第1章 建国編 7話
第7話 翼人族の少女
『うんまっ!!』
先程狩猟したデスウルフをイヴの指示に従い捌き、
魔法でこんがり焼いて食していた。
2日食べてなかったとはいえあまりのうまさに驚いた。
味付けなどしなくてもうまみ成分が多くとても美味だった。
【食べきれない分は闇魔法で影収納する事を勧めます】
【影の中では時間経過されません】
【鮮度を落とす事なく保存可能です】
『まじか闇魔法…有能すぎんだろ』
さっそく闇魔法中級を使いそのまま影収納と名付けた。
『“影収納”発動』
地面の影が丸くなり目の前に移動してきた。
残ったデスウルフの肉を影に向けて投げるとそのまま吸い込まれていった。
『まじで収納できたよ、何でもありだな異世界』
『よし、このまま保存食確保しながらレベリングしよう』
『気配感知起動』
武勇のギフトも上げておかなければこの密林から出るのは危険らしいので、
どこでも探索出来るようにレベリングに励むことにした。
とりあえずデスウルフを狩りまくろう。
『ん?デスウルフが3頭と別の気配が1つ…これは追われているのか…?』
弱弱しい1つの気配をデスウルフ3頭が追いかけている。
別の魔獣かもしれないがデスウルフ以外の存在を目視しておくのも大事だろう。
その気配に向けて俺も急ぐことにした。
『あれは…人なのか…?』
後ろの岩壁に逃げ道を塞がれ、
3頭のデスウルフにジリジリと詰め寄られていたのは傷だらけになっている少女。
ただ少女の背中からは大きい白い羽が生えていた。
見たことがない生物に目を奪われていると、
3頭のデスウルフが少女に向かって一斉に飛びかかった。
『っ!水牢!!』
3頭が飛びつく寸前になんとか水牢で動きを止めれた。
まとまっていてくれたおかげで3頭全て捉える事が出来た。
『ふぅ……なんとか間に合ったか』
『おい!無事か!?』
少女は張り詰めた糸が切れたかのようにそのまま喋ることなく気を失ってしまった。
息があるかの確認をし、
無事を確認したのでそのままゆっくり地面に寝かせておくことにした。
『イヴこの子は何者なんだ?』
【問いを確認】
【見た目を元に検索します…完了しました】
【この少女は翼人族です】
『よくじんぞく?亜人ってことか?』
【翼人族は人族と天使族の混血です】
【大昔戦争が起こる前に人族と天使族の間に生まれた種族です】
【稀な種族でありながら少数の翼人族同士で種族を繁栄させてきたようです】
【戦争が起こってからは少数種族であった為淘汰され消滅しました】
【女性の生き残りは一部の貴族から人気があり奴隷として数名生存しています】
【魔力量はかなり多いが人族との混血の為肉体が持たないことから】
【戦闘には不向き 主に愛玩奴隷として飼育されているようです】
【解析したところ少女は心臓に病を抱えています】
【以上の事から少女は奴隷として飼育されていたが病にかかり廃棄されたと推測します】
【ミゼルでは奴隷殺しは罪にされる国が多く】
【死の土地に廃棄し逃げ出したとすることがよく行われているようです】
頭に血が昇っていくのがよくわかった。
なんだそれ
勝手に争いを始めてこの子達の家族や友人、仲間を殺しまくり
生き残った少数も戦闘に向かないってだけで男は処分し、
女はこんな少女でさえ金持ちの道楽の道具にして
病気になった途端に死の土地へたった1人で送り込まれるだと…
『腐ってんなこの世界は…』
目の前で弱々しく呼吸をする少女を見ながら、
ぶつけようがない怒りに体が震えた。
『光魔法 “キュアー”』
キュアーは光魔法で使用可能となる回復魔法を名付けた魔法だ。
既に名付けられ一般的とされている魔法名だと名付けによる効果アップはないらしく、
一部分ではなく全体的に癒すイメージをしながら作り名付けた。
ちなみにこの世界の一般的な回復魔法はこれもよくアニメなどで見かける“ヒール”だ。
名付けのおかげで回復力は高まっているがボロボロになっているこの少女に、
いったいどれほどの回復を与えられるのだろうか。
祈りながらキュアーを重ね掛けしていく。
『見た目の傷は綺麗に消えたがまだ目を覚まさないな…』
『ここに居るよりはましか…』
俺はまだ目を覚まさない少女を担ぎ拠点へ帰ることにした。
軽い…食べ物にありつけなかったのかひどく痩せ細っている。
『なんとかしてやるからな、もう少し我慢してくれ』
キュアーが効いてるのか呼吸も普通に眠っているような安らかなものになっていた。
少女の体に負担にならない程度に急ぎながら戻った。
ステータス Lv:6→ Lv:9
・HP2600・ATK800・AGI600
・MP3100・DEF800・LUK450