第24話・戦争
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第24話です‼︎
さあ、ハーレムの流れが来てますぜ。
よろしくお願いします‼︎
まだ早朝に分類されるであろう時間から賑わうギルド。
この世界に来てまだ1週間ほどだがとても居心地のいいこの場所に、再会した友人と足を踏み入れる。
そしてその足は大切な彼女の元へ。
「おはよ、ただいま」
思いを告げた相手であるケイジの帰還の声を受け取るのは、綺麗な金髪をなびかせて穏やかな笑顔で佇む彼女。
「おかえりなさい、ケージさん」
まるで映画のワンシーンのようだった。
少し後ろにいたクルーガーも意外そうな表情で見守っている。
「今日はちゃんと起きれたんだな、テリシア……って、どうした?」
カウンターから出て来たテリシアは、穏やかな笑顔のまま大好きな彼の体に抱きついた。
「何でもありません。無事でよかったです」
え?もうこのままベッドインしろ?
ここギルドだぞ?
お前らも結構無茶言うよな。
はは、クルーガーのやつ、顔が固まってるぞ。
ま、そりゃそうか。
「お、おいブラック。その子は?」
「テリシア・シェリスです。このギルドで受付などのお仕事をしています」
「俺がこの世界に来た時、って言ってもまだ1週間くらいしか経ってないんだけどな。色々と助けてもらったんだ」
「た、助けてもらっただけでそんな密接に……?」
そんな驚いた目で見なくても……。
そんなに女性経験なさそうに見えるのか、俺。
え?
ああ、まあ実際DTだけどさ?
もう俺20歳過ぎてるんだぞ?
そんなウブに見えるか?
……いや、今の発言は墓穴掘っただけな気がするから取り消すわ。
「い、色々あったんだよ」
目をそらして誤魔化す。
「ケージさん、その人は?」
「ああ、クルーガーだ。よろしくテリシア」
「俺の元同業者だ。向こうにいた時の」
あの、テリシアさんそろそろ離れていいんじゃないですか?
さすがにギルドん中からの視線が痛い。
「へえ〜。よろしくお願いします、クルーガーさん」
「ジークでいい。ブラックも、そう呼んでくれ」
「ジークって、本名か?」
「ああ。ケージってのも、ブラックの本名だろ?」
「そうだ。ジーク、か。なんか違和感あるな」
他愛ない会話に笑う3人。
そしてようやく離れるテリシア。
さっきからジークの顔に浮かぶニヤニヤがウザい。
そんな時。
再び彼女がギルドを訪れた。
「邪魔するぞ。ケージはいるか?」
ああ、クロメ姫だ。
側にはハクもいる。
「ん、どうしたんだい朝から。あ、ケージさん。おかえり」
「あ、ただいまっす」
出発前とは打って変わって普段通りの表情のミルさん。
「ケージ、呼ばれてるぞ?」
「おう。ここにいますよ」
キョトキョロとギルドの中を見回すクロメに応える。
こちらに気付いた途端、ずんずんと近付いてくる。
何の用だろうか、報酬でもくれるのかとケイジが考えているその時。
「酷いではないかケージ‼︎ 妾を置いて居なくなってしまうとは‼︎」
人目もはばからずクロメが抱きついて来た。
ふおおおおおおおおおおおお⁉︎
何やってんだこの狐っ子はああああああああああ⁉︎
「…………」
状況を把握出来てないミルさんとは別に、ジークとテリシアからの冷ややかな視線が突き刺さる。
やめてあげて‼︎
もうケイジのライフはゼロよ‼︎
「何やってんですかクロメ姫⁉︎」
肩を掴んで引き剥がす。
……柔らかかった。
って、お前らまで⁉︎
いや、だってしょうがないじゃんか⁉︎
クロメ姫、テリシアよりおっきいから……。
だあああ、悪かった‼︎ 俺が悪かった‼︎
「あん、そんなに邪険にするでない、我が夫よ」
その一言を発した途端、静まり返るギルド。
俺、たぶん人を黙らせる才能があると思う。
…………夫?
何言ってるのこの子?
ハクが帰って来て嬉し過ぎて頭ヒットしちゃったのか?
「ケージさん、どういう事ですかぁ?詳しく聞きたいですぅ」
テテテテテテリシア⁉︎
顔が般若みたいになってるんだけど⁉︎
「待て待て待てテリシア、誤解だ‼︎ クロメ姫⁉︎ どういう事ですか⁉︎」
やめてくれマジで俺を殺す気か⁉︎
「ハクを救い出してくれた事、心より感謝しておる。報酬は用意済みじゃ。そして、ケージのような勇ましい男には、是非とも妾の夫として和国を統べる王となって欲しいのじゃ‼︎」
「………」
欲しいのじゃ‼︎ じゃねえよこのド天然狐‼︎
何考えてんだマジで‼︎
普通、頼みごと1つ達成したからって王になんかしないだろ⁉︎
「にーに、来てくれないの……?」
涙目でケイジを見つめるハク。
尻尾は残念そうに垂れている。
ぐっ‼︎
そ、それは卑怯だろ‼︎
そんな顔されたら断りにく過ぎる‼︎
「安心して構わぬ。共に来れば、家も食事も潤沢にあるし、妾の体も好きにしていいんじゃぞ?」
着物の胸元をチラッと見せて、ゆらりと尻尾を動かすクロメ。
お前、それは卑怯だろ……‼︎
って、何だ?
もう行っちまえって?
おい‼︎ 正気に戻れお前ら‼︎
お前らはテリシア一筋だろ⁉︎
クソ、クロメめ、こいつらを誘惑するとはやるじゃないか……‼︎
「納得出来ませんね。そんな勝手にケージさんを連れて行こうとしないでください」
テリシア乱入。
目が怖い。
「ふん。そうしていつまでも正妻ポジを維持出来ると思うな」
「そちらこそ、カラダだけでケージさんをモノにできるなんて思わないほうが身のためですよ?」
「なっ……‼︎ うるさいわこのCカップが‼︎」
「はっ……⁉︎ よ、余計なお世話です‼︎ 大きさじゃありませんので‼︎」
女の戦いってこええ〜……。
「むうう……。ケージ、妾は決めたぞ‼︎」
「な、何をですか?」
「妾はしばらくこの街に滞在する‼︎ ケージを妾のモノにするまでな‼︎」
……この人、本当に一国の姫さんだよな。
いいのかよそれで……。
「という訳じゃ。帰るぞハク」
ああ、完全に置いてけぼりだったなこの子。
「うん。あ、にーに。また遊びに来ていい?」
「お、おう。いいぞ」
「やったあ‼︎ じゃ、またね‼︎」
や、やっと帰った……。
え?嬉しそう?
……まあ、疲れたけど嫌ではない、かな。
人から好意を向けられるのはやっぱり悪い気はしないからな。
「ケージさん……。にーにって、一体何をしてきたんですか……?」
テリシア、目が怖いんだってだから‼︎
「いやあ、ドロドロだねえ」
「ですねえ。頑張れケージ」
その後、誤解を解くのに1時間近くかかったのは別の話。




