第3話・ゴブリンのガルシュ
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第3話です!
ガルシュ君はネタ要員です、はい。
よろしくお願いします!
デカい。
何がって?
この目の前にある建物さ。
さっきから沢山の人たちが出入りしていて、中からは美味そうな食べ物の匂いや、賑やかな話し声が聞こえてくる。
とりあえず入ってみう。
と、目の前の巨大な建物に入ろうとした時、ケイジの目にあるものが入った。
ちょっと待て。
建物のすぐ側の看板に、「ギルド フェアリー・ガーデン」って書いてあるんだけど。
うん、日本語(?)で。
え、なんで日本語?
主人公補正?
いや、俺主人公じゃなくね?
ああ、俺とは別の主人公も日本人って事?
なるほど。
……煮え切らないがいいとしよう。
恐る恐る大きな扉をくぐる。
「へえ、なんかベガスみたいな所だな」
思わず呟いてしまった。
ギルド、というらしき建物の中は、何度か仕事で行ったことのあるラスベガスの街のような賑わいを見せていた。
向こうの世界にもあったようなギャンブルをしている者。
酒や食い物片手に話を弾ませている者。
向こうの世界ではなかなか見ない、楽しそうな場所だった。
その時、隣に通りかかったある者がケイジに話しかけた。
「ん? なんだ、ヒューマンかお前。珍しいな」
え、なんか緑色のヤツに話しかけられたんだけど。
って顔怖っ!
なんだコイツ!
あ、もしかしてゴブリン!?
あ、ああ、そうだな。
とりあえず会話せねば。
「ああ。たぶんヒューマンで合ってる。はじめまして」
まさかのコミュ障発動!
殺し屋に有るまじき行動である!
いやいや、普通の人間相手なら余裕だって!
でも流石に見知らぬ土地でこんなマンガみたいな濃ゆいキャラ相手にフレンドリーは難易度高い!
「なんかお前、見た事ねぇ服着てるな。どっから来たんだ?」
ケイジの脳内議論など知る由もなく、濃ゆいゴブリンは続ける。
しつこいんだがこのゴブリン!
珍しいんなら少しは自重しろよ!
てか俺、どこから来たって言えばいいんだ?
本当の事言っていきなりおかしい奴扱いは、今後の生活に影響するから回避しないと!
「ええと、夢の国? かな? あはは……」
流れる静寂。
なんだその回答はーーー!!
俺ーーーー!
ああ、ダメだ、こんな返事ウケるわけ………。
「ギャハハハハハハ! オメェおもしれぇな!」
………ウケた。
あんなつまらない返しで。
うん、平和っていいね。
「よし気に入った!俺の名前はガルシュってんだ!分かんねぇ事あったら聞きな!」
そう言って、胸を張って快活に笑うゴブリン。
圭二は ゴブリンの仲間を 手に入れた!
いや、やめようぜホント………?
最初の仲間がゴブリンって何よ?
普通、そんなにステ高くないにしても3人くらいから選べるだろ?
え?
主人公補正かかってないから無理?
そうだった………。
まあ、そんなに関わらなきゃいい話か………。
向こうの世界でもそうだったし。
「あ、じゃあ1つ聞いてもいい?」
とりあえず最初の仲間がゴブリンってのはどうしようもないから置いといて、利用出来るだけ利用しなければ。
「おう、なんだ?何でも聞きな!」
「ここら辺で1番物知りな人って誰?」
これだけ人が集まる場所だ。
コイツ(ガルシュ)がハズレだっただけで、役に立つ人もいるはず。
「ああ、それだったら俺じゃなくあそこにいるテリシアに聞いた方がいいな。」
そう言ってガルシュはそこそこ人が集まっているカウンターを指差した。
お前は答えないんかい!
ケイジ、魂のツッコミ!
「えっと、あの受付にいる子のこと?」
ガルシュが指差した先にいたのは、受付でゴツイ男達と話す、人間らしき女の子だった。
「ああ。あの子もヒューマンの1人だが、見ての通り俺らみたいな下層種族にも優しくしてくれるいいヤツだ。ちょっかい掛けたらオメェ、ここの連中にぶっ殺されっぞ?ギャハハハハハハ!」
うるせえなこのゴブリン!
でもまあ、確かにあの子なら色々聴けるかもしれないな。
「分かった。色々ありがとう、ガルシュ」
作り笑いで返す。
さっさと消えろこの浅笑いゴブリン!
「おう、いいってことよ!あ、そう言えばまだお前の名前聞いてなかったな。なんてんだ?」
名前、か。
どうなんだろう。
向こうの世界では本当の名前を明かす事はほぼ無かった。
え?
みんなにはいきなり言っただろって?
ははは、そりゃそうさ。
別に知ったところで何も出来ないだろ?
悪かったって!
こっちでは本当の名前で生活しろって?
へえ、そりゃまた何で?
もし俺が主人公だった場合、偽名じゃ示しがつかない?
いや、そもそも俺が主人公だっていう可能性あるのか………?
………ま、偶にはそういうのも悪くないか。
折角の異世界だしな。
「ケイジ。佐霧圭二だ。改めてよろしく」
チクショウ、ひっさびさに本名を明かす相手がゴブリンって!ゴブリンって!
「そうか!よろしくな、ケイジ!じゃ、またな!」
そう言って、ガルシュは去っていった。
な、なんかすっげえ疲れた。
ドイツの富豪の相手より全然疲れたんだが。
まあ、とりあえず知り合いが出来てよかったか。
何?さっさとテリシアちゃんの所に行けって?
お前らは何を期待してんだよ!
は?同じヒューマン同士ってことで?
俺のドンマイ過ぎる境遇を話して?
そのままラブラブコース?
ア・ホ・か!
あのバカ(ガルシュ)も言ってただろうが!
あんな可愛い子にいきなりちょっかいかけたらそれこそ干されるわ!
あ?
可愛いとは思うんだな、って?
そりゃお前、俺はロリコンでもBBA専でも無いからな。
そのくらい思う。
俺が違うのはその先だ。
そう、その先。
関わりを持つか否か。
それこそさっき言ってたように、可愛けりゃ何とかして関わりを持とうとするだろ?
でも、俺はしない。
何でかって?
さあ、何でだろうな。
気が向いたら教えてやるよ。
え?キャラと口調がブレブレ?
殺し屋が幾つもの顔を持ってるのは当たり前だろう?
さ、まずはテリシアの所に行こうか。
足取りは軽く、ケイジはテリシアの元に歩いて行った。