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第51話・まさかの再登場


時刻は午前10時半。

本来ならノーム湿原に向けて出発しているはずの時間である。にも関わらず、村の出口にいるのはケイジ、ガルシュ、そしてサーチェを含む何人かの村人のみ。

あのバカップルが来ていないのである。


「あいつら……」


「ど、どうするケージ? 呼びに行くか?」


ため息をつくケイジに、ガルシュが提案した。

そうするべきなんだろうが、もし未だに夜戦中だったらどうするんだ……。


「まあ、そうするしかないか……」


このままサーチェさん達まで待たせるのも悪い、と思った矢先。


「悪い、遅れた」


「あー、ギリギリセーフ!」


特に悪びれる様子もなくバカップルがやって来た。

が、珍しく歪むケイジの顔を見て2人とも凍りついた。


「全然セーフじゃねえよ……他に言い残すことは?」


「俺とメルは同じ墓に痛ってぇ!」


この期に及んでまだ惚気を言う口をゲンコツで黙らせる。


「あわわわ、ケージさんごめんなさい許してくださいこの前食べたシュークリームはちゃんと買うから!」


「お前か食ったのは!」


「痛い!」


思わぬカミングアウトまでしたメルの頭に、同じようにゲンコツを落とす。


「やれやれ、さっさと行くぞ。もう30分も過ぎてるんだ」


「ケージさん」


やれやれといった顔で出発しようとしたケイジの手を、サーチェが握りしめて言った。


「気を付けて」


するとケイジは穏やかな笑みを浮かべ、サーチェの頭を撫でながら言った。


「任せてください。絶対にこの村は助けますから」


「ケージ、お前ほんとタラシだよな」


「もう1発ゲンコツ喰らいたいのか?」


「やめてくれ頭が割れる」


「それじゃ、行ってきます」


そう言って、予定時間よりはだいぶ遅くなりながらも4人は村を発った。




間。




4人はノーム湿原の手前の、ジェムドラゴンの行動範囲内の荒野まで来ていた。


「難しいな、やっぱり……」


そう呟いたのはケイジ。

やっぱガルシュがアタリをつけた3箇所の中じゃここが一番戦いやすい。でも、こんな所で戦ったら殺気立ったドラゴンが村まで襲う危険が大きすぎる。クソ、何か手はないのか……。


