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第74話・処刑


「やあ姉さん、気分はどう?」


「……」


「ダンマリか。まあ別にいいけど。どっちにしても今日の24時には姉さんは死ぬんだし」


「妾が、妾が死ぬ訳がなかろう!」


「ははっ、涙目で言われても全然怖くないよ? 奇跡の女王も魔力が無ければただの弱っちい女の子ってことだね」


「妾を殺してもこの国はお前には御せぬわ! 民の心を解せぬ王になど誰が従う!?」


「……うるさいなぁ」


「あっぐっ!?」


「従わない奴はそれでもいいさ。殺すだけだ」


「ティル、待てっ……!」


「じゃあね、姉さん」




間。





見えてきた。あれが和国の首都「朱天」だ。広さはユリーディアの倍くらいで、何処かに反乱の元凶とクロメたちがいる。


さーて、どうやって探そうか。魔力残量は大体90%ってとこか。ジーさんからもらった情報でも、居場所までは特定出来なかった。良さそうな手段としては出来るだけ高位っぽい兵士をとっ捕まえて吐かせることかな。


地上付近まで降りた。街の正面には巨大な門があり、この時間でも賑わっている。

だが、何だか妙な賑わいだった。門の周りには沢山の人が集まっていて、所々で兵士らしき連中と揉めている。


「なあ、何があったんだ?」


近くで戸惑っているエルフの女性に声を掛けてみた。馬車での運送を生業にしているようだが、運転手はいない。


「主様が、兵士さんたちに事情を聞きに行ってしまって……」


女性の目線の先には、兵士と話し合うというより怒鳴り合う、女性と同じ服装をしたエルフの男性がいた。まさに一触即発、穏やかではなさそうだ。


「主さんは何で兵士たちと揉めてるんだ? 他の人たちもそうだが」


女性は辛そうに顔を顰め、俯いて話してくれた。


「クロメ様の弟君のティル様からの発表のせいです。今日の24時に、朱天大広場で公開処刑を行う、と」


「……処刑される奴ってのは?」


「クロメ様です。和国に対して重大な謀反行為をした、と」


なるほど、そういうことか。今は午後10時、時間的には間に合う。

けど妙だな。公開処刑にする必要なんてあるのか?

単純にこの国を奪いたいんなら、事故死にでも見せかけるのが普通だと思うんだが。公開処刑なんてやり方じゃあ弟がどうみても悪者になる。それに処刑するにしても今日の24時なんて、焦ってるようにしか思えない。


