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第20話・ブラック

「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」

第20話です。

めっちゃシリアス。

よろしくお願いします‼︎


ソリド王国。

それがこの大陸を支配する国の名前である。

北西側の海に面した巨大な街がヒューマン達の住む王都で、その周りを多種族が住む四つの街が囲っている。

王都の周りは高い壁に囲まれており、ユリーディアの街と繋がるゲートはただ1つ。


「ふう。ここか……」


ケイジは検問所の近くまで来ていた。


さーてと、どうやって入ろうか………。


ん?さっき言ってた問題か?

あ〜、命に関わることじゃないんだけどな。

フィルカニウムでの戦闘で、ハンドガンの弾が無くなっちまったんだ。

なくても何とかなるとは思うが、正直あったほうがいい。

だが今回の依頼は急だったこともあって、準備出来なかったんだ。


見た所、警備はそんなに厳重じゃないみたいだ。

攻め込まれたことなんてないんだろうな。

まるで警戒心はないように見える。


ただ、侵入するのは簡単そうだが、その前にやる事がある。

情報収集だ。

ミルさんに貰った地図があるんだが、王都はユリーディアの2倍ほどの広さがある。

虱潰しに探してる暇はないんだ。

だから、まずハクが何処にいるのか調べる必要がある。


予想だと、あの検問所に運び込まれたモノの記録があるはずだ。

その中に、ハクの記録もあるかも知れない。


どうやって調べるかって?

それを今考えてる。

どうしようか………。


ケイジが悩んでいる時、通りから一際大きな荷車が検問所に近づいて来た。

家畜を運んでいるようで、豚の鳴き声が聞こえて来る。


………あ。

思いついた。

あれを利用させてもらおう。


ケイジは懐から武器屋で買った投げナイフを取り出し、勢いよく荷車に向かって投げた。


「ふっ」


ナイフはケイジの思い通り、真っ直ぐ飛んでいき、1匹の食事中の豚の体に刺さった。

急な痛みに襲われた豚は、パニックになり暴れ始める。

そして連鎖的に、周りの豚達も興奮し始めて、収集がつかなくなって来たその時。


「う、うわあああああ‼︎ 逃げろ‼︎」


重さに耐え切れなくなった荷車が壊れ、豚達は一斉に飛び出していった。


「お、俺の豚があーーー‼︎ あんた達も手伝ってくれえーー‼︎」


ゴブリンのおっさんが涙目で叫んだ。

ヒューマン達にとっての上客だったのか、他の通行人が居なかったからか、警備の連中は飛び出していった豚達の捕獲に奔走し始めた。


「さて、じゃあ記録を拝見させていただきますか」


誰も居なくなった検問所の建物に忍び込む。

そして机の上に、望んでいた書類を発見した。


えーと………?

米、小麦それぞれ200キロ。80万イルで。

弓、矢1中隊分。50万イルで。

他にも衣類や木材、食べ物など様々だ。

だが、肝心のハクと思われる記録がない。

急がねば、あいつらも戻って来ちまう。

クソ、どこだ………?


必死に紙をめくるケイジの目に、あるメモ書きが写った。


奴隷商・ケイン・クウェート。

午前7時に通過。


「奴隷商……」


ビンゴだ。

時刻的にも、こいつがハクを攫った犯人で間違いないだろう。

午前7時なら、まだ間に合う。


場所は………。

ここから北東に3キロほど。

かなり近い。

これならいける。


豚の捕獲に追われる警備達が戻って来る前に、ケイジは検問所を後にした。




間。




ケイジは、だんだんと暗くなり始める王都の中を、目的地に向かって歩いていた。


こんなに堂々と歩いて大丈夫かって?

ああ、全然大丈夫だ。

これが、俺の才能なんだ。

景色に溶け込む。

たぶん周りを歩いている奴らは、後から聞き込みをされても俺の姿など認識していないだろうな。


陰が薄いだけじゃないかって?

ま、まあ物は言いようだ。

お、見えて来たぞ。


歩くケイジの前に、「ケインズオークション」と書かれた看板と、建物が姿を現した。


入り口には2人の見張り。

まあそうだよな。

さすがに、街の中でさっきみたいな騒ぎを起こすわけにもいかないし。


上を見上げてみる。

1つの窓が見えた。


「お、あそこから入るか」


そう呟き、ケイジはワイヤーフックを窓に向かって投げる。

フックは窓の上の壁に引っかかった。


慎重に、かつ素早く壁を登る。

日が落ちて来たことも相重なって、無事に見つかることなく侵入できた。


まあ、普通に考えれば奴隷なんて地下に隠すよな。


ケイジは地下に向かった。




間。




「え、本当っすかボス?」


「ああ。極東の奴らが捕まえたんだ。こりゃあ高く売れっぞ〜?」


今か?見ての通り、地下にいる。

前にいるあいつが、ケインとかいうここのボスだろうな。


「ほええ〜。まさか王族を捕まえるとは。本当に大丈夫なんすか?」


「ああ、大丈夫だろう。話じゃ姫さんがユリーディアまで来て何かやってるらしいが、ここに来れるわけがない」


あ、あいつ完全にフラグ立てた。


話を聞く限り、ハクはここにいると見て間違いないだろう。

まさに今、奴らが歩いて行く方に。


少し歩いて、辿り着いたのは1つの牢屋。

中には、ハクであろう狐の少女がいた。

テリシアよりも明るめの金髪に尻尾と耳。

巫女のような服は少し汚れている。

手錠をかけられ、今は眠っているようだった。


「おお、こりゃあすげえ上玉っすね」


「ああ。いくらで売れるか、今から楽しみだぜ」


そういって薄汚い笑みを浮かべる2人。


そろそろ頃合いか。


ケイジは再び投げナイフを取り出し、ケインの隣にいる男に狙いを定めて投げた。


ナイフは男の首元に突き刺さり、一言も発すること無く血を吹き出しながら男は倒れた。

床に赤い液体が広がる。


「な、なんだ⁉︎ 誰だ‼︎」


パニックになったケインが叫ぶ。

無線のようなもので仲間を呼ぶ前に、もう1本ナイフを投げて利き腕を切りとばす。


「ぐあああああっ‼︎」


人を殺すことに抵抗はない。

今までずっとやって来たことだ。

むしろ、懐かしい心地までする。


「はっ、はっ、た、助けてくれ。金ならあるんだ」


傷口を抑えながら必死に話すケイン。

都合のいいことを………。


殺す必要があるのかだと?

今の俺はケイジじゃない。「ブラック」だ。

依頼内容が暗殺でないとしても、邪魔になるものは殺す。


いや、訂正する。

俺はケイジだ。

正気は保っている。


「金なんか要るか。自分がしたことを地獄でずっと悔やんでろ」


心臓にナイフを突き立てる。

生暖かい液体が溢れ出す。

男の鼓動が、だんだんと弱まる。


寒い………。


人を殺した後はいつも寒い。


眠るハクを抱え、ケイジは足早にその場から去った。


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