第31話・引き気味で
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第31話です。
ケージくん、魔法がとても強くなってます。
そうです、DTだからです。
よろしくお願いします!
「第3チーム!崩れかかってるぞ!集まり直せ!」
「ケージ、東側から新手だ!一旦下がれ!」
壁沿いに築かれた防衛線を基本として、一進一退の攻防を行っている。
王都の軍相手に数では劣っているものの、戦略やひとりひとりの戦略力で勝るギルドのメンバーは善戦していた。
「了解!ガルシュ、一旦頼むぞ!」
「任せろ!行くぞお前ら!」
え?
珍しく冷静だなって?
いや、むしろあの時がおかしかっただけだって。
そりゃあ、こうやって指揮官役をやるのはそんなに慣れてないが、出来ないって訳でもない。
ミルさんに怒られるからな。あんまり前線に出てると。
一旦壁際から離れ、補給物資や怪我人の確認をしている時。
ドオオオン、と建物の向こうから大きな音が聞こえてきた。
聞いたことがない音だったが、似たような音なら聞いたことがあった。
壁の上を睨みつける。
すると、黒い塊が飛んできた。
そう、砲弾だ。なりふり構わず、この街を潰すつもりなんだろう。
「ジーーーーーク!!!!」
「任せろ!!」
壁から離れた建物の屋上にいるジークが応え、黒光りする銃口が火を噴く。
発射された338ラプアマグナム弾が空気を切り裂き、砲弾に命中する。
砲弾は空中で爆発し、破片を撒き散らした。
「ちっ!おい、魔術隊を出せ!」
王都軍の中で騎馬し、荒い口調で喋る男が命令すると、ローブのような服を着た集団が前線に近づいてきた。
「やべっ!魔法隊か!一旦下がるぞ!」
ガルシュが叫び、前線が後退する。
他のメンバーもすぐに後退したところを見ると、奴ら、それなりに厄介な敵みたいだ。
「へへ、だったら試してみるか」
剣を収め、ケイジが魔術隊に近づく。
右手に意識を集中させる。
「喰らえ!アイスブレイド!」
魔術師の1人が叫び、氷の刃が飛んできた。
そして、それを鋼鉄の弾丸が砕く。
相変わらず好援護だ。
「ボルケイノ・クロー!!」
大きく叫び、右手を振る。
すると右手から手のような形をしたマグマの塊が噴き出した。
マグマは壁を抉りながら魔術隊に迫る。
「ダメだ、下がれぇッ!」
何人かが魔法をぶつけて止めようとしたが、ケイジの魔法の火力には敵わず、飛び退く。
半分は避けたが、もう半分は防御魔法を張っていたが吹っ飛ばされた。
あれなら暫くは戦線復帰出来ないだろう。
「はっ、魔術隊も大した事ねぇな!」
陣形が崩れた隙を狙って件を抜き、距離を詰める。
援護に出てきた歩兵を斬り、蹴り飛ばし、魔術隊を蹴散らす。
近距離ならば剣の方が圧倒的に早い。
「ケージ、十分だ。それより、西の方の前線が崩れかかってる」
「了解。下がる。そっちに行くぞ」
近づいてきた何人かを斬り、仲間たちのところまで下がる。
退避した仲間達も戻ってきた。
「ガルシュ、しばらくここ頼む」
「分かった。任せろ!」
こうして、近場の前線を深入りしすぎないように援護しながら、戦いを続けた。
もちろんこちら側も魔法を使える者はいるので、魔術隊がチラホラと出てきても戦線は維持できていた。
「この、役立たず共が!おい、アレを放て!」
苛立った様子で馬上の男が怒鳴る。
それに呼応し、兵士達が下がり始めた。
「……まずいな」
ケイジの懸念通り、戦線に出て来たのは兵士達ではなく、魔獣だった。
操れる奴がいるのか、ただ捕まえただけかは分からないが、厄介だった。
「ちっ!怪我人と物資をもっと下げろ!ガルシュ、ジーク、止めるぞ!」
「了解。射線には入るなよ」
「分かってるぜ!来いや犬っころがぁ!」
さあ、あの時の借りを返すぜ。
走って、避けて、斬る。
飛び掛ってくる魔獣の首に剣を突き立てる。
体制が崩れているところを狙った魔獣には、丈夫な鞘を脳天に叩き込む。
ガルシュのハンマーが豪快に魔獣を叩き潰す。
マグナム弾が魔獣の頭部を粉々に破壊する。
やっぱり戦いやすい。
冷静だし、3人で戦えているし、攻撃が確実に捌ける。
「クソクソクソ、何なんだこいつらはぁ!」
馬上の男は更にイラついてるようだ。
指揮官が冷静さを失えばそれほど楽な戦いはないのだが。
一旦下がり、全体の状況を見渡した。
悪くない。
被害も予定より少ないし、戦線も維持できている。
長引くほど不利になるのは向こうなのだ。
そうして俺達は戦闘を続けた。




