表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こんとん大戦  作者: 寿
64/68

連合艦隊反撃す


 バルチック艦隊司令官ロジェストベンスキーは目を疑った。

 目の前で三笠が大減速の上、わき腹をさらしてくれたのだ。

「司令官、討つなら今です!」

 参謀長の声に、我に返った。すかさず次の号令を出す。

「目標は、ミカサだ」

 トーゴーが乗っている。

 トーゴーは優秀な男だと聞いていた。

 ヤワラギ海軍発足当初から、当時の海軍最強国エゲレスへ積極的に留学。

 よく学びよく励みして、連合艦隊を背負うまでになったという。

 しかし。

 時代は流れたのだ。

 すでに海軍最強は、我がオロシヤである。

 現にバルチック艦隊は大航海果たし、はるばるこのヤワラギ海に舳先を並べているのだ。

 道中様々なことがあった。

 しかしバルチック艦隊だからこそ、その困難を乗り越えられたのだ。

 我々は必ず勝つ。

 断固としてヤワラギ海軍を撃ち破り、極東における覇権を手にするのだ。

 砲は次々と火を吹いた。

 しかし至近弾こそあれ、いまだ命中は無い。

 まだ遠いか? いや、至近弾がある以上、必ず命中する。

 しかしなかなか当たらない。

 ミカサはすでに回頭を終え、二隻目が頭を振っている最中だ。

「目標、なおもミカサ」

 逃がしてはならない。

 ここでトーゴーを討ち取るのと逃がすのとでは、結果がまったく違ってくる。

 艦隊の主砲は、なおも火を吹き続けた。

 だがしかし、ミカサに命中弾は無い。

 ここでロジェストベンスキーは、東郷に関する噂をひとつ思い出した。

 東郷は、非常に運のよい男である、と。


「三番艦回頭完了! 四番艦、回頭に入ります!」

 あがってきた艦隊運動の報告に、長官は表情も変えずうなずく。

 泰然としている。

 緋影も「頼もしい方ですねぇ」と、ほれぼれとした表情を見せた。

「やはり長官だ。見ているだけで、安心感がある」

「お兄さまも、このような提督にお成りくださいね?」

「我が妹は無茶を言う」

 苦笑するしかなかった。

「しかし長官が御無事なのは、やはり輝夜のおかげだな」

 その輝夜、瞑目して舷側に立っている。

 どこからか、尺八の音色が聞こえてきた。

 その音色が終わらぬうちに、カッと目を開く。

 あ、今度は三味線の音が続いたか?

 輝夜が動く。

 何故か視界が暗転して、稲光のような閃光が走った。

 視界が戻り、舷側で納刀する輝夜がいる。

 その頭上には、真っ二つになって軌道を逸らされた砲弾が、三つ四つ。三笠の向こう側に落下して、水柱を立てた。

 輝夜は井上真〇夫の声で言った。

「また、つまらぬものを斬っ………」

「緋影、やめさせなさい」

 俺も著作権やらなんやらは恐いのだ。

 とにかく、三笠の防御に関しては、輝夜が万全の態勢でのぞんでくれていた。

 そうなると、こんどは攻撃面なのだが………。

 三笠をはじめとした連合艦隊は、まだ一発の砲弾も放っていない。

「まだかな?」

 艦長は参謀にこっそりと訊く。

「まだですね。おそらくは、第一艦隊全艦の回頭完了を待っているのでしょう」

 そして、充分な引き付けも目的だと思う。第二艦隊が余裕を持って行動できるように、きっちり懐の中に呼び込んでいるのだと思う。

 とはいえ、実弾を交わす戦場でそれを実行するとは、なんたるクソ度胸か。

「距離は?」

「六一〇〇!」

「狙いはどこにつけている?」

「敵先頭艦です!」

 まだ艦隊は、回頭を完了していない。

 バルチック艦隊の砲弾は、相変わらず三笠に集中している。

 こちらには輝夜という絶対防壁があるが、それは直撃弾にのみ有効なもの。至近弾相手に海の上に立ってまで、砲弾を斬ることはできない。

 つまり、音速を越えて迫る至近弾。

 そのソニックブームだけでも、なかなかの衝撃。

 さらにコンクリート同然の水面で炸裂する、砲弾の破片。

 そして散弾のように飛び散る水滴。

 すべてが船体とクリューにとって、負荷負担となる。三笠もまた、無傷ではないのだ。

「距離は?」

「五〇〇〇!」

「長官! 艦隊全艦、回頭を完了しました!」

「うむ! 敵の旗艦をねらっているな?」

「狙いそのままです!」

 うむともう一度言って、長官は双眼鏡を覗き込む。

 もう充分に引き付けてはいないか?

 まだ反撃の火蓋は切らないのか?

 後続の艦は被弾しているぞ!

「距離は?」

「四三〇〇!」

「撃ち方、始め!」

 ついに号令が下った。

 艦長から砲撃長、そこから各部署に指示が下ってゆく。

 発砲を知らせる鐘が鳴った。

 耳をふさぐ。

 しかし砲塔の上に正座した瑠璃は、お茶をすすったままだ。

 轟音!

 炸薬が燃焼した発射煙に、瑠璃の神通力だろう、稲光のような電流火花が散っている。

 砲弾の行方は、芙蓉アイのせいだろう。俺にははっきり見えていた。

 が?

 変化球かよ! いま砲弾の進路が曲がったぞ!

 しかも曲がった先には、バルチック艦隊の旗艦が………。

 あ、命中。

「狙いそのまま、撃て撃てドンドン!」

 長官の声は、少しだけ嬉しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