第4話・テリシアさんご指名入りましたァ!
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第4話です!
テリシアちゃんは金髪ロングで、見ての通り天然系女子です!
よろしくお願いします!
さて、ここで皆に質問。
ナンパの定義って何だと思う?
俺の意見としては、最終的にベッドインを目的とした下心のある声掛けだと思うんだよ。
だから、情報収集やらはナンパには含まれない。
「テリシアは忙しいんだよ! 他を当たれ!」
カウンターの周囲に獣人の声が響く。
今何してるかって?
うん、テリシア目当てのナンパ野郎扱いされてるよ。
めっちゃゴツイ獣人さんに。
なんだこれ、たぶんキツネかオオカミあたりかな。
やれやれ、ケモミミの種族なら可愛い女の子と絡みたかったな。
とりあえず、このうるさいケモノちゃんは放っておいて、テリシアと話さないと。
………俺まだ一言も話しかけてないのに。
うん。近づいて話したいって言ったらナンパ野郎扱いされた。
………そりゃ俺だって殺し屋やってるけどさ?
多少の事じゃカッとなったりしない訳よ?
でもさ、これは流石にさ?
キレてもよくない?
まあキレないけど。
面倒臭いし。
「ちょっとケルートさん! やめてください! 私に用がある人なんでしょう?」
すると、テリシアがワンちゃんを制止するように間に入って来た。
おお〜。
ヒロインっぽい。
さすが人気者のヒューマンちゃん。
とりあえず話しかけようか。
「始めまして。え〜と、どこから話そうかな。とりあえず、君はこの世界の人?」
話しかけてみたものの、話したい事が多すぎて上手くまとまらない。
「え? は、はい、たぶんそうですが………」
ああ、明らかに困っちゃってる………。
やべぇなぁ………。
そうだな、とりあえずここじゃ話し切れないだろうし、どっか話せる所で話したいって予約を………。
おいこら。
ちょっと待て。
危ねぇ、乗せられるところだった。
こんな所でそんな誘いしたら、それこそワンちゃん達に何されるか分かんねぇだろ。
別にやり合って負けるとは思わないが、こんな所で騒ぎ起こしたりしたら、それこそゴブリンと2人っきりの異世界生活に成りかねない。
そんな生き地獄、死んでもゴメンだ。
マジで。
さーて、どうするか………。
え?とりあえずちょっとだけ離れた場所で、手早く約束だけしてくればいい?
へえ、珍しく的確な助言してくれるんだな。
………なぁんか含みのある顔してるが、まあいい。
「ええと、ちょっと来てくれる?」
テリシアを手招きして、カウンターから出て来てもらい、角で小声で話す。
さーて、これで少しはまともに話せる………って何お前らニヤニヤしてんだよ!
「悪いんだけど、ここで話すには長すぎるのと、俺にとって誰にでも話せるような内容じゃないんだ。だから、なるべく早く、2人で話したいんだけど、いつなら大丈夫?」
とりあえずこんなもんか。
やっぱり、普通の人間相手なら話せるな。
だから言ったろ?
さっきはあの阿呆ゴブリンだったから異種族に対するコミュ障が発動しただけなんだよ。
「えっ!? ふ、2人きりで、ですか!? え、えーと、その……」
ところが、ケイジの予想とは裏腹に、テリシアはおかしな反応をする。
……ん?
な、何でこの子はこんな顔赤くして照れてるのかな?
もしかして、何か面倒な勘違いしてる?
だからニヤニヤすんなって!
と、とりあえず誤解を解かないと!
「あ、あの、テリシアさん? たぶんテリシアが思ってるのはちょいと俺が話したい内容とは別の何かだと思うんだけど……」
マジでヤバイ。
このままこんな顔であのワンちゃん達の中に戻られたら、トラブルは必須!
え?誤解を解く必要はない?
どういう事だ?
………は?
最初に言った通り、境遇を話して同情してもらって、そのままイチャラブ作戦?
その辺にしとけ。
それマジでシャレにならんやつだから。
それに、それじゃ当初の目的見失っちまうだろ?
………大丈夫?
聞きたいことを全部聞いてから?
ちょっと落ち込んだ顔して?
俺を支えてくれないか、って言ってみる?
………あのさ、お前らのその恋愛観はどっから来てるんだよ。
いいか。
告白なんてアホなことはしない。
まずは衣食住を全部揃えて、この世界に適応する事だ。
恋愛も含めてその他のことは後だ。
「あの、その、そういうのは嬉しいんですけど、やっぱりしばらく過ごしてから………」
顔を赤く染め、俯いて話すテリシア。
俺の話聞いてないなこの子。
見た目通りっちゃ通りだけど、結構ポワポワしてる子だな…………。
「とりあえず聞いてくれ。俺が話したいのは、テリシアが想像してるようなやつじゃなくて、もっと重要な、俺の命に関わってくる話なんだ」
ちょっとシリアスにキメて、何とか現実に引き戻す。
け、結構面倒な子だな。
え?
もっと重要な話って言うと更なる誤解を生みかねない?
いや、………まさかな。
「わ、分かりました。あ、あの、これ、私の住所です。今日、たぶん8時くらいになればいますので、き、来て、来てくだしゃい………」
住所が殴り書きされたメモを手渡し、テリシアは顔を真っ赤にふらふらしながらカウンターに戻っていった。
………あぁ〜〜!!!
やっちまった!!
ケイジ、痛恨のミス!
完全に更なる誤解を生んじまった!
ああ、面倒臭い………。
え?
もう流れで告るしかない?
ふ・ざ・け・ん・な。
お前らも大概人の話聞かないよな。
いい機会だし、1つ言っといてやる。
俺は、誰も愛さない。愛しちゃいけないんだよ。
………どういう意味かって?
さあな、どういう意味だろうな。
あ、もう1つ言っといてやろう。
人間誰しも、謎の1つや2つある方が魅力的に見えるんだよ。
その後、メモを持ってしばらく街をブラついて時間を潰した。
その最中、例の如く注目され、いろんな奴に話しかけられたのはまた別のお話。