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第36話・ギルドマスター・レニカ

「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」

第36話です。

36話目にしてようやく出て来たマスターさん。

よろしくお願いします‼︎


「っと、これで良しっと。ガルシュ、キツいかもしれないけど見張り頼む」


気絶した男を救護所の近くの柱に縛り付けた。

そして右手に魔力を集中させる。

この世界の魔法はイメージが重要。

男の頭に手を乗せ、魔力を少しだけ変化させて流す感覚で。

発動させた魔法のイメージは『魔法を発動できない状態にする』というものだ。

すると、男の首回りに黒い文字のようなものが浮かび上がった。

文字は全く解読出来ないが、おそらく成功しただろう。


「ああ、分かった」


やれやれ、まだ終わってないんだよなぁ……。


うんざりした表情でまだ続く戦闘を見るケージ。

どうやらこの軍を指揮しているのはローブの男ではなく馬上の男だったようだ。ローブの男が大きな戦力だった事には変わりないが、まだ敵軍は退却しない。


「はあ、さっさと終わらせないとな……」


再び戦禍の中に戻ろうとするケイジを、テリシアが引き留めた。


「あの、ケージさん、さっきはありがとうございました。ま、また行くんですか?」


不安そうな顔で服の裾を引く。


「……俺なら、俺たちなら大丈夫。だろ?」


「うぅ……でも……」


「心配するなって。それに、仲間を放っては置けない。助けに行かないと」


「っ、わ、分かりました」


裾を離し、今度はケイジの手を取ってテリシアが言った。


「どうか、ご無事で」


無理やり貼り付けたのが見え見えな笑顔だった。

あまりの下手加減に、思わずこちらまで笑ってしまう。


「ふっ、ああ。行ってくる」


大好きな彼女の元を発ち、向かうは血煙の溢れる戦場へ。

アサシンとしては中々に新鮮な景色だ。


え?ここからどうするかって?

特に考えてない。とりあえず片っ端からぶっ飛ばす。


脳筋乙とか言うな。

それが1番手っ取り早いだろ?

もうあの男もいないんだし、勝ち目は十分にある。

それに、早くこいつらを片付けないとこっちが危ない。

負傷者もかなり増えてきたし、これ以上被害を増やすわけにはいかない。


え?もう少し耐えれば戦いが終わる?

おいおい、ネタバレするなよまったく……。

そういうのって俺に言うんじゃなくてナレーション的なアレで書くやつじゃないのかよ……。

まあ、だったら雑魚は無視してあのうるさい奴をやりますか。


乱戦の中に足を踏み入れる。


味方を助け、敵を斬り、道をこじ開けながら進む。


後ろから襲い掛かってきた敵兵の頭を銃弾がブチ抜く。

ジークめ、カッコつけやがって。


「なっ、おい、お前らあいつを止めろ!」


馬上の男がケイジに気付き、必死の形相で叫んだ。

それを合図に、わらわらと敵兵が集まりだした。

戦いも佳境に差し掛かり、お互いに大分戦力を減らしたはずだが、それでも結構な数の敵兵が周りを取り囲む。


「お前ら、死にたくなかったらそこを退け。俺が用があるのはあいつだけだ」


ケイジの言葉と、周りを包む『黒い』魔力に敵兵達が怯む。


「お前ら何をしている! 早くその男を殺せえ!」


馬上の男の言葉で、敵兵は一斉に襲いかかって来た。

その瞬間、すでにケイジは魔法の発動体制に入っていた。


「モン◯ン風シビレ罠!」


両手で地面に魔力を打ち込むと、ケイジを中心として広範囲に電撃が走った。


「が、ぐあっ……‼︎」


え?著作権的なアレがアウトだって?

いやいや、モン◯ンってカプコンさんのモンスターハンターじゃないから。全然違うゲームだから。シビレ罠もそういうただの罠だから。


血を見るのもいい加減うんざりして来たし、あの指揮官みたいな奴は生け捕りの方が便利だからな。


「さーてと、詰みだな。さっさとこの軍を退いてもらおうか」


痺れる男の鼻先に剣を突き出す。


「ぐっ……、バ、バカが! 撃てえ!」


男の言葉にハッと周りを見渡す。

すると、ケイジ達の少し左奥に大砲が1門構えてあった。発射体制に入っている。

角度的にギルドを狙ったものではない。


「てめえ! 今すぐやめろ、死にたいのか!」


射線の先を見てゾッとした。

大砲は救護所を狙っていた。

この距離ではジークも対応しきれないし、回り込んでも爆発でテリシア達も巻き込んでしまう。


「早く撃てええええっ‼︎」


「やめろおおおおっ‼︎」


そして。


ドオオオオオオオオオオオオオン、と轟音を上げて大砲が爆発した。


救護所は無事だ。

大砲が、吹っ飛んだ。


「なっ……⁉︎」


集まった視線の先にあったのは。


「やれやれ、間に合ってよかった」


深緑色の髪をなびかせ、銀色の鎧に身を包んだ女騎士だった。

どうやら、発射直前に大砲を砲身ごとぶった斬ったようだ。


「「「マスター‼︎」」」


救護所や周りの仲間達から歓喜の声が上がる。


マスター?

あの人がか。

初めて見たが、砲身ぶった斬るとかやべえなおい。

まあいい、とりあえずこれで憂いは無くなった。


「クソがぁ……! いつになったら動けるんだ……!」


「ああ、まだ無理だろ。シビレ罠だから缶的なアレがボーンってならないと動けないぞ」


「なんっだそりゃ! ふざけんな!」


「さあ、帰る気になったか?」


「誰が! まだこっちが勝ってること忘れんじゃねえ!」


てかこいつ、シビレ罠かかってんのによくこんなに喋れるなあ。


「いや、そこまでだ。戦いは終わりにして、この軍を退け」


大砲をぶった斬ったマスターさんが歩み寄って来た。

その細身のどこにあれをぶった斬るほどの力が……。


「クソっ、誰が……!」


必死に罠から逃れようとする男だったが、マスターさんの言葉通り、戦いはここで終わることになった。


敵軍の後方から、伝達係の兵が馬に乗って走って来た。


「隊長! 本営からの伝達が……」


2人に囲まれた男を見て伝達係がたじろいだ。


「何だ! そこからでいい、言え!」


「は、はい! 本営より、今すぐに戦闘を中止し全軍退却せよとのことです!」


「なっ……⁉︎」


全軍退却の指示に、男は驚きを隠せない。


「だから言っただろう。ケージくん、罠を解いてやれ」


罠の中心にある缶のようなものを拾い、グッと力を込めて消した。

すると電気は消え、敵兵達の体が自由になった。


「あれ、何で俺のことを?」


「話はミルから聞いている。色々と苦労をかけたようだな。ありがとう。私はレニカ・イークラムだ」


「ケイジです。どうも」


退却し始めた敵軍をガン無視して自己紹介をするマスターさん。

もしかしてこの人も天然……?


「貴様ら、覚えていろ! タダでは済まさないからな!」


「んなコッテコテな……」


そう言い残して軍は退却していった。


「さあ、話したいことは沢山あるがまずは怪我人の救護と後片付けだ。動けるものは皆手伝ってくれ!」


おお‼︎ と、ギルドの仲間達が応える。

さすがはマスター、人望はかなり厚いようだ。


こうしてユリーディア防衛戦は、それほど大規模ではないものの、約半日で決着という早さでケイジ達の勝利で幕を閉じた。

だが、この戦いが後に起こるさらに大きなトラブルのキッカケでしかなかったことは誰も知る由もなかった。


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