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属性法術

ラク達はマリナーク商会から帰ってすぐ、ジンの家に集まって作戦会議を開くことにした。

ジンは席につくと腕を組んでラクを見つめた。


「ラク、最初にお前の戦術を話せ。法術士のお前がどう戦う?」


ジンの疑問は当然だろう。

法術士の多くは治療と戦闘補助を担う後衛だ。

魔獣と直接戦闘をする愚か者など聞いたことがない。

だからこそ、ジンたちは最初ラクに魔獣討伐を頼むという選択肢を考えていなかったのである。


「法術には回復を担う治癒と補助を担う肉体強化の魔法がある。」


法術は肉体に作用する魔法技術の一つである。

対して魔術は火や水といった自然現象を操作する。

法術士は一般的に後衛として戦士や魔術師の肉体を強化して、攻防ともに助けるのが役割であった。


「他人の強化ができるなら、自分の強化ができても不思議じゃないだろう?」

「しかしそれだけで魔獣と渡り合えるとは思えん。特に水中での戦闘は陸上の倍はきついぞ?」


ジンの言葉は紛れもない事実だった。

自由に走り武器を振るえる陸上と異なり、水中では呼吸すらままならない。

呼吸だけなら魔道具などを使って補うことも可能だが、水中移動の際の水の抵抗は普通の戦士ではどうにもできない。


対して海の魔獣にとっては海中こそ最も実力を発揮できる場所である。

ただでさえ魔獣は肉体に宿る豊富な魔力によって、人間よりも遥かに大きな力を持っている。

それらを相手に身動きすらままならない人間では、通常為すすべもなく餌となるしかないのだ。


ただし、現実には魔術や魔道具の相性によってその優位が傾くことがある。

水や雷系統の魔術はハンターにとって有利に働き、魔獣を討つことも可能にするのだ。

ラクの説明した肉体強化がそれに匹敵すると、ジンには到底思えなかった。


「もちろん、それだけで勝てると思うほど舐めてない。そこで魔道具も併用した『属性法術』の出番だ。」


ラクが考案した属性法術は戦士たちが使う肉体強化の上位互換、属性強化を応用した技術だった。


「例えばジンさんの場合、魔力は水属性だから水の流れを応用した攻防や水中戦闘が得意だろ?」


人によって扱えるか否かに関わらず、魂に宿る魔力の属性は決まっている。

ジンであれば水属性、ラクであれば命属性の魔力を生まれながらに有している。

そのため戦士であるジンなら水の属性強化、ラクは法術に適性を持つ。

ジンが長年に渡り海の魔獣たちと渡り合ってこれた要因の一つでもあった。


「うむ。水中でも水の抵抗が減り、地上と変わらん速さで武器を振れる。」

「それと似たようなことをこの属性変換の魔道具を使って法術で実現させられる。」


ラクの場合は基本が命の属性であるため、魔道具を使って属性を変える必要がある。

変換した属性魔力を法術と組み合わせて、自らの肉体を強化するというのが属性法術の正体だ。


「ふむ、ならば水中での行動ならワシと渡り合えるか。」

「法術は肉体に直接作用するから効果は倍増すると思っていい。」


属性強化は魔術のほとんどが使えない戦士たちが使用する魔術の一つである。

元が魔術の派生であるためイメージとしては魔力の鎧を纏うような形になる。

結果、強化後の動きも元の体がベースとなり、それ以上の動きをすることは難しい。

しかしラクの属性法術は肉体そのものに影響を与えるため、身体そのものが環境に適応し元の体では実現できないような動きも可能にした。


「水中呼吸はもちろん、移動速度だけなら(まぐろ)と競える。」

「ふん!自信があるはずじゃわい。」


海中でもトップクラスのスピードを誇る魚と渡り合えるとなれば、水中戦闘での自由度はジンをも上回ることが容易に想像できる。

ラクの自信の源を知ったジンは悔しそうにしながらも納得した様子で頷いた。


「ええじゃろう。ならば魔獣の対処は早いほど良い。準備にいくら要る?」


ジンの問いかけにラクとカイはそれぞれ答えた。


「必要なものは揃ってる。俺はいつでも。」

「今からだったら昼一には船を出せるぜ、旦那。」

「ふむ…。なら昼一腹ごしらえを済ませたら出発しよう。トウカ、今日は一緒に来るとええ。勉強になるじゃろ。」

「やった!」


トウカは嬉しそうに指を鳴らすと昼食の準備を始めた。

ラクたちも各自準備と昼食のために解散することにした。


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ラクは自宅で昼食を取ると、指輪と腕輪として身につけている魔道具の調子を確かめた。

身につけた魔道具の数は属性の数に合わせて全部で七つ。

火、水、風、雷、地、光、闇。

順番に魔力を通して問題ないことを確認すると、ラクはカイが準備を進めているであろう船のある港へ向かった。


船の上では漁師たちが慌ただしく出港の準備を進めている。

ジンとトウカは邪魔にならないように少し離れて待っていた。

二人共海中でも動けるようにするためか、魔獣の皮から(あつら)えた防具を身に着けている。

対するラクは先程と全く変わらない服装でいた。


「ラク兄、その格好で大丈夫?」


通常、水中での戦闘で金属製の防具を身に着ける者は少ない。

重さで身動きが取れなくなるからだ。

代わりに攻撃に耐えられる強度をもつ魔獣の皮を使った防具を装備するものが多い。

しかしラクは普段着のように見える衣服しか着ていなかった。


「試してみるか?」


それでもラクは挑発するように腕を差し出し、トウカの細剣を顎で示した。

意味を理解したトウカは細剣を抜き、恐る恐るラクの腕に刃を滑らせる。


「え、硬っ!」

「さっき話した属性法術だ。地属性は肉体を硬質化させる。」


自身の命属性を除く七つ全ての属性変換魔道具によって、ラクは全ての属性法術を実現できる。

地属性で硬化した肉体は筋肉や関節の柔軟性を残したまま強度が上がる。

ラクの属性法術をもってすれば鉄製の武器でも薄皮一枚切れない強度を実現していた。


最初は恐る恐る刃を滑らせていたトウカはラクの腕が全く傷つかないことを悟ると、ムキになってだんだん斬りつける強さを上げてきた。

いよいよ本気で腕を切り落としに来たトウカの剣をラクは素手でつかみとり止める。


「ムキになって容赦なくなるあたりトウカちゃんらしいね。」

「んぐっ…。」


夢中になって気づいてなかったらしい。

ラクを本気で斬りにかかっていたことを言い当てられ、トウカは小さく縮こまった。


「魔法騎士団って凄いね。私もまだまだだなぁ。」

「俺だってここまで来るのに3年かかってるんだ。トウカちゃんだってこれからさ。」


実際、ラクより5歳年下のトウカは同年代の中では突出してると言ってもいいだろう。

ジンの指導の甲斐もあるだろうが、それでもSを除く5階級の中で真ん中のCランクはハンターとして一人前と称される階級だ。


割合でいれば高位ランカーと称されるA以上は全体の1割と言われている。

Bランクでも2割、多くのハンターがCで止まっている。

若くしてCランカーに成り上がったトウカはこの町でも期待のハンターと言って間違いないだろう。

ラクとの実力差に少し落ち込み気味だったトウカの顔には少し元気が戻った。


そうこうしているうちに出港の準備が整ったのか、船の上からカイの声が響いてきた。


「出発するぞぉ〜!乗ってくれ!」


ラク達は互いに顔を見合わせて頷くと船に向かっていった。

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