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第28話・仲間

「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」

第28話です。

この章はだいぶ長め。

よろしくお願いします‼︎


ケイジとジークがハクを救出し、ユリーディアに帰還してから1週間が経った。

ジークもかなりギルドに馴染み、今では友人知人も多いようだ。

ここまでこの世界に適応できたのはもちろんケイジの手柄もあるだろうが、1番はメルだろう、とケイジは考える。

半ば無理やりミルとメルの家に住むことになったジーク。

何があったかは知らんが、今では3人とも仲良くやっているようだった。


え?

こっちはどうなのかって?

まあ、いつも通りだな。

あの話はまだ答えを出してない。

1週間やそこらで納得のいく答えは出ないさ。


現在時刻は午前9時。

いつもの5人にガルシュを加え、カウンターでわいわいと話す。


「ん、この酒も美味ですなあ」


朝から酒を飲むのもどうかと思うが、ギルドでは珍しい光景でもないので、それなりに強いケイジはもう慣れてしまった。


「ああ、それはフィルカニウムから取り寄せている葡萄酒ですね」


食器を拭きながらテリシアが応える。

もちろん、まだケイジの答えは出ていない。

だが、本当の想いをお互いに告げたことで、心の距離は以前よりも近まったようだ。

それと一応補足しておくが、テリシアはケイジの気持ちには気付いていない。

ケイジが語った話はもちろん理解しているのだが、(恐らく理解しているはず。だが100パーセントとは明記しないでおく)ケイジが自分と向き合うことができたら振られると思っている。

それはそれで書く側も面白いのでツッコミは入れないように。


「果物系の酒もなかなか良いもんだなぁ」


「そうだな。だが少し度数が低くて物足りないが」


同じ酒を飲みながら隣でぼやくのはジーク。

ケイジもアルコールはかなりいけるクチなのだが、ジークには敵わなかった。

ユリーディアの街に来た次の日の夜の話なのだが、クロメたち和国の奴らも集まったギルドはかなり賑やかだった。

そんな中、誰が言い始めたのか、酒が強いやつを集めて飲み比べをし始めた。

ケイジは参加せずテリシアたちと喋りながらちびちびとエールを飲んでいたのだが、メルが強引にジークを引っ張って飲み比べに参加したのだ。

確認しておくが、メルは小学生並みに酒が弱い。もちろん一杯目でダウンした。

ところが、スイッチの入ったジークは飲んで飲んで飲みまくり。

ギルドで1番と言われていたオークの大男が潰れてもまだ平気そうに飲むその姿を見て、ジークのあだ名がアニキになった(ここでも補足しておくがもちろん酒代を払ったのはケイジである)。

