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17話

◇場面切り替え



「アデルお兄様を探しているのですが知りませんか?」

「私は会っておりませんので」

「そう、ではもう行きますので、失礼」


リリーナは元々可憐な少女であったが、今ではその面影はない。惑わすかのごとく相手につけ込み、か弱く見せて己を守らせる。


確かに美しいが、元の彼女を知っている人間は彼女の豹変具合に驚きを隠せないだろう。


その美しさは毒々しいのだが、何処かルフスミリアを彷彿とさせる





5年前憧れのお姉様が連れ去られた


私の誕生日のお願いで、連れて行ってもらった町で起きた話だ。

別に治安も悪くなく、それと言って目立った事件が最近起きたわけじゃ無い、きっと本当にたまたま起きた事件だ。


小さな私はお兄様とお爺様の生徒さんが王子様のように見えていた。

二人の王子様のお姫様は私、私はお姫様なのだとはしゃいでいた。それはもう楽しくて、楽しくて、仕方なかった、それなのにお姉様が拐われたと知ると、私の王子様達は私の手を離して憧れのお姉様を助けに行った。


どうしてお姉様だけ...そう思った。


どうしてお姉様だけ攫われたの?どうして私の王子様二人がお姉様を助けに行くの?どうして私は攫われないの?どうして?


どうして?私がお姫様なのに...


嫉妬した、激しい嫉妬だった。

だが、お姉様が救出された時の姿をみてその嫉妬は落ち着きを見せた。

顔が腫れて服はボロボロ、みすぼらしくなって私の知る美しいお姉様じゃなかった。


確かに痛そうだったかが私は安堵した。


でもその優越感は長く続かなかった。

憧れのお姉様こそが本当のお姫様だったことに気づいたのは、お姉様が救い出された数日後だった。


私はお姉様のお見舞いを毎日欠かさなかった、今のお姉様を見ていると、お姉様より私の方が上に感じられたのだ。


その日もお姉様のお部屋に向かった。


「(あ、あれはお兄様!お姉様のお見舞いに来たのね!)」


部屋に入るお兄様を見て、扉の前まで行くと少し扉が開いて居た。

好奇心からお兄様の様子を覗き見る事にした。お兄様だって腫れが引いたばかりの色の変わった顔を見れば、私の方がお姫様だって事に気がつくはずだ。


そう思いながら覗き見る。


「ルフス...痛いか?...すまない、私が目を離して居たから痛い思いをさせた」


少し罪悪感が芽生える。

今まで姉様に対する嫉妬の感情から来る考えが、とても悪いことのように思えた。


そこで引き返して反省すればまた違ったのかも知れないが、見てしまった


お兄様がお姉様の顔に近づき口づけしている所を、それは絵本で読んだ王子様のお姫様を起こすための目覚めのキスシーン。


何も考えられなくなって居ると、お兄様の顔がお姉様から離れていった。お兄様の口から一瞬銀色に輝く糸が垂れ、立ち上がったお兄様はドキドキするほど美しく、舌でで唇についた何かを舐めとっていた。


美しかった、窓から差す日差しで輝く二人の空間に息を呑のんだ。

私の心は酷く荒れた。その光景は美しくも残酷だった。


私の心を引き裂いた、お姉様に罪悪感を感じた事など嘘のようだった。


小さな私はそこから変わった。





私は美しさに磨きをかける為、大人の様に振る舞った。今まで幼い言動だったが見る影もなく、可愛らしいふわっとした服ももう着ない、光に照らされて輝ける様に変身したのだ


だが、美しくなっても落ち着かなかった、焦燥感に駆られた。私が美しくなってもお姉様には敵わない、お姉様は赤い髪が美しく映えて白い肌は透き通り頬は薔薇色に染まる、香り立つ様な美しさだった。


私は努力して美しくなったと言うのに、何もして居ないお姉様は何故美しいのか、かき乱される。


そこから私は安寧を得るため、お姉様へのいじめが始まった。





何もして居ないお姉様に罪を着せたり、お姉様が気に入っている服をねだって奪い、お兄様から何かもらっていたらお父様に言いつけて、それを譲ってあげなさいと言わせて無理やり奪った。


私は最高の気分だった!


