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隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました  作者: 颯来 千亜紀
第8章・ムシキ〇グに俺はなる!
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第61話・ケイジ、キャラ崩壊をするの巻


買い物する時には、必要なものをリストアップするのが無駄遣いを抑える秘訣だ。俺はそう思う。


で、俺達は今から虫取りクエストに必要なものを買いに行く訳なんだが。

……虫取りって何が必要なんだ?


いや、今までは観察だけで捕まえようとしたことなんか無かったから分かんないんだよ。

テリシアも網とカゴ以外はよく分かってないみたいだし、教えてくれないか?


ふむふむ、まずは虫取り網に虫籠。

次に手袋?ケガや毒虫に触るのを防ぐため、か。なるほど。

懐中電灯。まあそうだな。

応急処置用品と虫除けスプレー。絆創膏とかでいいのか?虫除けスプレーはまあテリシアが要るって言うなら買うが。


そんなもんか。

意外と少ないんだな。

服装に関しては長ズボンにコート。いつもの格好でいいよな。ガルシュは「肌の露出は避けた方がいいぜ!」って言ってたし。

じゃ、ぼちぼち道具を集めますか。


そう思い、ケイジはメモを手にして歩き出そうとした。のだが。


「あれ?」


隣にいたはずのテリシアがいないことに気がつく。

何してるんだあの子は……。さっきまでは居たんだから遠くには行ってないんだろうが……。


「……いた」


グルッと辺りを見回すと、青果店の辺りで見慣れた金髪が目に入った。


「何やってるんだテリシア」


若干呆れたような顔で尋ねるケイジに、テリシアは満面の笑みで応える。


「バナナです! これをすり潰して、ハチミツと混ぜて木に塗っておくと凄く虫たちが集まるんですよ!」


……まあそれはそうかもしれないが。


「……捕まえに行くのは今日、だぞ?」


「あ……」


力が抜けたような顔をしたテリシアは、そのままケイジとバナナを見て言った。


「これは今日のオヤツです! ハチミツと混ぜてお皿に盛るとケージさんが集まって来るんです!」


「俺は虫か! つーか俺が集まるって何!? 俺複数人いるのかよ!」


誤魔化し方が怖いんだよ天然ちゃんが!


「ま、まあまあ! 次、次の物買いに行きましょう!」


「おう……」


「網とカゴは雑貨屋さんで買えますね。他には何が必要ですか?」


「手袋に懐中電灯、それと虫除けスプレーとかだな。買えそうな店はあるか?」


「えーと、手袋と懐中電灯は家にいくつかあるので大丈夫ですね。虫除けスプレーは……どこだろう?」


「その雑貨屋さんには無いのか?」


「えーと、ありますね」


あるんかい!!


「じゃあそこでいいんじゃないか?」


「ですね! 行きましょう!」


一応言っておくが、俺は虫は大の苦手だ。1話参照。けどまあ今回はそんなに難易度高そうな依頼じゃないし、魔法でパパッと捕まえれば大丈夫だろう。


そう思い、ケイジは雑貨屋に向けて歩き出した。後々死ぬほど後悔することになるとも知らず。




間。




「ふう、こんなもんか……って、テリシアさん?」


右手にカゴとスプレー缶、それとバナナが入った袋、左手に虫取り網2本を持ったケイジが言った。


「はい?」


「これは何ですか?」


「え、麦わら帽子ですが」


そう、今ケイジは典型的な麦わら帽子を被っている。雑貨屋さんでいつの間にかテリシアが購入した物である。長ズボンにコートで全身黒コーデの彼には信じられないくらい似合っていない。

まあ端的に言えばウルトラダサい。


「いや、麦わら帽子ですが、じゃなくて。なんで夜に行くのに帽子?」


「あ」


あ、じゃねぇだろうがああああ!

何だよ今日天然炸裂させすぎだろこの子!

さっきから街ゆくヤツらの視線が痛いんだよ!


