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温泉っていいよね その3

「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」

番外編パート2、温泉編です!

美人の姉がほしぃ……。

よろしくお願いします!


「ふう……」


広い風呂に穏やかな景色、そして楽しそうな仲間達の声。ここにある全てがケイジの心を安心させていた。


あ~、なんかあれだな、今んとこすげー順調だよな……。


何がって?

いや、俺の異世界生活だよ。やっぱり完全にブラックとしての俺と決別するなんてことは無理なんだろうが、それでも今は幸せなんだ。毎日が本当に楽しい。


「よう、隣空いてるよな」


声をかけてきたのはジークだった。ちなみにテリシアは今、メル達と共に室内のシャワーで体を洗ったりしている。


「おう、来い来い」


「よ、っと。ああ、いいなぁこれ……」


ジークも同じように温泉を堪能しているようだった。

俺も人のことはあまり言えないだろうが、ジークはこっちに来てからだいぶ明るくなった。今だってずいぶん緩んだ顔してる。やっぱり、メル達のおかげなんだろうな。


「そういえば、メルとはどうなんだ?」


こいつには収穫祭でとんでもないことカミングアウトされたからな……。色々と隠してそうで怖い。


「どうって、藪から棒だな。別にいつも通りだぞ?」


「いつも通りねぇ……。向こうにいた時だったら考えられないだろうに」


「おいおい、それはケージだって同じだろ」


「はは、まあそうだな。で、何があったかは聞いて良いのか?」


「ああ、まあ隠すようなことでもないからな」


いや付き合ってること隠してたくせに何言ってるんだこいつ……。


「俺がメルに無理矢理家まで連れてかれた日、あっただろ?」


「ああ、メルがうちに住め~って言った日か」


「あの日の夜に色々話したんだ。俺のこと、メルのこと、ミルさんのこと、この世界のこと、あとお前とテリシアのこととかも」


「えっ、あいつなんて言ってたんだ?」


「お前らのことか? 確か天然バカップルって言ってたのは覚えてるが」


あの野郎……。天然はともかくバカップルは言い過ぎだろ……。そもそもまだ付き合ってないってのに。


「そうそう、それでまず物心つく前に親が死んだことを話したんだ。そうしたらメル達のご両親も魔獣に殺されたってのを教えてもらってな」


「ふむふむ」


なるほどな。だからこそ、あの2人は同じ苦しみを負ったテリシアを大切にしてくれたんだな……。

クソ、なんだよみんな辛い経験しすぎだろ……。もっと幸せに生きてくれよ、俺の人生を彩ってくれてるんだからよ……。


「で、その後ガキん時に姉さんが殺された話もしたんだ。まあそん時はもう物心ついてたから、状況とかもしっかり説明したんだがな。何故かミルさんも廊下で話聞いてたみたいで、話終わった途端に泣きながら部屋に突っ込んで来たんだよ」


「ふはっ、突っ込んで来たって、物理的にか?」


「ああ、そうだ。勢いでドア外れかけてた」


あの人も本当に単純だよなぁ。まあその単純さに救われたからなんとも言えないんだが。


「確か、ミルさんが泣きながら『私をお姉ちゃんだと思って頼って良いからね』とか何とか言ってて、メルに至っては何言ってるかさっぱり分からなかった」


「ははは、すげえ状況だなそれ」


似た者同士の兄弟だな。めっちゃ仲良しだし。俺には分からない感情なんだろうな……。


お前らはどうなんだ?兄弟姉妹って、いるとやっぱり楽しいもんなのか?


「まあ側から見ればそうかもしれないけどな。でも俺は、なんていうか、俺のためにここまで泣いてくれる人がいるってことが嬉しくてな……。メルなんてそのまま夜も『一緒にいてあげる』って言ってずっと隣にいてくれたし」


「で、その流れで惚れたと」


「ま、まあそうなるな……」


なんだこいつこの図体で顔赤くしやがって乙女か。野郎の照れ顔なんざいらねえんだよ美女持ってこい美女を。

って言いたいところだが、まあ嬉しくもあるんだよなぁ……。

唯一の同じ向こう出身者で、しかも気の合う元同業者。そんな奴が、大切な人を見つけられたって言うんだ。そりゃあ嬉しくもなるよなぁ……。


「ま、あれだ。1度幸せになってんならずっとそのままでいろよ。キツくなったら助けてやるから」


「ケージ……。大丈夫だ、お前が振られても俺はお前の味方だからな」


「うるせえ余計なお世話だ!! ってか俺今いいこと言ったよな!?」


いきなり何言い出すんだよこいつ!?

だってテリシアは俺のこと好きだって、待っててくれるって……。いやでも、このままずっとずるずるやってたらそのうち……。

あああああああああああああああダメだ!!

絶対にダメだそんなことは!!


「……ふ、ははは。ケージ、おい、からかって悪かった。一旦落ち着け」


「おまっ、お前落ち着いてられるか!? もしこうしてる間にテリシアが……」


「何だ寝取られでも想像してるのか」


「やめろバカ野郎この小説は全年齢対象なんだよそういう単語出すと引っかかるだろうが」


「やれやれ、本当にお前はテリシアが大好きなんだな」


真顔で言われ、流石に恥ずかしくなるケイジ。

当たり前だ、俺まだDTなんだから。


「まあ、好きだけどよ……」


「信じろ。絶対大丈夫だ。お前らが好き合ってるのなんて誰が見ても分かる」


「え、マジで?」


そ、そんなにあからさまになってたか?


なってる?

マジか。


「マジだ。だから焦らずにしっかり考えろ。自分が納得する答えを出してから、ちゃんとテリシアに伝えればいい。むしろお前、焦って自分が納得してないのに付き合ったりなんて出来るか?」


「無理だ……。出来たとしても、絶対に続かない。俺が俺を信じられない……」


深刻そうな顔をするケイジを見て、やれやれと言った顔でジークは続ける。


「だろうな。だから、ゆっくりでいいんだよ。それこそ、キツい時は助けてやるから」


「……んだよ、俺がカッコつけるつもりだったのに……」


「はは、悪い悪い」


焦らず、ゆっくりでいい。信じてくれている。

そう言われただけで、本当に体と心が軽くなった気がした。


その後、しばらく2人で喋って、テリシア達を加えて温泉を楽しむケイジ達なのであった。

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