シュウマイ征伐
本日の朝食、早売りのシュウマイ!
場所、駅前大通りシュウマイ専門店、シュウマイ堂!
折り詰めシュウマイ、数は一〇箱!
「って、多すぎじゃね?」
「ふぉへひふぁんひふぇふぁ………」
「緋影、飲み込んでから喋りなさい」
ゴックンと、口の中のシュウマイを飲み込んで。
「それに関してはお兄さま、芙蓉たちもシュウマイを食べているからです」
なるほど、俺と緋影と出雲鏡花。それに芙蓉、輝夜、新顔の咲夜………。
「って、六人しかいないじゃん」
「輝夜は剣士です。他の娘よりも、よく食べなければなりません」
戦鬼護鬼でもメシを食うんかい。
つーか、天宮緋影の能力をフルで発揮するとなると、決して安上がりではないな。
………というか。
「いち、にぃ、さん………と。緋影、輝夜のシュウマイは三箱だけだぞ。残り二箱はどこ行った?」
「残りとは何のことですか、お兄さま?」
緋影は口のまわりに、シュウマイの皮をくっつけたままで答えた。
そして後ろに何かを隠した。
隠したものを出雲鏡花が受け取っている。
まだ未開封の、シュウマイの折り詰めだ。
手をつけたものがひとつ。
未開封がふたつ。
バケツリレーのように、出雲鏡花は咲夜に未開封を渡す。
咲夜は俺にシュウマイを渡してくれた。
その箱で、緋影の頭をポコリ。
「こら緋影、シュウマイをたくさん食べたいのはわかるが、それを輝夜のせいにしちゃダメだぞ?」
「あう! ごめんなさい、お兄さま」
「謝る必要なんて無いさ。緋影は育ち盛り、お腹が空くのは当たり前だ。そして、謝る相手は俺じゃないだろ?」
「ううう………」
緋影は輝夜の前に足を運ぶ。そして頭をペコリと下げた。
「ごめんなさい、輝夜。私はシュウマイ食べたさに、たくさん食べる後ろめたさをあなたに覆い被せてしまいました。本当にごめんなさいね、輝夜」
これには武人無骨の輝夜が狼狽えた。
右を見て左を見て、割りとあたふたを見せてくれている。
その輝夜の袖を、咲夜がツンツンと引っ張る。
「こういう時は、仕方ありませんな緋影さまは、って言いんさい」
輝夜はその通りに返事をした。
そして咲夜に手をとられ、緋影の頭をなでなで。
おかげで緋影の顔は、花が開いたように明るくなる。
「本当にごめんなさい、輝夜」
「かまいませぬ、緋影さま。むしろ大食の冠を私にかぶせていただいて、誉れと感じております」
輝夜は続けた。
鼻の穴をふくらませながら。
「いえ緋影さま! どこかで犠牲が必要な折りは、必ずやこの白銀! 白銀輝夜を御指名ください! この輝夜、腹を召す折の小刀は常に研いで御座る!」
「いえ、そんなもったいないことに、輝夜の命を散らす訳にはいきませんから」
「信じておられませんか緋影さま! ならばこの場で白銀輝夜、見事腹をかっさばいて………」
とても心地よい、乾いた音が響いた。
輝夜が倒れている。
肩で息をする咲夜もいた。
咲夜は怒鳴る。
「バカ言ってんじゃないわよ!」
「咲夜、お前は目録までしか授かってないが、今の一発は良い一発だったぞ」
とりあえず輝夜、足を痙攣させながら普通の返事するの、やめれや。
「はて? 緋影さまが何をされているやら、さっぱりですわ」
と、戦鬼護鬼を見ることのできない出雲鏡花。
「ごめんなさいね、鏡花。今日はこの娘たち、すごく活発だから。鏡花のこと、置いてきぼりにしちゃってます」
「かまいませんことよ、緋影さま。おおむねは察することができますので」
戦鬼護鬼が活発ということは、緋影の機嫌が良いということになる。
これは今日の祝詞行脚、成功するかもしれない。
「そのためには、緋影さまにお酒を飲ませないようにせんとね?」
咲夜が釘を刺してきた。
「ホントに、祝詞の成功はアンタにかかっとるんじゃけ、しっかりするんよ?」
ツンケンした娘かと思っていたが、緋影のことが心底心配なのだろう。すがるような眼差しで見上げてきた。
「俺も全力を尽くす」
とだけ答えておいた。