「……オシャレですよ」


「へぇ~……だったら目を見て言ってみようか?」


ケイジは目を逸らすテリシアの顔を掴んで無理やり振り向かせる。


「に、似合って……ブフッ……ますよ……」


「笑ってんじゃねぇ!」


「あははははははははっ! だ、だってケージさん全身黒に麦わら帽子とかあはははっ!」


「うっせぇ! お前が選んだんだろうが!」


「あはははははははは!!」


「だから笑うんじゃねえええええええっ!!」




間。




時刻は午後8時。場所はユリーディアから見て南西の森林地帯の入口近くの小屋にて。


「お、来たか2人とも!」


「よっす、って何飲んでるんだよお前は」


「こんばんは~」


小屋の中では既にガルシュが酒瓶を片手に上機嫌になっていた。


「いやぁ、こんくらいの依頼だとちょっと酔ったくらいが丁度いいのさ。それにまだまだ頭も働くから大丈夫だぜ!」


「……ならいいが。俺達は準備出来てるぞ」


「ん、じゃあ行くか!」


軍手を嵌め網とカゴを持ち、ガルシュの後に続いて森に入るケイジ。

よ、夜の森って雰囲気あるよな。あはは……。


次の瞬間。


「ギャーッギャーッ!」


大きめの野鳥がケイジ達の近くの茂みから飛び出していった。


「うぎゃああああああああっ!!」


「け、ケージさん!?」


「ケージ!? どうした、落ち着け!」


「ぬおあああああああ! 背中になんか入ったア"ア"ア"ア"ア"ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


ちなみに、背中には何も入っていない。


「キイエエエエエエエエエ!! 毛虫キモイイイイイイ!!」


今のケイジの方が全然キモい。


「いやああああああああああ! なんか緑のデカイのがいるぅぅうあああああ!」


「おいそれオレだろーが!」




間。




30分後、森の入口にて。


「で、あれはどういう事だ? ケージ」


呆れた顔で言うガルシュと、半泣きで正座するケイジ。そしてそれを慰めるテリシア。


「……ほんとにすみません。俺マジで虫だけは無理なんです」


「え、じゃあ何で普通に引き受けてくれたんだ?」


「いやテリシアの前だったし、こんなに本格的な森だと思ってなかったから……」


「ま、まあ苦手な物は人それぞれですし……」


テリシアほんと優しい。

けど今はその優しさが辛い……。


「うーん、今回はケージは戦力にはならなそうだな……。仕方ない、オレとテリシアで頑張るか!」


「はい!」


「ほんとすいません……」


体勢を立て直し、3人は再び森の中へ。


……え?

虫嫌いとか男としてどうかって?

いや、だからそういう問題じゃなくて。マジであいつらだけは無理なんだって。

だって何考えてるかまったく読めないし、やたら俺ら人間にくっついてくるじゃんか。

逃げ回る動物を捕まえるとかならまだしも、飛び回ってくっついてくる虫とかほんとムリ。


「……」


「……ケ、ケージさん?」


「は、はい?」


「何でそんな引き腰で私に抱き着いてるんですか?」


「いや、なんかさっきので腰に力が入らなくって……」


我ながら本当に情けない。でも今回だけは仕方の無いことなのだ。

絵面も非常に情けないことになってるが。


「ふふっ、ふっ、じゃ、じゃあ行きましょうか……」


「笑わないで! 俺にとっては死活問題なの!」


「ブフッ! わ、笑ってませんよ……!」


「笑ってるじゃんか!」


「……楽しそうだな、2人とも」


「あははははははははっ! すみませんやっぱり我慢出来ないです! あはははっ!」


涙目で腹を抱えて笑うテリシアと、その場に蹲るケイジ。


「死にたい……ほんと死にたい……」


「と、とりあえず進もうぜ。エメラルドコガネがいるっつーポイントの1箇所目はすぐそこだからよ」


「捕まえたらソッコー瞬転移で帰ってやる……」


「私達置いていかないで下さいよ?」


「……うん」


「微妙に不安の残る返事ですね……」


相変わらずへっぴり腰のケイジを連れ、歩くこと数分。


「ここだ。ほらあそこ、いっぱい集まってるだろ」


目の前に現れた一際大きな木。その幹の上の方をガルシュが懐中電灯で照らすと、そこには沢山の虫が樹液を欲して集まっていた。


「と、鳥肌が……」


「ケージさん……よしよし」


ビビりまくりのケイジと、それを優しく慰めるテリシア。そんな2人を放ったらかし、ガルシュはその木の周りをグルッと探索した。


「……いないな」


「え?」


ガルシュの一言でケイジの顔が蒼白になっていく。ケイジも察しの通り、この依頼の目的はエメラルドコガネの捕獲。

つまり、捕まえるまで帰れま10!

間違えた、帰れません!


「よし、2箇所目に行くぞ」


「嫌やあああああああ! 絶対に嫌やあああああああ!」


「はいはい行きますよ~」


その場にしゃがみこみ喚き出すケイジ。テリシアとガルシュは構わず歩き出す。


「ちょ、1人にしないでくれぇぇぇ!」


そして一行は2箇所目のポイントに向かっていった。


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