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どうも、魅力的な女(笑)です。  作者: まのろ
本編
12/20

ただの羽が綺麗なだけの女とただの顔がいいだけの男の話。

「へん、ですよね?」


 本当は言わないでおこうかな、とかちょっと思ってた。けど、さっきからこのせいで齟齬が生じてる気がして。私の身勝手な理由でグレンさんを悩ませるのはダメだなって思った。


 でも、もし拒絶されたら――。


 もうこんなにグレンさんの事を好きなのに、諦めなきゃ、いけないのかな。


 嫌だな。


 じわ、じわ、と涙が浮かび上がっていく。


「なに泣きそうになってんだよ」


「だって、」


「そんなに俺から嫌われたくない?」


 余裕の笑みを浮かべる美形にジト目を返す。


「当たり前の事を言わないでください」


「………………だな。悪かった」


「なんでもっとにやにやするんですか…っ」


「にやけるような事言ってくれるからだろ」


 私が真剣に悩んでるのに!


「別にいいんじゃねえの?変でも」


「慰めはいりません」


「慰めじゃねえ」


 グレンさんは真っ直ぐに私を見つめて言った。


「そんなお前だからこそ俺を選んだんだろ。俺がそれを否定するとでも?」


「……ほんとうですか?」


 グレンさんの大きな手が私の後ろ頭を捉えて、ぽす、とその逞しい胸板に引き寄せられた。髪を梳くように頭をゆるゆると撫でられて、その気持ちよさにとろとろと体から力が抜けていく。グレンさんの腕の中、温かくて、力強くて、なんだかすっごく安心する。


「羽の色が気にならないって言うなら、俺にとってこんなに都合がいい事はねえよ」


 抱きすくめられながら、優しく囁かれた。

 ずるいなぁ。

 こんな風に甘やかされたらなんでも信じたくなっちゃう。

 ぎゅっとグレンさんに縋り付く。


「信じてくれないか?」


 少し甘えるような言い方が本当にずるい。


「……信じます」


 いい子だ、と言わんばかりに頭を撫でられた。羽がぴこぴことご機嫌に動いてしまう。

 もう完全降伏だ。グレンさんの腕の中、ほんとうに気持ちいい…。


「もう一つお伝えしたい事があるんですけど……」


 エメラルドの目が「なに?」と続きを促す。


 貰ったネックレスに触れる。

 こんなものをくれるんだからだいじょうぶ。

 ぜったいだいじょうぶ。

 深呼吸。よしっ、言う……やっぱりもう一回深呼吸。


「………………好きです」


 い、言っちゃったあああ!!!


「ああ」


 目を細めとふんわりと微笑む超絶美形。


「……」


「……」


「え?」と首を傾げる私に「ん?」と首を傾げるグレンさん。


 ――え、ちょっと待って。

 私の渾身の告白の返事が「ああ」なの?

「ああ」って何!?

 OKってこと?それとも気持ちだけ受け取っておくよ、ってこと?


「どうした?」


 ええー??

 曖昧な伝え方した私が悪いの?


「わたしを、グレンさんの、……つ、ツガイにしてください」


「――――――――――――――は?」


「わたしを、グレンさんの、つがいにして、くださいっ」


 お互いを無言で数拍見つめあう。突然――ぶわっと目の前の秀麗な貌が朱に染まった。


「……え……」


 目元を赤く染めた美形軍人さんが口許を手で押さえて美貌を逸らす。


「――ちょっと待て。破壊力がすげえ」


 なんだこれ。そっちこそちょっと待ってほしい。

 超絶美形の照れ顔の破壊力よ。

 いつもの人誑しっぽいグレンさんもいいけど、この初心っぽいグレンさんもよい。控えめに言って最高だ。ぽぉっとグレンさんを見つめていたら、落ち着いたらしいグレンさんがもう一度、その美貌をこちらに向けてた。――わたし、そのうち死んじゃうかもしれない。


「ごめん、もう一回言って?」


 甘く蕩けた翠の瞳に、上気して色っぽく染まったその美貌。


 すごい。すごい色気だ。

 あたりの空気が桃色に見える。

 むせかえるような大人の男性の色香に顔がぼぼぼ……と、どんどん熱くなっていく。


「ミア」


 切なげな表情で名前を呼ばれた私は、グレンさんの色気に耐えられなくなってええい、と口を開く。


「私をグレンさんの番にしてくださ…………く、苦じっ」


「あー……。そっか。本能が壊れてるって、こういう事かよ。最っ高」


 う、骨が、骨がみしみし言ってますグレンさん!ポンポンと背中をたたくと、正気を取り戻したグレンさんが腕の力を緩めてくれた。


「もうとっくにほぼほぼ番だっただろ。後はお前が俺に承諾するだけだったのに」


 笑いながらなでなでしてくるグレンさん。

 えっ、嘘。嬉しい。嬉しいんですけど、えっ、こんなにサラッとしてるの?


「あ~…有翼種の雌は普通自分から雄に求愛したりしないし、ましてや番にして欲しいって告白するなんて聞いたことねえ」


 そうなの? そんなものなの?