本人は呼ばれるたびにやめてくれと恥ずかしそうに言うのだが、面白いので周りは止めないのだった。


「もう、ジークはそうやっていつも飲みすぎるからこれくらいでいいの」


ケイジとは反対隣からそう声をかけるのはメル。

その意見には同意するがまずは自分の貧弱っぷりをどうにかすべきだと思う。


「ああ、そういえばよ。ついさっき王都からこの街に、使者が来たらしいぜ。検問所の近くは大騒ぎなんだと」


何食わぬ顔でそう言うのはガルシュ。

こいつの情報網は一体どうなってるのか。


「へえ……」


「王都、ね……」


楽しく飲んでいたが、鋭い嗅覚を持つ2人は、ただ事ではないんじゃないかと気分を切り替え始めていた。

そして、その予感は的中することとなる。


「た、大変だあ‼︎ 姉さん、姉さんはいるか⁉︎」


尋常じゃない焦りっぷりでギルドに入って来た1人のエルフの男。

その手には手紙のようなものが握られている。

ちなみに姉さんってのはミルさんのことだ。


「私ならここだよ。どうしたんだい?」


さすがはサブマスター、口調こそ落ち着いているが、ケイジたちと同じように事態があまり良くないことは察しているようだった。


「ああ、姉さん、いてくれて助かった。ヒューマンどもが急に検問所に来て、これをギルドマスターに渡せって……」


「そうか、わざわざ済まないね。危ないから、検問所近くのみんなを避難させといてくれ」


「分かった」


「ふ〜……」


事態がただ事じゃないことにため息をつきつつ、手紙を読むミル。


「…………」


しばらくして、読み終わったのか、手紙を再び折ってギルドのみんなの方を向く。


「ミルさん、手紙には何て……?」


1人がそう尋ねるが、ミルは応えない。

そして。


「みんな、1つ聞きたい。ケージとジーク。この2人は、私たちの仲間か?」


「……え?」


質問の意図が読めず、ケイジもジークも困惑する。

だが。


「おおよ、当たり前だ‼︎」


「酒飲んだらダチだもんな‼︎」


「2人とも、俺たちの仲間だ‼︎」


次々と上がる声に、思わず笑みがこぼれる。


「じゃあもう1つ聞く。もし、誰かが仲間を傷つけようとしたらどうする?」


その質問には、奴が答えた。


「みんなで守り抜くさ。仲間を傷つける奴は俺たちがぶっ飛ばす」


緑色の、ふだんはうるさいゴブリン。

そう、ガルシュだ。

詳しい内容はまだわからないが、事態の重さは分かっているのか、いつもとは違う真面目な顔だった。


「分かった。じゃあ、これに何が書かれていたか教える」


ひらひらと、半分に折った手紙を揺らしながら続ける。


「これには、異界から転移して来たヒューマン2人をただちに引き渡せ、って書いてあった。抵抗するのなら容赦はしない、なんてふざけたオマケ付きでね」


俺たちが狙い、だと?


限られた情報で頭を回すケイジとジーク。


なんだ?

なぜ俺たちの身柄なんて欲しがる?

ハクを返せとかならまだ分かるが……。

いや、そもそもなんで俺がいることがバレたんだ?

ジークなら転移先が王都だったから分かるが、なぜ奴らは2人、と……?


隣を振り向くと、ジークも同じようにうんうんと唸っていた。


「でも、もちろん私は2人を渡すつもりなんてない。大事な仲間を。でも奴らは無理矢理にでも連れて行こうとするだろう。つまり、どういうことかわかる?」


「…………」


場が静まる。

だが、みんな理解はしている。


「戦争だ」


誰かが言った。


「そう。おそらくそうなる。手紙には期日は今日中と書かれてる。だから、みんなそれまでにこの街を守る用意を」


一斉に席を立ち始める仲間たち。


「みんな。相手は王都だ。きっと沢山犠牲も出る。でも、でも。この街を、私たちの仲間を、守り抜くために、戦おう‼︎」


オオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ‼︎


屈強な男たちの方向がギルドを震わせた。


ふっ、さすがはサブマスター。

士気の掴み方も完璧だ。


そしてミルがこちらに来て言った。


「済まないね、また面倒なことに巻き込んじまって」


「何言ってるんですか。巻き込んでるのは俺たちの方ですよ」


「そうですよ。そもそも俺らがこの世界に来たのが原因なんですから。本当に申し訳ない」


「……ありがとね、2人とも。きっと、みんなで守るから」


不安を拭いきれない表情で言う。

そんなミルに、2人は立ち上がって応える。


「そんな、つまらないこと言わないでくださいよ。見くびってもらっちゃ困ります」


とケイジが言う。


「この街は、俺たちにとっても大事な故郷です。だから、俺たちも戦いますよ」


とジークも続く。


「でも……」


「ああ、まったくもう。ちったあ信じてくださいって。俺らなら、大丈夫ですから」


そう言ってケイジはミルの頭を撫でる。


あ、さすがに調子乗りすぎたかな?


と思ったが、それとは裏腹にミルはケイジの手を取って言った。


「……分かった。でも、無理だけはするんじゃないよ」


「ええ、もちろんです」


やれやれ、次から次へと面倒な事で。


2人はそれぞれ、準備を整えるために騒めく街を抜けていった。


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