お兄様をお姉様に近づけさせずにしたり、一緒に食事を嫌がるお姉様を無理やり席につけさせたりもした。


そんな事を2年続けて居たある日、お父様が何やら気に入ってペンを買ってきて大切にしていたのを見て、これだと思った。


そのペンをお姉様の部屋で壊して机の上に置いておいた。夜、お父様が帰ってきてペンが無いと騒ぎ始め、真っ先にお姉様が疑われた『お前は私に恨みを持っているから怪しい』とそれも私が吹き込んだ事だ。


そうして壊れたペンを発見されて姉は問い詰められる。姉を嫌う父は血管を浮かび上がらせ大激怒、お兄様は養われる身の上なため強く出られない上、私が怖がったフリをしていかせない様にしていた。


怒られるお姉様は静かにそれを聞いて居たが、それが気に食わなかったのかお父様はお姉様の頬を思いっきり叩いた。

お姉様は少し飛ばされて地べたに座り込む、見兼ねてお兄様はお姉様に駆け寄った。


そしてお父様がとどめを刺した。


「お前なぞ生まれなければよかったのだ、事故にあって気味の悪い身体になり、お爺様にも媚びを売り、アデルニウムも誑かして、性根の腐った女だ。」


いいぞと思いながらお姉様を見ていたら、いつもと様子が違っていた。

静かになんでも受け入れるお姉様、お姉様が泣いたところなど見たことはなかった。


「泣いてるのか?こんな時だけは泣けるのだな本当お前は役者だな」


お父様は鼻で笑った。

お姉様が見たこともない切ない表情で涙を流しお兄様を気にせずお父様にすがりつく


「お父様...ごめんなさい、私は、あぁ...お願いお父様...笑って...私を、どうか見捨てないでください...お願いですお父様」


意外な反応に見ていた者は驚きを隠せない、お兄様でさえも目を見開いていた。


「は?馬鹿なお前なぞ何処かへきえてしまえ、人を馬鹿にして演技なぞしても私には通用せん」

「お...とうさ...」

「お前の父ではない!!私の娘はリリーナ一人だ!!」


お姉様の目から光が消えていた。

にしてもお姉様はお父様の事は、どうでもいいといった態度だったのに、意外だった。


初めて私はお姉様に会心の一撃を与えることができた。


そこからお姉様は生気のない人形の様になった。





その事がお爺様に知れてお父様はお爺様に殴られていたのを見た。


そしてお姉様は誰にも反応しなくなった。

お兄様にも反応を示さなかった、お兄様はショックを受けていたけど懸命にお姉様の世話をしていた。


一週間程だろうか、意外と早く回復していた今ではもうすっかり何事もなかったかの様に、でも時折見せる切なさは何処か美しく私は嫉妬でいっぱいだった。


次は何しようかと思っていたらお兄様から私の方にやってきた。


「リリーナもうやめなさい」

「え?」

「お前はやり過ぎた」


バレていたお姉様がお兄様に言わない事をいいことに、お兄様にバレない様にやっていたのに、バレたのだ。


「何の事で...」

「惚けるなルフスを散々虐めていたろう」

「いえ...いえ、違います!私じゃ」

「お前には呆れた」


言うだけ言って去っていくお兄様。

私は泣き崩れた、最愛のお兄様を取られたく無い一心でしたのに...許せない。


お姉様がいるから...


