月曜☆ちゃぶ台劇場
月曜☆ちゃぶ台劇場
たまには同期と遊ぶのも悪くない。
山本と遊ぶのは、特に楽しいと言えた。
こいつはギャンブルの達人で、ブリッジなどは「アジアに敵はいない」と、豪語するほどの腕前だ。
だから俺は、ポーカーで相手をしてもらうことにした。
情けないなどと言うなかれ。それでも二人の差は、歴然としているのだ。
「ワンペア」
俺は六戦目にしてようやく完成したてを晒した。
山本はニヤリと笑う。
「俺の手は、これさ」
さらされた五枚のカード。それはまっとうなポーカーの手ではなかった。
お仕事です
それぞれのカードに、一文字ずつ。
いや待て山本、お前は俺の同期であって、作者の回し者ではない………。
顔をあげると、山本は慈愛あふれる眼差しで、俺を見ていた。
「大矢、男には行かねばならん時がある。死ぬとわかっていても、負けるとわかっていても、行かねばならん時がある」
「今がその時なんだな?」
「そしてお前は男だろ?」
零士先生第二段と思った諸君、残念だったな。
今回は、カズ・島本ネタだ。
だが山本は言った。
「グズグズするなよ」
しまった、そっちへ流れたか。
しかし歌詞の引用は御法度だ。
これ以上山本がおかしなことをホザく前に、帰宅しなければならない。
「♪〇ャ〇〇! あ〇よ〇! ギャ〇〇! よ〇〇〇勇〇!」
うまいぞ山本! これで歌詞引用の罪は回避したぞ!
とりあえず俺はその場を後にし、「俺が正義だ」と呟いてみた。
帰宅。
緋影と出雲鏡花は、庭先にいた。
真っ黒なスーツ姿と、真っ白なスーツ姿。シャツはどちらも真っ赤なカラーシャツ。はっきり言って趣味が悪い。
どちらも、スーツと同じ色のソフト帽を頭に乗せていた。
悪徳の街。
肥大した街。
二人は歌い始めた。
しかしその後は、二人の歌詞がバラバラになる。しっかり覚えていないのだろう。英語の歌詞だ、仕方ない。
もちろん「こんとん大戦」は、歌詞引用などは一切ない健全な作品だ。
二人はスーパーカブにまたがっていた。きっとベスパのつもりなのだろう。色が白だ。
緋影が「どっこいせ」と、カブから降りる。
出雲鏡花も「よっこらせ」と、カブから降りた。
二人仲良く、居間に上がってきた。ちゃぶ台を囲んで座る。
「月曜☆ちゃぶ台劇場! 本日のお題は、スーパーカブ!」
「なんでも作者がCBRを降りて、カブ110に乗り換えたらしいですわね」
「だからこの服装なんですね?」
改めて言おう。
スーパーカブはベスパではない。
「しかも緋影さま、作者は八月第一日曜日に、カブで往復四〇〇キロを走りやがったんですのよ!」
「新車でですか?」
「新車でですわ」
「バカですか?」
「バカですわね。ですがベスパにまたがった探偵さんは、下北沢から伊豆やらなんやら、かなりアクティブに活動してましてよ?」
ん? 緋影がカブの鍵を、庭先に捨てたぞ? で、俺たちに背中を向ける。
「………CBRは売られた。やがて次のオーナーが生まれるだろう」
おや? にわかに天がかき曇り、雷鳴が轟いてるぞ?
「それは悪魔でさえも! 悪魔でさえも否定できない事実だ!」
いやまあ、そりゃそうだよな?
お? 緋影が捨てた鍵を指差したぞ?
「その魔性の鍵をひろえ! 真田ーーっ!」
真田って誰よ?
すると襖が開いて、戦鬼護鬼のスーパー死鬼ダンサーズが、フラメンコを躍りだした。
何をしたいものやら。今回のちゃぶ台劇場は、きっと低いヒット数しか稼げんぞ。
だが真田と呼ばれた出雲鏡花は、ソファでリモコンを使い、オーディオを操作していた。
スピーカーから流れる交響曲。
世界の崩壊を暗示する旋律。
「緋影さま、ショスタコービチの『革命』などはいかがですか?」
「ショタシコビッチですか、素敵な旋律ですね」
緋影、お前はメロディーという単語を知らないんだろ? あとで体育館裏な。補修してやる。というか偉大な先人にショタは無いだろ、シコは無いだろ、ビッチは駄目だろ。それらをふくめて、あとで説教だ。
二人は庭へ出て、またもやカブにまたがる。
「さあ鏡花さん! 木星に向けて旅立ちますよ!」
「緋影さま、木星には何時に着くのでしょう!」
「ジュピターには何時に着くんですか!」
知るか、ンなこと。
「ちなみに鏡花さん、作者はスターターがあっても、キックでばかり始動しているんですよ!」
その緋影がキック一発。爆発した。
「あぁっ、緋影さま! 大丈夫ですのっ!」
とか言いつつ、出雲鏡花はスターターでエンジン始動。こっちも爆発した。
アフロかカーリーヘアか。二人の髪はモジャモジャになっていた。
「この格好にはやはり、この髪型ですわね」
「今回は落ちなくて済むと思ったのですが………」
次回予告
戦雲せまるヤワラギ帝国。その中にも不穏分子はいる。その一人を逮捕したことで、俺たちの仕事もにわかに忙しくなってゆく。
次回、「商売繁盛笹もって来い」は、もちろん嘘っぱちです。




