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こんとん大戦  作者: 寿
13/68

緋影さまのお仕事


 大国、帝政オロシヤに対し我が国ヤワラギ帝国は、あまりにも小さな島国だ。

 その体力差を埋め、なおかつ逆転するために、陸海軍は千恵を絞った。

 そのうちのひとつが、天宮緋影だという。

 それは何故か? というのが前回までのあらすじ。


「まずは健治郎、戦争の勝敗を左右する力には、何が挙げられる?」

 中将は親父の顔に化けていた。

 まずは軍事力と、俺も生真面目な若者を装って答える。

「うむ、我が国はその差を、猛訓練で埋めようとしている。他には何がある?」

 経済力と答えた。金が無くては戦さにならないからだ。

「なるほど、しかし我が国は大ブルテン帝国と同盟を結び、軍資金を借り受けている。問題は無い」

 正しくは、借財を元手に工業を興し、現在黒字街道。軍資金を増やしながら、少しずつ借金を返している。

 他にはと、中将の問い。

「人的資源があります」

 これは経済力にも関係する。人が大勢いれば、それだけ金を生む。そして戦場に、人数を集めることも易しい。

 それに対しては、オロシヤ帝国に非協力的な人民を増加させている最中だと、中将は言った。いわゆる革命、反乱分子の蜂起により、オロシヤ帝国はその全力を発揮できない状態にある。

「その他にもさまざまな要素が戦争に関わってくるが、天宮緋影が担当するのは霊的要素だ」

「霊的要素?」

 なんじゃそりゃ? というのが本音だ。

 すると緋影は、膝をひとつ前に進めた。

「お兄さま、ヤワラギの国においては森羅万象さまざまな物に、神が宿ると申します。天宮一族………こと、天宮緋影を名乗る者は代々、この神に祈りを捧げることに秀でているのです」

 ふむふむ。しかしその加持祈祷の能力が、オロシヤ帝国との戦さに何の関係があるというのか?

「神さまも祈りを捧げられ敬われれば、やる気を出してくださいます。ではこのお祈りを、軍艦に捧げれば?」

「軍艦がやる気を出す………って中将、本気ですか?」

 戦争するのに神頼み?

 いや、そりゃあ必勝祈願くらいはするさ。

 だが海軍! 秘密施設までこしらえて、やることがお祈りって、それはどうよ? 俺でなくても疑問に思うぞ、普通。

「信用してないだろ、健治郎?」

「正気の沙汰とは思えません」

「じゃあ、インチキまじない師なんぞに、金の亡者出雲がスポンサーをすると思うか?」

「………………………………」

 そこは考え所だ。

 出雲財閥といえば、俺たちからすれば、THE守銭奴、プロフェッショナル・ケチ。出るものは舌すら出さないという、ガチガチの金銭崇拝者だ。

 そこから考えると、う~むである。

「もうひとつ言うならばだ、神頼みのひとつもしないことには、ヤワラギとオロシヤの差は埋まらないってことさ」

 それほどまでに、両国の差は大きい。

 それはわかる。

 だがしかし神頼み?

 他に力を入れる場所はなかったのか、海軍?

「この考えには頭の硬い陸軍も納得してくれてな」

 ブルータス、お前もかっ!

「それだけじゃないぞ。なんと、今世の天宮緋影は護鬼をまとっているんだ」

「いま気づいたけど、緋影の名前って本名じゃなくて、世襲した名前なんですね?」

「私の場合、本名になってしまいましたけどね」

 まあいい、それよりも護鬼とか言ってたな。なんだそりゃ?

「護鬼なんて言ったら、あの娘たちが図に乗りますので、使い魔とでも考えてくださいな」

 なるほど、そんなのがいるのか。それはなにかこう、期待してもいいような。

「で、この使い魔も、やっぱり緋影がやる気にならないと力を発揮しないってことでよ。お前はどうしても、緋影に気に入られなきゃならなかったのさ」

「俺が緋影に気に入られると、護鬼がやる気を出すのはわかりました。ですが緋影は、軍艦にお祈りするのが仕事なんですよね?」

 今この場で、護鬼の存在を説明される理由がわからん。

「それだけだと思ってんのか? 案外気楽な頭してんな」

「軍艦にお祈りする海軍よりはマシだと思います」

「さっきも言った通り、オロシヤ相手の大戦さ。我が国は総力挙げての戦いになる。お前と緋影にも、現場へ出向いてもらうぞ」

「なぬっ? 俺はいいとしても、なぬっ? 緋影まで戦場に?」

 それは、役に立つのか?

 当たり前の疑問が湧くが、中将も当たり前のように答える。

「緋影が役に立つかどうかは、護鬼のやる気にかかっている。そして緋影のやる気にかかっている。つまりお前次第ってことよ」

「ということで、これからもよろしくお願いします。お兄さま♪」

 いまの俺の心境を、端的に述べるならば………ohと、この一言に尽きる。

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