がある!早くあの手紙を退けろ‼︎」
あぁ、これも幻覚か。かろうじて保っていた意識も気を抜いた瞬間ふわりと消えていった。
「うぅん…悪い夢を見たわ」
目を見開くと見慣れた天井が映った。どうやら、今までのは夢だったらしい。
「夢じゃない、ミア。」
「お、王子⁉︎なんで私の部屋に!」
声のした方を見ると王子がベッドのすぐそばに腰掛けこちらを不安そうに見ていた。
「大丈夫か?」
「えぇ、気分は最悪ですけど。」
そこまで答えてハッと口を覆う。
「夢ではないということは、王子は私との婚約を破棄されたのですよね?申し訳ございません、いつも通りに話をしてしまって。」
すると王子は嫌そうに顔を歪めながらドアの外に向かって「リリー嬢、もう入ってきていいぞ。」と声をかけた。
あら?なんでリリーを?あぁ、新しい婚約者の紹介といったところかしら。
ドクンドクンといまだに嫌な音を立てる心に思わずため息をつく。
嫉妬しないなんて、無理なのかしら…。それじゃあ一生私は幸せな人生を掴めない。
「私のお父様が失礼いたしました‼︎」
リリーが入ってきてすぐにそう言われて私はポカンと口を開ける。
「あの、何かの間違いじゃ…」
私が謝ることがあってもリリーに謝られることはないはず。
「実は、婚約破棄の手紙を送ったのも手紙に薬を盛ったのもお父様なんです!」
さっきから開いた口が塞がらない。
「実は少し前からリリー嬢の父親が俺の王位継承権の剥奪を狙っていてな。それを調べるためにリリー嬢と親睦を深めていたんだが…まさかミアが狙われるとは。巻き込んですまなかった!」
あぁ、これは夢なのですか?こんな、ご都合主義な結末があっていいのですか?
「リリー様、お父様のせいだとはいえ、嫌がらせをしてしまい本当に申し訳ありませんでした」
「いえ、大丈夫です。ミア様は何も悪くありませんわ。」
「そして、王子、私…」
私が言葉を続ける前に王子が話し出す。
「ミアが狙われていることを知って本当に肝が冷えたんだ。ミア、もし君が嫌ならば俺との婚約を破棄してもらっても構わない。」
その瞬間、私の浮かれ気分モードが即行で消えた。やっと幸せを掴んだと思ったのに、また婚約破棄⁉︎
「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
私は思わず王子に問いかける。
「あなたは私だけを愛していらっしゃいますか?」
すると間髪を容れずに王子は答える。
「もちろんだ‼︎本当なら婚約破棄なんてしてほしくない!でも、ミアが幸せになってくれることが第一だ。そのためなら婚約破棄だって…」
「私の幸せを願うなら婚約破棄しないでください!」
そう、私はもう気づいてしまったのだ。
「あなたがいなければ私は幸せになれませんわ」
空気をよんだのかリリーはいつのまにかいなくなっている。
「やり直してもやっぱりあなたといたいのですから!」
その後、無事2人は結婚し平和な世界を築くことはまだ誰も知らない。
end
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2022/06/27