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どうも、魅力的な女(笑)です。  作者: まのろ
本編
13/20

パーティーに行きましょう(前編)

「――おい、何の冗談だ?」


 真顔の美形が凄く怖い。こんな表情は出会ってから一度も見たことがなくて、心が折れそうになるけれど、ぐっとお腹に力を入れて真っ直ぐに見返す。

 グレンさんごめんなさい。でも私もこれだけはどうしても叶えたいんです――。





 あの後、私とグレンさんは一緒にお見合い会場まで空を飛んできた。

 なんと、有翼種はお互いに羽を広げあった後、一緒に空を飛ぶことで本当の『番』になるらしい。


 だから無性にグレンさんと空を飛びたかったんだなぁ、としみじみと納得。


 地上に着くと、「ん」という鼻から抜けるような少し甘い声と共にグレンさんから当然のようにエスコートの手が差し出された。全く気負わずに普通にこういう王子様っぽいことする所、普通にときめきます。


「これからどうするんですか?」


「受付で番の届出をしなきゃだろ」


「……そうでしたそうでした」


「お前……、あきらかに知らなかっただろ」


「えへ」と笑うと、「ったく」とか言いながらも優しい顔で笑ってくれるグレンさん。こんな素敵な人が恋人だなんて夢みたいだ。


 受付に着くと初老の有翼種の男性が私たちに微笑みかけようとして、


「この度はおめでとうござ、い……ま……」


 固まった。見事に微笑みかけたその半笑いの顔のまま固まった。


 ――大丈夫ですか、おじいちゃん!だいぶ面白い顔してますよ!!


 胸中大荒れの私に対してグレンさんは普通に「ツガイ申請届出書を」と続けた。強いな。

 受付のおじちゃんが「え? つ? を?」と訳の分からないことを口走り、ぎぎぎ…と音がしそうなほど不自然な動きで私の方をガン見した。えっ怖。なに!?

 思わずグレンさんの腕にしがみついて半分隠れると、グレンさんの羽がご機嫌に揺れる。可愛い。嬉しくて硬い二の腕におでこをスリスリと擦りつけると、お返しとばかりにグレンさんの羽がすりすりと甘えてきてくれた。顔を上げると、なに?とでも言いたげな普段通りの泰然としたいつものグレンさんがいて。


 うおおおおっ! なんだこのギャップ!!! 尊い!!


 気づくと自分の羽も甘えるみたいに勝手にじゃれていた。

 ……ていう事は、グレンさんの羽も無意識に動いて……?

 グレンさんも無意識で甘えてきて……!?

 どうしよう! これは! なかなかクる!!


 きゃ――――!!!


 私達の無言のいちゃつきに生温い笑みを浮かべたおじちゃんが黙って書類を手渡してくれた。


「お前は運び屋だったんだな」


 職業欄をみてグレンさんが呟いた。


「運び屋って……。そこは、航空配達員って言ってください」


 グレンさんの瞳が何故?と訴える。


「イメージは大事ですから」


 前世のイメージで「運び屋」っていうと違法物を運ぶイメージがあるんですよ。私だけかもだけど。グレンさんは「へえ。別になんでもいいけどよ」と書類を書き進めていった。


「こんなもんか」


 書き終わった書類に不備が無いか見直したあと、提出して無事に受理されたのを見届けた。


「こうして私達は晴れてツガイになって、ちゃんと届出も済ませたのでした、まる」


「何目線だよ」


「心の中でお母さんに報告した感じの目線でした」


「なるほど。ってかそのうち挨拶にもいかねえとな」


「そ、そそそそうですねっ」


 照れてそわそわすると、グレンさんが見守るような穏やかな目付きで見下ろしてきて、ぽんぽん、と頭を撫でてくれた。


「用も済んだし、帰るか」


「えっ」

「は?」


 エメラルドの双眸ときょとっと見つめ合う。


「……もう帰るんですか?」


「寧ろまだなんかあるか?」


 怪訝な顔をするグレンさんに「あのですね」と切り出す。


「実は昨日、朝ちょっとパーティーに顔を出したくらいで、ちゃんと出席したことないんです」


「……だから?」


「ちょっとだけ他の人達がどんな雰囲気なのかとか、出てる食事とか見てみたいなぁ、って……」


「はあ!?」



 ――そして、話は冒頭に戻る。



「おい、なんの冗談だ」と呟いたグレンさんは無表情で「さっき自分で晴れて番になった、っていってたよな?」と低~い声で聞いてきた。


「ひえっ。そうなんですけど!」


「……お前、さっき俺がアナトリアに触られててめちゃくちゃキレてたよなあ?」


「私はグレンさんみたいに他の人には触れさせませんよ!」


「あの時はまさかお前が俺を番と思ってるとは思わなかったし。それにそもそもアイツはああ見えて男だ」


 でも、もう誰にも触らせねぇよ、と言い切ってくれるグレンさん。好きだ。


「ってええ!? お、男っ!?」


 どっからどうみても女性にしか見えなか……確かに胸のふくらみは無かった。


「~~っっ」


 恥ずかしい!すっごいやきもち妬いた挙句、相手が男の人だっただなんて!!


「お前も身をもって有翼種の独占欲を知っただろうが。婚活会場(こんな所)に顔なんか出してみろ、一瞬で会場が闘技場になるぞ」


「でもでも私、子供の頃からずっとお母さんとかおばさんからいっぱいパーティーの話を聞かされてて。だから、このパーティーにすっごく憧れてて……」


「は?」


「どうしてもちゃんと見てみたいんです」


「おまっ、ふざけんなよ!? 有翼種の執着心と独占欲舐めんなよ?」


「だって今日行かなかったら人生でもう二度と見れないんですお願いします神さま仏さまグレンさま…!!!」


 グレンさんは「ほとけって誰だよ……」と呟いたあと、不愉快そうに眉間に皺を寄せた。


「絶対に嫌だ。なにが悲しくてわざわざお前を他の野郎に見せなきゃならねぇんだ。――帰るぞ、ミア?」


 恐ろしくにこやかにキラキラと嗤いながらも、目の奥が全く笑っていない人外レベルの美形にコキュンと喉が鳴る。


「行きたいところなら何処でも連れてってやるから、行くぞ」


「じゃあ会「ん?なに?」


 にっこりと笑ってるのに、瞳孔が開いて爛々と光るエメラルドの瞳が怖い。


「でも、……だって、」


「『でも』じゃない、『帰ります』だろ、ミア?……それとも会場を血で染めたいか?」


 甘い笑みと甘く低い声で脅してくる超絶美形の圧が凄くて泣きそう。


「……だって、だって、グレンさんと一緒に会場行ってみたい……」


 すん、と鼻を鳴らしながら言うと、グレンさんがガックシした。「ああ、クソ…可愛いな……っ」とか呟いて、盛大なため息を落とした。


「…………………………俺から離れるなよ?」


「ありがとうグレンさん!」


 思わず抱きつくと、グレンさんの羽が嬉しそうにぱたぱした。可愛い。


「他の雄を見つめたり、笑いかけたり、喋りかけたりするなよ」


「はいっ」


「それから、――――後でどうなっても文句言うなよ?」


 うっそりと淫靡に笑う美形に、なんだか嫌な予感が走る。


「えっ、それ、どういう」


 ガッと腰に逞しい腕が巻きついたかと思うと、会場に向かって進み始めた。

 え、まって。最後の変な予告はなんですか!?めちゃくちゃ不穏なんですけど…!


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