「お前は本当に規格外だな」


 くつくつご機嫌に笑う人外レベルの美形になんだか腹が立ってきた。


「だって、グレンさんが何も言ってくれないから「ん?なに?」いえ、何でも」


「ったく俺は一般的な求愛行動はほぼ全部やっただろうが。何一つ伝わってなかったのかよ」


 うぅ。伝わってない事は無いけど、口にしてもらえないと確信がもてないっていうか。


「……でも、踊ってないじゃないですか」


「今から踊ろうか?」


「いえそれは結構です」


 グレンさんが私の髪を耳にかけながら、真剣な表情で見下ろす。


「どうしたらお前に伝わる?」


「……口にして言ってもらえたら」


「口にして、ね」


 申し訳ない。ぺそ、と自分の羽が項垂れた。


「分かった。つまり、人族がするみたいな事をお前にすればいいんだな?」


 そう言うと、目の前の美形は急にスイッチが入ったみたいにニヤリと笑った。


「可愛い番のお願いを聴けないなんて男が廃っちまう」


 なあ?と聞く顔が完全に捕食者の顔に変わっている。


「出血大サービスだ。――俺が人族に詳しくてよかったな?ミア?」


 うっとりするような色気を纏った低音ヴォイスで名前を呼ばれ、美麗な顔がそれはそれは甘やかに微笑む。大きな手が私の手に触れたと思ったら、見せつけるように持ち上げられた。

 眩しくて目が潰れてしまいそうなそのご尊顔が私の手の甲に近づいて、ちゅ、と押し付けられ。今まで見たことないくらい真剣な表情で、エメラルドの瞳が、強く私を射抜く。


「好きだ。愛してる」


「~~っっ!!」


 一瞬にして顔が茹った。声にならない悲鳴を上げる私を更に追い詰めるようにグレンさんは追撃を続ける。

 今度は私の手にその美貌をそっと甘えるように擦りつけて、熱っぽい眼差しで見つめながら。


「お前さえいればいい」


 もう一度今度は手の平に口付けを落とし、


「俺を求めて欲しい」


 ハァ…と今度は熱い吐息を吐いて、長い指と私の指とを絡めて。


「愛してる」


 むせ返るような色香に頭がくらくらする。心臓がドクバクして、顔は熱いし、涙目で口をハクハクすることしかできない。


「どうした? まだ足りないか?」


 ぶんぶんと首を振る私に、グレンさんは甘やかに瞳を細めて楽し気に口の端を上げた。


「そうか足りないか。俺の番は随分と欲しがりだな?」


「なっ……ちがっ。もう……っ」


 これ以上はもう心臓がもたない死んじゃうからやめてください――、とグレンさんの口を押さえようとした手があっという間にグレンさんの首に巻き付けられる。


「そういえば、自分が『変か』って聞いて来てたな?」


 グレンさんの美貌が迫って鼻先がぴたりと密着する。額がこつりと重なり合う。

 吐息がお互いの唇を濡らすような距離でエメラルドの瞳が獰猛な輝きを放った。


「お前が変わっていようがなんだろうが、」


 ――丸ごとぐずぐずに愛してやるよ、と熱く囁くと、ちゅ、とおでこに濡れた感触を残して美貌が離れていった。


「~~~~ッッ!!!」


 死ぬ!!!


「今度こそちゃんと伝わったか?」


「はひ」


「よかった」


 真っ赤になってるのは私一人で、しれっと涼しい顔をしているグレンさんに文句の一つもつきたくなってしまった。


「グレンさん、心臓がもたないので無駄に色気を出すのはやめて下さい」


「なんだよそれ。俺は普通にしてるだけで、お前が勝手にヘンなもんを感じてるんだろうが」


 むぅ。私は悪くない。


「無自覚で色気をまき散らしてるんですね。存在がR18なんでしょうか」


「へえ?」


 グレンさんが意地悪気に目を細めてくすっと笑う。


「――その存在がR指定の男に惚れたくせに」


「ッ、~~!!!」


 図星をさされて真っ赤になった私をにやにや、にやにや、と見下ろしてくるグレンさん。くやしい、と思っていたら、何かいいことを思いついたと言わんばかりにくすりと笑う超絶美形。もはや嫌な予感しかしない。


「ミアってさ」


「や、言わないでください」


「そんな事言わずにちゃんと聞けよ」


「いやです」


 涙目で耳を両手で押さえて断固拒否の姿勢を保つ私の腕を簡単にべりっと剥がすと、私の赤くなってる耳朶にむけて超絶美形が色気たっぷりに囁いてきた。


 ――むっつりなんだな、と。


「いや…ぁ」


 し、死にたい……!


「ばかぁ……っ」


「そんな風に涙目でなじられても可愛いだけだな」


 てしてし、とその分厚い胸板を叩いても、キラキラした微笑みで「なに?」と余裕をみせてくるのが悔しい。私って仮にも最強種の1つじゃなかったのか。


「グレンさんの、ばか、」


 すん、と鼻を鳴らすとグレンさんが頭を撫でてきた。


「ごめん、ミアが可愛いから揶揄いすぎた」


「可愛いって言えばなんでも許されると思ってません?」


「少なくともお前の羽は許してくれてるみたいだぞ」


「……っ、ぅ……」


 確かに可愛いって言われて喜んでますけど!そんで許してますけど!私の恋愛脳めっ!


「ほら、悪かったって」


 当たり前のように腕の中に抱きしめられて、頭の上にあごを乗せられた。


「つーん」


 反省し始めたのかグレンさんの羽がぺしょん、と下がった。


「ごめんって」


 羽はしおしおと元気なくうなだれてるのに、顔と態度だけは余裕そうなグレンさんに愛しさが湧く。嬉しくてニヤけてしまう顔を彼の胸元に押し付けて抱き着いた。


「あまりいじわるな事言わないでくださいね」


「―――――できるだけ心掛ける」


「ふふっ。 ――グレンさん」


「なに?」と優しく返してくれる彼を真直ぐに見つめる。


「これから末永く、よろしくお願いします」


あと2話で終わります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] エ、エンダーーーーー!!!? ほんっと、このふたりのいちゃいちゃは見ていて幸せですねー [一言] R-18とかR指定という言葉が通じている異世界に笑いました!
[一言] すごい!一気読みしてしまいました! 面白かったです ありがとうございます。
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