要塞
さて陸軍。
大砲兵員をそろえリョジュン要塞へと攻め込んだが、とにかくこれが返り討ちに会う。
まずは天然の地形地質を活用した要塞。
とにかく頑丈で、砲弾が貫通しているのかどうか? いやそれ以前に、効いているのかいないのか、とてもあやしいものであった。
ならばと歩兵を突撃させると、こちらはオロシヤの新兵器になぎ倒された。
機関銃である。
これが土嚢を積み上げた保塁に身を隠し、銃弾を雨粒のように降らせてくれるのだ。
一発射っては装填、一発射っては装填を繰り返す小銃では、なかなか近づくことすら許されない。
その保塁もよく考えて配置されていた。
正面をねらえば横から射たれ、横をねらえば正面から射たれる、とヤワラギ陸軍からすれば散々である。
ちなみに先のリョジュン封鎖船団と、要塞攻撃の歩兵たち。天宮緋影がすでにヨーロッパへ旅立っていたため、彼女からの祝福を受けていなかった。
もしも幸運というものが等しく分配されているものとして、緋影に祝福された兵や艦隊はリョジュン組から幸運を奪い取っていたのではないだろうか?
そう思えるほどに、リョジュン組は屍の山を築いていた。
そんな時、作戦司令部に一報がもたらされる。
「あるポイントを占拠すれば、リョジュン港が見下ろせそうだ。そこを観測地点とし、海軍の砲撃でリョジュン艦隊を攻めてはどうか?」
そのポイントが、対オロシヤ戦役最大の激戦区となる、二〇三高地であった。
将軍はすぐに兵をまとめさせ、二〇三高地へと向かわせた。
さいわいオロシヤの守りも薄い。一個連隊を出す。
しかしそれを察したか、ドラチェンコは三個連隊でここを守らせる。
双方この地の重要性を、この時点ではあまり理解をしていなかったのだ。
投入する兵の数が、双方師団単位になったとき、ようやく両将軍はここを天王山と定めたふしがある。
戦前に充分な下調べをし、綿密な作戦の上で被害を最小限におさえるという、現代戦術とはまったく違う。
まだまだ人類の戦闘は野蛮で、未熟なものに過ぎなかったのである。
しかしここでも、ヤワラギ陸軍は得意の戦法で押しまくる。
歩兵による、銃剣突撃である。
機関銃に対してだ。
当然のようにリョジュンは陥ちない。
リョジュン艦隊は温存されたまま、バルチック艦隊は進軍を続けていた。




