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187・またこの人達です!

「あ、あなた達! 早く出て行かないと兵士を呼びますよ!」


 お昼前で開店準備に追われる厨房に、フロントから微かにチヨの声が聞こえてきた。

 ドアベルの音はしなかったはずのに、入り口の方を見るといつの間にか三人の男性が入り込んでいる。

 厨房の騒がしさでチヨが何を言っていたのかは聞こえなかったけれど、声の調子からお客様と揉めていると思い、私は作業の手を止めてフロントに向かった。


「あ~……この前は悪かったよ。お嬢ちゃん、そんなに警戒するなって」

「どうしたの、チヨ?」

「あ、ラナさん! またこの人達です!」


 そこに居たのは懸賞金目当てで私を攫おうとした賞金稼ぎ。そしてチヨに話し掛けたのはあの日私が投げ飛ばした冒険者風の男性だった。

 彼らは私を見て目を瞬き、フッと鼻で笑った。


「ほらやっぱりプラチナブロンドじゃねーか。そういや例のお嬢様、どこぞのパーティーにひょっこり男連れで現れたらしいな。懸賞金の話も嘘だったし、まったくいい迷惑だぜ」


 彼の言っている事は間違いではないけれど、言い方が気に入らない。それに騙されたのはそちらの勝手だ。

 私はムッとして彼らを睨む。


「……もう釈放されたのですね」

「当然さ。賞金稼ぎが賞金を稼ごうとして何が悪い? 僕達はギルドに登録したプロの賞金稼ぎだ。まあ、今回の件では少し注意されたけど」


 フードを被った男性がフロントカウンターに肘を置いて挑発的に答える。すると大柄な男性が彼の発言の間違いを指摘した。


「兄貴、少しじゃなくて厳重注意だろ?」

「お前は黙れ!」


 この人達、兵士に話せばすぐに釈放されるとわかっていたから素直に捕まったのね。

 プロと言うならありもしない依頼に安易に飛びつかないでもらいたいものだ。


「あの……賞金稼ぎは犯罪者や逃亡犯を捕まえるのが仕事なのでは?」

「普通はね。でも僕達は金さえもらえりゃ何でもやるよ。今はあるお方から人探しを依頼されてる」

「そうですか。では、まだ営業時間前ですのでお引き取りください」

「え? いやいやちょっと待てよ。何しに来たのか聞かないのか?」

「申し訳ありませんが、今は一番忙しい時間帯です。あなた方の相手をしている暇はありません」


 私がきっぱりそう言うと、男達は横一列に並んで頭を下げた。


「この間は脅かしてすまなかった! この通りだ、許してほしい」

「なっ……何ですか急に」


 この声を聞いてシンがこちらに来てしまった。揉める前に出て行ってもらおうとしたのに、最悪である。

 シンは彼らを見るなり殺気立った。


「オーナー、何でこいつらがここに居るんだよ」

「シン、いいから向こうへ行ってて。後で説明するわ。ここは大丈夫だから、今は開店準備を優先してくれる?」

「……本当に大丈夫なんだろうな」


 シンが疑わし気に彼らを睨むと、男達はシンに対しても頭を下げた。


「この前はすまなかったな。僕達はプロの賞金稼ぎとして仕事をしようとしただけなんだ。誓って彼女に危害を加える気は無かった」

「そうそう、あの後ギルドのおっさんとか偉い人達にしこたま叱られたから、許してくれよ」

「だ・か・ら、お前は黙ってろって言ってんだろ! あー……とりあえず仕事の邪魔になってるみたいだし、一旦帰るわ。行くぞ、お前ら」


 賞金稼ぎの男性達は一体何をしに来たのか、とりあえず私達に謝罪を済ませて出て行った。


「やけにあっさり帰ったな。何もされなかったか?」

「ええ、大丈夫よ。あの人達何をしに来たのかしら? まさか謝りに来ただけって事は無いわよね?」

「わかんねーけど……一旦帰るって言ってたし、また来るんじゃねーか?」


 そしてランチタイム終了間際、またしても三人組はやって来たのだった。

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