「……ガルシュ、本当にこの荒野はドラゴンの行動範囲なのか?」


訝しげな顔で尋ねるのはジーク。


「ああ、そのはずだ。なんでだ?」


「本当にドラゴンがこの辺りでも活動してるんなら、こうも痕跡が残らないもんか? 普通なら、足跡くらいは残るんじゃないか?」


ジークにそう言われ、3人も周りをしっかり見渡してみる。


「確かに、何にも無いね……でも、それってどういうことになるの?」


「いや、そこまでは分からない」


疑問と不安が入り混じり、足取りも重くなる4人。まずは荒野を抜け、2箇所目の川沿いの湿地帯まで来た。


「……今はいないな」


辺り一帯の様子を伺いながら、ガルシュが言った。

ケイジ達も腰ぐらいまである草むらに隠れながら、周囲を警戒する。


「うん。でもあれって……」


「ま、さすがにここには現れるってことだろ」


メルが指差す先には、大きな足跡と薙ぎ倒された木があった。


「やっぱりこの湿原にいるのは確かみたいだな」


と、ジーク。


「どうも気になるんだよな……」


と、ケイジ。


「何がだ?」


ガルシュが尋ねる。


「サーチェさん達は村の畑がジェムドラゴンに荒らされてるって言ってた。見せてもらったが、かなり食い荒らされてたんだ。」


「いつそんなことしてたんだ?」


「お前らが宿で夜戦してる時だよ」


「それについてはノーコメで」


「で、あの場所までドラゴンが来るんなら、さっき通った荒野に多少なり痕跡があってもいいはずなんだ。ていうかむしろ全く痕跡が残ってないとかおかしい」


「何かしら事情がある、ってこと?」


「何か、までは分からないけどな。だから、くれぐれも注意を怠らないようにってことだ」


明言出来ない違和感を感じながらも、4人は最後のポイントである洞窟に向かった。




間。




「ーーー! ーーー? ーーー!!」


「ーー!! ーーー?」


洞窟内に慌てているような怒っているような声が響く。

洞窟に入ったケイジたち4人は、奥から聞こえる何者かの声に警戒し、入口付近から中の様子を伺っていた。


「なんだ、オレ達より先に来たヤツらがいるのか?」


小さな声で話すガルシュ。


「3人、か?」


「3人だな。ケージ、どうする?」


「とりあえず、奥まで進んでみよう。ドラゴンもそうだが、なるべく早く目視で確認したい。警戒は怠らずにな」


「りょーかい!」


ケイジとジークは完全に足音を消し、ガルシュとメルも出来るだけ音を立てずに、こっそりと洞窟内を進んでいく。洞窟内は少しヒンヤリとしていて、一本道の単純な構造になっていた。


「なあ、ガルシュ」


進んでいる中、ケイジが小声でガルシュに尋ねた。


「どうした?」


「この洞窟は、なんで戦闘場所に向かないんだ?」


「ここら一帯は湿地帯ってこともあって、地盤が丈夫じゃないんだ。だから、もしこの中でドラゴンが暴れればまとめて生き埋めにされる可能性がある」


「なるほどな……で、この先にいる奴らはそれを知らずにここで戦おうとしてる、と」


「何か策があるのかもしれないけどな。どっちにしろ、オレ達も早く行かないと」


「だな。ただまあ、くれぐれも焦らずにな」


そこからしばらく進んでいると。


「クソッ、何なんだコイツ! 何で死なねぇんだ!」


「ボス、もう限界です! 鎖が切れますよ!」


4人は奥にいる奴らの声がはっきりと聞こえる距離まで来ていた。


「……なあ、ケージ」


「言うな。分かってるから」


2人は苦笑いを隠せずにいた。


何でかって?

いや、この声の主がお前らもよく知ってるあいつだからだよ。


「何であいつがこんな所に?」


4人の視線の先には、大きな鎖に捕らわれ抵抗するジェムドラゴンと、それをどうにか押さえつけようとするレオルとその部下2人がいた。


「さあ、この前の失敗で国王を辞任させられたんじゃないか?」


「あいつ、あの壁を突き破って飛んできたライオン野郎じゃねぇか」


「そうそう、そいつ」


「つ、強いの?」


「「いや、全然」」


至って真面目な顔でキッパリとそう言うケイジとジークに、思わず笑ってしまうメル。


「で、どうする?」


「まあ利用できるもんは利用するとして」


スクッと立ち上がるケイジ。


「あのアホ共には退場してもらおう。行くぞジーク」


「オーケー。今回はどのようなメニューで?」


「ん~、またタバスコ爆弾を……」


「いや、それじゃ火力不足だ。ス○ーク、これを使え」


「おおう、デスソースかよ。鬼だなお前も。ってス〇ークって誰だ?」


説明しよう!

デスソースってどんなもの?

デスソース(Death Sauce)は、アメリカ合衆国ニュージャージー州ハイランズ(ニューヨーク・スタテン島の南)に本社を置くガードナー・リソーシーズ社が「ブレア」のブランドで発売しているホットソースのシリーズである。

その辛さたるや、1番辛くない種類でもタバスコソースの倍以上、最も辛い種類に至っては234倍の辛さなのである!まさに外道!

そして周知の読者もいるかもしれないが、なんと名前の由来は、このソースが原因で心臓発作による死者が出たことによるという。ちなみに颯来が知り合いに頼んで1滴舐めた時は、もうなんというか辛さなんてチャチなもんじゃ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。舌がバラバラになるかと思うほど痛かったです。ほんとにイタズラとかには推奨できません。


「で、種類は?」


「もちろんウルトラだ」


そう言って、ジークは血のような濃い赤の液体がたっぷり入った水風船を取り出した。


「……死ぬんじゃないか? あいつ」


「まあ口に入れる訳じゃないし、死にはしないだろ」


ケイジですらビビるウルトラデスソース。

マジやばくね。


そんなこんなで、ケイジとジークはレオル達のよく分からない企みを食い止め、目的を達成する為にドラゴンの元へと向かうのであった。

え?役者が足りてないんじゃないかって?

やだなぁそんな分けないじゃないですか決して新キャラの名前考えるの面倒だから使いまわしてるとかじゃないですって!

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