月曜☆ちゃぶ台劇場
月曜☆ちゃぶ台劇場
たまには外食でもしようかと、街中をぶらついてみた。
異国情緒漂う、石畳とレンガ造りの街、ヨコハマ。
祝詞行脚エピソードではカタカナ表記を忘れて、うっかり漢字で仙台とか宇都宮とかやらかしてしまったが、この話では都市名はカタカナが正しい。
悪いのは作者だ。俺は悪くない。
さて外食だが、ここは人類の口にとっては永遠の友とされる、ラーメンを食してみたいと思う。
紅楽園と書かれた店に入る。
眼鏡でガニ股の若者が、「な~にか」とつぶやきながら、ラーメンライスに取り組んでいた。
俺もそいつでイクか。
店員がお冷やを持って来てくれた。
ラーメンライスを注文しようとしたが、グラスの下に一枚の紙切れが。
お仕事です
紙切れを掴んで立ち上がる。
店を出ようとしたとき若者から、「死ぬなよ」と声をかけられた。
身なりは決して良くない若者だったが、男というものを理解しているようだった。
帰宅。
居間でちゃぶ台を囲み、忍者が座っていた。芙蓉が座っていた。輝夜が座っていた。その他、戦鬼護鬼と思われる連中が、居間に集っていた。
ひとりの娘が立ち上がる。
「それでは只今より、アントニオ緋影選手、アントニオ鏡花選手の入場です!」
たしかこの娘、緋影とプリンを食べに行った、茶房の店主だったような気がするが。
俺に思考することを許さないように、エキサイティングな音楽が流れる。
居間では戦鬼護鬼たちが総立ち。ものすごい歓声が起こる。
やがて歓声はひとつにまとまり、満場に響き渡る「イノキ・コール」へと変わった。
襖が開く。
深紅のガウン、蒼い襟。
アゴを突き出した緋影と鏡花が、揉みくちゃにされながらちゃぶ台に立った。
「緋影さま、月曜☆ちゃぶ台劇場の時間ですわ!」
「今日は八月七日、お盆前のちゃぶ台劇場です!」
お盆前?
盆前?
イノキ・ボンバイエ?
イノキ・盆前か、なるほど。
「時に緋影さま、ボンバイエの意味を御存知でしたかしら?」
「いいえ、鏡花さん。ぼんばー・いぇい♪ としか思ってませんでした!」
「ちょっぴり正確に発音すると、ブンマイエ………アフリカの言葉らしいですわ」
「なにか曰く付きのようですね」
鏡花は解説をはじめる。
ベトナム戦争の徴兵を拒否したため、タイトルとライセンスを剥奪された拳闘の世界王者、モハメッド・アリがリングに復帰。当時の若きチャンピオン、ジョージ・フォアマンに挑戦。
「会場はザイール共和国の首都キンシャサ。地元のアリファンはチャレンジャー・アリを鼓舞するために、『アリ・ブンマイエ!』と声援を送ったそうですわ」
「それではそろそろ、その意味を!」
「目の前のそいつをブッ殺せ、つまりフォアマンなんかやっつけろ! ですわ」
「なるほどそのような意味が………と、鏡花さん! ボンバイエといえば、盆前です!」
「盆前といえば………ウニが美味しい時期ですわね」
「へびぃうぇいと! ちゃんぴおん・おぶ・ざ・わーーるど! もはめっど! ウーーニーー!」
緋影、偉大な故人に失礼だぞ?
「ウ! ニ! 盆前! ですわ!」
期せずして、会場に「ウニ・盆前コール」が沸き起こる。
「それではみなさん御唱和ください! いーーち………にーー………さーーん………あーーっ!」
ドボーーンという水音。
今日もまた床が開き、二人は落ちて行った。
………ちゃぶ台ごと。
そしてゴツンという鈍い音が聞こえてきた。
「あぁっ、緋影さま! 大丈夫ですの! 大丈夫でも大丈夫でなくとも、私がいま人工呼吸を施して………」
忍者が立ち上がった。
穴に向かって棒手裏剣を投げつける。
ピスッという気持ちのいい音が聞こえてきて、出雲鏡花の声も暴れる水音もしなくなった。
悪は滅んだ。
片や頭にたんこぶをこしらえ、水浮く屍となって。
片やおしりに棒手裏剣を突き立てた、水浮く屍となって。
オチはついた。
尊い犠牲である。
われわれはこの犠牲を無駄にせぬよう、平和を守り抜かなければならない。
「お兄さま、身体を張った妹としては、次回はナガサキ・名物紀行を希望します」
「緋影さま、次回は私も同行しようかと、たくらんでおりますわ」
乙女たちのナガサキ。
実現成るや否や?
次回予告!
さてさて今や全国的にその名が広まった、われわれチーム・こんとん。
祈祷祝福の依頼をこなすため、いよいよナガサキへ上陸。
しかし同行者はヤワラギ帝国に咲く、毒花の出雲鏡花。
祈祷行脚がまともに進行する訳が無い!
「あら貴方、私がどこの誰か御存知なくって?」
「その家紋………出雲一族の物! ………もしや、貴女はっ?」
「気付くのが少々、遅かったようですわね」
「えぇい、斬れっ斬れぇい! こうなれば出雲一族を根絶やしだっ!」
「ちょっ………あなた何をっ? 天下の出雲が怖くありませんのっ?」
「もう全てがおしまいじゃ! なにもかもおしまいじゃっ!」
その時、大地を揺るがし姿を現す、ジャイアント大介ロボ。
次回、「キューバン・ダイキリの似合う女、緋影です」に、絶対期待しないでください。
お願いします。