「まだ何か裏がありそうだな……」


「あの、貴方は何か知っているのですか……?」


女性は不安そうに尋ねてきた。恐らく門の周りで揉めている人たちも、クロメの処刑に反対しているのだろう。

まったく、あんなんでカリスマはあるんだから困ったもんだ。


「いや、何も」


「そうですか……」


この人には悪いが、こんなところで騒ぎを起こす訳にはいかない。見た感じ街の中への出入りも制限されてるみたいだし、さっさと潜入しよう。


「シャドー」


門の方向へ歩き出す。


「あ、あれ?」


後ろから女性の驚いたような声が聞こえる。色々と教えてくれて助かった。


人の隙間を縫って門を通り抜けようとする。さすがに、消えている訳ではないので人と接触すればそいつには気付かれる。だから人混みでは気を張らなければ。


「いい加減にしろっ!」


「ぐあっ!」


悲鳴が上がった。足は止めず後ろを見ると、武器を構えた兵士の1人とさっき言っていたエルフの男性が頭から血を流して蹲っていた。

あの兵士、たぶん説得出来ないからってイラついて手を出したんだろうな。まったく、兵士失格だぞそんなの。まあ俺には関係の無い話だが。


「くたばれ非国民が!」


兵士は武器を構え直した。今度は槍の石突ではなく穂を向けている。

マジかよあいつ。殺す気満々じゃんか。


「あ、主様ぁっ!」


兵士が武器を振ろうとした次の瞬間、さっきのエルフの女性が蹲る男性の前に立った。

おお、マジかよあの子。まさに身を呈して、だな。思わず見入っちまったし、助けてやるか。


「そこを退け!」


「退きません! 主様が何をしたというのですか!」


「我々の任務を妨害したのだ! 当然の報いだ!」


周りの視線もそこに集中し始めた。

注目されるのはあんまり良くないが、あれを放っとくのもなぁ……。あの子見た目に反して強情みたいだし。


「ニア、退け……!」


「い、嫌です主様!」


蹲っていたエルフの男がニアと呼ばれた女性を後ろへ押しやった。立ち上がり、キッと兵士を睨み付けている。


「死ね!」


兵士が武器を構え、男は目を閉じた。


「主様ああああっ!!」


次の瞬間、兵士の槍は男の目の前で止まった。

止まったっていうか俺が止めてるんだけどな。はあ、これで触っちまったから気付かれてるはずだ。


「なっ……何者だ貴様!」


「うるせぇよ。お前何やってんだ」


「黙れ! 貴様も邪魔するなら容赦は」


「だからうるせぇ。邪魔されたのはこっちだって同じなんだよ」


右手中指に少しだけ魔力をため、兵士の額の前へ。もちろんあれだ。


「ブースト・デコピン」


「ぐおああああああああっ!!」


兵士は派手な声を上げながら何処かへ吹っ飛んでいった。

あんだけバク転出来れば新体操で世界目指せるさ。うん。俺は逃げる。


「待っ、待て!」


兵士たちが人ごみを掻き分け迫って来る。このままでは捕まらないにしても見つかってしまう。


「こっちに!」


声の方向を見ると、ニアと呼ばれたエルフの女性が手を伸ばしていた。


「ッ!」


今は仕方がない。魔法を使うところを見られたら余計に目立っちまう。この2人なら大丈夫なはずだ。

手を引かれ、3人で人混みの中から脱出した。最初に女性と話した時にいた馬車の近くまで来ると、人の波からは抜けることが出来た。兵士たちは今もさっきの場所に集まっているし、バレてはいないようで良かった。


「悪いな、助かった」


後ろの2人に向き直り、軽く礼を告げた。


「それはこちらのセリフです。主様を助けていただき、本当に……」


「アンタは恩人だ。助かった」


2人は申し訳なさそうに頭を下げた。


「いいっていいってあれくらい。あんた、傷は大丈夫か?」


男の額から頬にかけて血が垂れている。頭の傷は浅いからと言って放っておくと案外出血量が多かったりするから危ないのだ。


「ああ、大丈夫だ。ニア、救急箱持って来てくれ」


「分かりました」


うーむ、この流れはあれだな。傷の手当してしばらく話してからじゃないと街の中に行けないパティーンだな。幾ら何でもそれを待つほどの余裕は無いから、さっさと済ませてもらおう。ニアちゃんは救急箱取りに行っちゃったけど。


「ちょっと傷を見せてもらっていいか?」


「あ、ああ」


「ん、やっぱり浅いな。ヒール」


この程度なら少量の魔力で治療出来る。早く出発したいからやむを得ぬ。


「おお……アンタ、一体何者だ?」


「ん~……まあ『死神』ってとこかな。じゃあまた会おう、お似合い夫婦さん」


「なっ、別にニアと俺はそんなんじゃ!」


「言うな言うな。分かってるから、告白はちゃんと男から、だぞ?」


「お、おう……」


男は顔を真っ赤にして俯いた。わかりやすい奴だ。


「ははは、お幸せにな」


「待ってくれ魔法使いさん。俺の名前はセルトだ。また会うことがあったら次はオレにも手伝わせてくれ」


「……」


ケイジは軽く笑って言った。


「機会があれば、な。シャドー」


やれやれ、お人好しなエルフ共だな。俺もさっさと行かないと。

今のイザコザで15分ほど時間を使ってしまった。思ったより余裕は少ない。無駄な動きは最小限に、クロメを見つけなければ。


そうして、再びケイジは闇の中へと姿を消していった。



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