第25話・順序は大事
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第25話です‼︎
ついに魔法解禁‼︎
よろしくお願いします‼︎
魔法。
大気中に存在する魔素を集め、様々な属性に変換し術を発動する……みたいな事をミルさんは言ってたが正直よくわからなかった。
ただまあ、せっかく異世界まで来たんだし、使えそうなら使ってみたい。
異界から来た俺やジークも、可能性はあるらしい。
覚えたらどうするかって?
そりゃあ、透明化して覗きを……なんてするかアホ。
普通に生活や依頼に役立てるだけだ。
ケイジ、ジーク、テリシアの3人は、ギルドのすぐ近くにある魔法訓練所に来ていた。
素質のあるものを選出し、鍛え上げているそうだ。
「魔法か。本当に俺たちにも使えるのか?」
「さあな。ミルさんが言うには、可能性はあるんだってさ」
ちなみにテリシアは、訓練所の先生に事情を話し適性検査だけでもやってもらえないかと頼んでいるところだ。
話している先生らしき相手はまだ若いエリーンの男だった。
あ、テリシアと先生がこっち来た。
話は終わったみたいだな。
「初めまして、この魔法訓練所の講師の1人、ソウと申します。ケージさん、先日はフィルカニウムの街を助けて頂きありがとうございました」
「ああ、いえいえ」
話を聞くと、ソウさんの家族がフィルカニウムに住んでるそうだ。
魔獣の話を聞いてとても心配していたんだと。
「それでは、さっそく適性検査を始めましょうか。まずは、この石を持って胸に当ててください」
そう言って手渡されたのは虹色に輝く石のかけらのようなものだった。
あとから知った事だが、この種類の石は大きな魔力を秘めていて、適性検査以外にも様々な形で利用されているらしい。
「ではリラックスしてください。私の魔力を少し流し込みます。適性があれば、それがキッカケとなってご自身の魔力が流れ始めるはずです」
2人の背中に手を当てるソウさん。
目を閉じて集中し始める。
「いきます。精霊よ、この2人の力を見極め、魔を操りしものとなり得るか示したまえ」
それっぽい詠唱と共にソウの魔力が2人の体に伝わる。
その瞬間。
「う、おおおおっ⁉︎」
「な、これは……⁉︎」
す、すげえ……‼︎
身体中に力がみなぎってくる‼︎
これが魔力か‼︎
隣を見ると、ジークも同じように味わった事のない感覚に興奮せずにはいられないようだった。
「これは……続けるまでもありませんね。おふたりには適性があります」
驚いたようにソウが言う。
隣にいるテリシアも驚きの表情を隠せない。
「先生、これ、もう魔法とか使えるのか?」
ワクワクしながらケイジが聞く。
「ええ、使えるはずです。お好きなように、イメージしてみてください。ただ、ここにないもの、例えば水や炎などはあまりうまくいかないかもしれませんが」
なるほど、魔力を使って自然に存在するものを操る、みたいな感覚なんだな。
って事は、ここなら土とか風を操るような魔法なら使える、と。
ニヤッと、ジークと顔を合わせる。
そして右手を地面につけ、手に力を入れて集中する。
なんか出ろ‼︎
そう念じた時。
ズゴゴゴゴゴゴ、と音を立て、土で出来た洋式トイレが現れた。
「ブフゥッ‼︎」
思わず噴き出すソウとテリシア。
…………。
アイエエエエエエエ⁉︎
トイレ⁉︎ トイレナンデ⁉︎
いや、なんか出ろってのは流石に適当だったかも知れないけど、なんか他にあるだろ⁉︎
え?
いや別にトイレ行きたいわけじゃないって‼︎
「ははは、なんだケージ、腹でも痛いのか?」
いつものように煽ってくるジークの方を見る。
「わあ、ジークさん凄いです‼︎」
歓喜の声を上げるテリシア。
ジークは上手く風を操り、小さな竜巻に腰掛けるようにケイジの頭くらいの高さでフワフワと浮かんでいた。
お、俺も風系にすりゃよかった……。
「う、うっせえジーク‼︎ だったらお前もなんか出してみろって‼︎」
恥かいたままじゃ終われねえ‼︎
そう思いながらジークの足を引っ張り風から降ろす。
「分かった分かった。ケージが洋式だろ? だったら俺は和式トイレを出そう」
いや、別にトイレにこだわらなくても……。
先ほどのケイジと同じように、地面に手を置き集中するジーク。
そして、ズゴゴゴゴゴゴ、と音を立てて何かが出て来た。
「…………あれ?」
出て来たのは、和式便所というより墓石に近い、ただの土の塊だった。
「あれぇ〜?どうしたのジークゥ〜?もしかしてこれがジークの和式トイレですかぁ?」
「ブフゥッ‼︎」
再び噴き出す2人。
「う、うるせえ‼︎ そもそも便器なんて出せてもしょうがないだろ‼︎」
「ぐっ‼︎ そ、そりゃあそうだけどよ……‼︎」
うーむ、なんかもっと使えそうな……。
魔法っぽいやつ……、炎とか出せれば……。
いやでも先生がここに存在しないものは難しいって言ってたよな……。
まあいいや、ダメ元だ。
右手を上げ、力を込める。
おおおおおおおおおお‼︎
出来ればでいいから炎とか出ろおおおおおおおお‼︎
必死に念じるケイジ。
そして次の瞬間、ケイジの手からゴオオオッと轟音をあげながら炎が噴き出した。
が、1つ計算違いな部分があった。
「うおおおおお‼︎ デカすぎだろおおおおお‼︎」
まるで火事でも起きたかのような火柱。
周りの3人もパニックだ。
うおおおおおおお‼︎
マジやばいこれ‼︎
え?熱くないか?
いや、なぜか熱くないけど止め方が分かんねえええええええ‼︎
だがやってる本人が一番パニクってるため、止めようにも止まらない。
「危ねえ‼︎ クソ、水‼︎ 水出ろ‼︎」
すぐ横で叫ぶジーク。
そしてその手から大きな水の塊が出て来た。
「ジーク‼︎ 頼むからこれ止めてくれええええええ‼︎」
半泣きで叫ぶケイジ。
「おおおおおおおおお‼︎」
ジークの雄叫びとともに水の塊は炎を根こそぎ消していった。
だがまあ、その水を消せるはずもないわけで。
バシャアッ‼︎
水は4人をびしょびしょにして消えていった。
「…………」
恐る恐る振り返り、ソウとテリシアを見る2人。
「…………ケージさん?」
「…………2人とも、要練習、ですね」
穏やかな顔から発せられる圧力に、2人は縮こまるしかなかった。
「「はい、すいません……」」