そうよお姉様の代わりになればいいのよ!お兄様にとってのお姉様に私がなるの!お兄様にそうさせるの!お兄様の弱点であるお姉様を使って私はお兄様のルフスミリアになる。


決行した。

お兄様に詰め寄り口付けをして押し倒した。


「お兄様、私がお兄様だけのルフスミリアになります。だから私を見て」

「何を言っているんだ、意味がわからない、そこを退けこれ以上失望させるな」


そう言って退かそうとするので耳打ちした


「もしお兄様が逆らうのであれば、また何度でもお父様にお姉様を叩かせましょう。お姉様の心が壊れるまでありとあらゆる事を致しましょう。」


脅した、お兄様にひどい事をした?いいえ違うわ、お兄様がいつまで経っても自分のお姫様を見間違えてるのが悪いの


決して私は悪く無い。


「何をさせたいんだ」

「ただ私の言う事を聞いて、私のものとなってくれさえすれば良い」


こうして王子様を手に入れた。





お兄様にキスをさせて抱き付かせたり、いろんな事をさせた、お兄様を動かせるのは楽しかった。段々と命令はエスカレートした。


性的な事もさせた。

性交は流石に拒否され仕方ないと思ったが


「じゃあ、私を満足させて」


椅子に座り足を開いた


「...」

「しないの?何で?じゃあお姉様には悪いけど、苦しんで貰いましょ」


目つきが変わったがお兄様は従った。

お兄様が完全に私の物になった様な気がした


この学園に来てもお兄様を絶対に離さない


絶対よ?絶対なの。


「私の王子様は何処に行っているのかしら」





図書館


「頭が痛い」

「先輩!大丈夫ですか!?」


緑の髪の少年が言う


「あぁ、もう平気だ」

「もしかして、図書館にいると言う噂の幽霊の仕業じゃ...」

「考えすぎだ」


緑の髪の少年アラケル・コンティネス学園でのアデルの弟だ。

探し物があると言うアデルをお手伝いする。アデルを尊敬しており女が苦手


「にしても、先輩の探している本見つかりませんね...」

「無いのかもしれないな...」


とある魔術の研究を記した本を探す。かつてこの学園で研究していたのだが、ある青年が犯罪に使用したため資料などはほぼ破棄したと、言われていたものだがディルによると図書館にあるらしくそれを探していた。


「(にしても先輩は、あの奇人ディストル・フロイトとどう言う関係なんだろう)」

「おい、貴様ら長々と何をしている」


コーデリアは今もちょくちょく図書館へ来ており、長いこと居るアデルとアラケルが気になっていた。


「な、何ですかあなたは」

「コーデリア・オルドー...」

「ん?貴様、よく見ればアデルニームなんとかリス」

「アデルニウム・ソーリスだ」

「ソーリス?我が同士ルフスミリアの血縁か!で、さっきから何をして居る」

「貴女には関係ないでしょう!」


噛み付くアラケルだったがアデルが止めて質問に答える


「とある本を探していた」

「ほぉ...そして見つからないのか」

「あぁ」


少しフムフムと考えるコーデリア


「よし、分かった我が同士の血縁が困っているのを、見捨てるほど私も腐ってはおらんのでな!良いだろう!その本の内容を教えよ!さすればこのコーデリアが本の元に導いてやろう!」


胸を張って仁王立ちするコーデリア


「アデルニウム様に向かって態度がでかいですよ!!」

「うるさいぞ小僧、でどうする」

「...実は音を記録する、音楽系の魔術についての研究資料の本を探している」

「あぁ、例の犯罪に使われたと言う...私も一度目を通した事があるが、元々は音楽を収音するために研究していたのに、一人のバカのせいで無に帰すとは哀れなものだな」


「知っているのだな」

「場所も知っているとも、こっちだ」





「貴女は何故その本を知っているのですか?」


コーデリアが案内していると、どうして知っているのか気になったアラケル


「私は入学してからほぼ毎日この図書館で過ごしていてな、元々本が好きだから片っ端から知らない本を読んでいたのだ。そして私が目を通した本の中に貴様らが探している本がたまたまあったと言うだけだ」


「簡単に言うが相当な数だろう」

「私は記憶力が良い方でな」


実は彼女の転生する前は瞬間記憶能力を生まれながらにして持っていたのだが、言葉が上手く喋れなくコンプレックスを持った物静かな少女であった。


その瞬間記憶能力は確かに優れているが、消えて欲しいと思う記憶も消せないため、彼女は自分を助ける為に傷ついた友の姿を永遠に思い出し続ける。


「ついた...よっ!よっ!はっ!えいっ!」

「...」

「...」



身長の小さい彼女がジャンプして、取ろうとしていたがアデルニウムが見かねて本をとると、顔を赤くしていた


「クッ...!とっとと持っていけ!!!」

「恩にきる」

「フン、我が同士の血縁だったことに感謝するのだな」

「態度はよく言えたものじゃありませんが、感謝します!」


道を引き返しながらボソッと呟く


「......本当に」




リリーナは笑顔で狂っちゃったキャラです

蝶々みたいなキャラ



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