第6話・質疑応答を始めます
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第6話更新しました‼︎
今回は会話、描写多目でお送りします‼︎
今の時間?
えーと、8時20分。
なんで外にいるかって?
いや、さっきテリシア帰って来たんだけどさ?
「すみません! 思ったよりギルドが混んでしまって
。えっと、部屋を片付けるのでもう少しだけ待ってください!」
あれから20年!
いやいや違う違う。
やっぱり女の子なんだねえ。
いや、見ず知らずの男簡単に上がらせるのは俺もどうかと思ったけどさ。
テリシアちゃんあの子、ほんとに天然っぽいけど大丈夫かなあ。
素直なのはいいことだけど、人を疑うってことも必要なことだからなあ。
え?結局今日はどうするつもりなのかって?
………いや、少なくともお前らが期待してるようなことはしない。
普通に聞きたいこと聞いて話したら帰るよ。
誰か人影が見えた?
ああ、あの茂みんとこ?
たぶん、じゃなくて間違いなくケルートだろうね。
うん、尻尾と服のきれっぱしが見えた。
つけられてたんだよ俺。
気づいてたなら何で何もせず来たのかって?
まあまあ、たぶんそうした方がお前らの好む方向に話が進むはず。
ま、うまくいけばいいな〜くらいの気持ちで見てな。
「お、お待たせしました。どうぞ」
ギルドにいた時とは違う、軽めの部屋着のような格好をしてテリシアが出て来た。
ようやく、だな。
さあ、いざ異世界女子のお城へ突入だ!
テリシアの後に続いて、部屋に入る。
おお、なんかいかにもそれっぽい。
説明不足だったか?
なんつーか西洋風でかつ女の子チックな可愛らしい部屋だ。
いかにもテリシアっぽい。
見たい?
ま、文字だけじゃ無理だな。
残念でした。
「そ、それで、お話とは何でしょうか………?」
イスに腰掛け、恥ずかしそうな顔で尋ねるテリシア。
あ、そうだった。
この子面倒な勘違いしてるんだった。
でもなあ、俺もテリシアもはっきりそういう系のこと言ったわけじゃないから誤解だ〜なんて言うのも変か。
とりあえず聞きたいことを聞かねば。
「んーと、たぶんかなり長くなるんだけどさ。まず、俺はこの世界の人間じゃないんだ」
「えと、この世界じゃない、って言うと、召喚士さんとかですか?」
え、召喚士ってされる側だっけ?
うん、逆だよねそれ。
「俺が、ってわけじゃないんだけどね。俺の考えだけど、たぶん俺がここに来たタイミングで召喚なり何かしらの出来事があったと思うんだ。この世界にも人間はいるんだよね?」
そう、俺が考えた仮説だ。
やはり俺は主人公ポジではない。
他になるべき奴がいて、そいつの召喚に何らかの形で、奇跡かバグかは分からないが、俺が巻き込まれた、と言うものだ。
情報が少なすぎて何とも言えないが、現時点ではこれが1番しっくりくる。
「はい、います。分類としてはヒューマンと呼ばれていて、私のようなのを除いて殆どが王都に住んでいます」
王都、か。
なるほど、それがこの辺りでヒューマンを見かけなかった理由か。
そう、結局街をぶらついてる時もテリシア以外のヒューマンとは会わなかったんだ。
それともう1つ。
ガルシュみたいなやつは少数派だって事。
ヒューマン以外の種族の中では、俺たちは疎まれる存在らしい。
その王都に住んでる連中は、何があったのかは知らんが他の種族を見下し、武力で支配してるとか。
そりゃあ俺にも冷たいわけだ。
それでもテリシアがギルドの人気者でいるのは、すごい事だと思う。
………何だその顔。
俺だって人を褒めるくらいはするぞ。
珍しいけど。
それくらい、種族とか人種における差別は厳しいものなんだ。
「それじゃ次。その王都って所なら、召喚士ってのもいるの?」
え?
ああ、戻る必要はないとは言ったけどさ。
俺がここに来た理屈とか原理は知っておいた方がいい気がするんだよ。
それに召喚士を手篭めにすれば後々便利なはず。
「ええ、あまり詳しい事は分かりませんが、王都にいらっしゃると聞いたことがあります」
なるほど………。
え?お前らも聞きたいことがあるって?
………彼氏いるか聞いて?
アホか。
自分で聞け。
いや、無理か。
諦めろ。
「なるほどね。じゃ、次。街で飛んでる絨毯とか箒とかみたけど、この世界には魔法が?」
いやあ、ありゃビックリした。
目の前を綺麗な絨毯がふわ〜って。
俺も乗ってみたい。
「はい、あります。ただ誰にでも使えるというわけではなく、適性のある一部の人にしか使えないそうです。ちなみに私も使えませんでした。えへへ」
そう言って頰を掻きながら恥ずかしそうに笑うテリシア。
なるほど、ってことは確率は低いだろうが俺にもチャンスくらいは………。
ってお前ら何騒いでんだよ‼︎
は?
テリシアたんかわゆすぎ?
やめろケルートじゃあるまいし。
とりあえず一番重要なことは聞けた。
んじゃ、次はその一つ下の質問。
「あ、あとさ、ギルドの依頼って俺でも受けられるの?」
そう!
仕事!
work!
あそこに集まってた依頼が俺でも受けられるんなら仕事の問題は解決!
「はい、受けられますよ。ただ、最初から危険度の高い依頼などは受けられないので、そこはご理解お願いします」
ま、そりゃそうか。
俺らの業界より全然親切だ。
何でかって?
俺らの場合、依頼を引き受けた時点でそっからは自己責任だからな。
やっぱり大したことないやつのところにでかい仕事が行ったりはしないが、原則的に縛りとかも無いし。
さて、とりあえずはこんなもんか。
天然っぽいけど、さすがはギルドの受付嬢。
欲しい情報は的確に答えてくれた。
って、どっから持って来たんだよそのカンペ。
「もっと引き伸ばして」ってお前ら………。
いいだろ、とりあえず俺がいなくならないと今日の物語は進まないんだから。
さあ?どういう意味だろうな。
もう少しすれば分かる。
「だいたいこんなもんか。ありがとう、すごく参考になった」
「いえ、お役に立てたのなら何よりです。あ、そうだ、まだお名前を伺ってませんでした」
「ん、そうだっけ。俺はケイジ。佐霧圭二。これからよろしくな、テリシア」
「はい、よろしくお願いします、ケージさん」
え?
いい雰囲気じゃないかって?
いや、普通に喋ってるだけやん。
ってそれよりいい加減そろそろ出ないと。
「じゃ、俺はこの辺で。ありがとね」
「はい、また何かあったらお声かけください。私はギルドにいますので」
軽く手を振って家を出た。
いやお前らは振らなくていいだろ。
え?さっきの言葉の意味?
………そろそろいいか。
ほらあれ見てみろよ。
そう、あのテリシアの家に潜り込もうとしてる犬っころ。
あれケルートだろ。
ケイジの指差す先には、テリシアの家の2階の窓のところでもがいている、狼男のようなものが見えた。
おー怖。
何やらかすつもりだろうな〜。
え?助けないのかって?
やだよなんでそんな面倒な………。
って、あーーーーーー‼︎‼︎
やべーーーーーー‼︎‼︎
テリシアの家にスマホ忘れた!
こっちじゃ使えないけど!
戻らなきゃ!
………なんだよその顔、なんか文句でもあるのか?
まあいいや。
さっさと行くぞ。
わるーいオオカミには躾をしなきゃあな。
不敵な笑みを浮かべ、ケイジは来た道を引き返して走っていった。