第19話・年齢=〇〇いない歴?
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第19話です‼︎
今回はテリシアちゃん頑張ります‼︎
よろしくお願いします‼︎
「こんなもんか……」
クロメの屋敷から戻ったケイジは、王都潜入のための道具を整理していた。
今回は剣は持っていかない。
戦闘目的じゃないし、この長さは流石に荷物になるからな。
さっき武器屋で買った投げナイフと、持って来たサバイバルナイフ。
あとは移動用のワイヤーフック。
ああ、イメージ的にはル◯ンが使ってるようなやつ。
ただ、ひとつ問題があるんだよな………。
「あの、ケージさん……」
ある事で悩むケイジに話しかけたのは、不安そうな顔で佇むテリシアだった。
「テリシア……」
「あの、本当に行くんですか?」
泣きそうな、何かを恐れているような表情だ。
「………ああ。俺が行かないとダメなんだ」
「どうしてですか?ケージさんが行かなくても、きっと他の誰かが……」
俺のことを心配してくてるのは嬉しい。
でも。
「テリシア。聞いてくれ」
これは、きっと俺にしか出来ない。
そうだろ?
こんな御誂え向きの依頼用意しやがって。
「この依頼は俺じゃなきゃ出来ない。それと、俺は1つ言わなきゃいけないことがある」
「言わなきゃいけないこと?」
「俺が向こうの世界でやっていた事だ。俺は、向こうの世界で殺し屋をやっていた」
テリシアに言った理由か?
さあ、自分でもよく分からない。
ただ、今言わなきゃいけない気がしたんだ。
「殺し屋………?」
「ああ。依頼された目標を殺して金を貰う」
「そ、そんな……」
やっぱり、ショックだったみたいだ。
あの目。
俺を恐れる目。
もう、あの目には慣れてる。
こんな事をして来たんだ、やっぱり、俺が幸せになんかなれるはずがない。
「誰かの幸せを断ち切って金を稼いでた。幻滅しただろ?こんなクソみたいな生き方をして来たんだ、俺は」
だんだんと、自分の心が冷えて行くのを感じる。
「この世界の人間と大して変わらない。だから俺が適任なんだ」
ここに来る前の自分に戻った気分だ。
寒い。すごく寒い。
「………もう、ここには二度と来ないよ。今までありがとう。それじゃ」
本音では、出て行くつもりは無かったんだ。
どこかで、テリシアなら、こんな俺も受け入れてくれるんじゃないかなんて夢見てた。
まあそんな訳無いんだが。
あの目は、もう見たくないんだ。
気に入った人達の目なら尚更。
クロメの依頼が終わったら、どこか、誰もいない、静かな場所で眠ろう。
そして、ケイジはテリシアの家を出ようとした。
「待ってよ‼︎」
響いたのは、テリシアの声。
ケイジが振り返ると、そこには涙を流すテリシアが立っていた。
「テリシア………?」
「なんで………なんでそんな無責任な事するの⁉︎」
テ、テリシアがタメ口⁉︎
初めての出来事にケイジもテンパっている。
「ケージさんが今まで何をやって来たかは、私には分からない。でも、少なくとも私が見て来たケージさんは、他のヒューマンとは違う‼︎」
怒っているように見える。
タメ口ってことは、本当の気持ちを伝えてくれようとしているのだろうか。
「………違わないよ。下手すりゃ、あいつらより俺の方が腐ってる」
「違う‼︎ だったら、何で私を助けてくれたの⁉︎ 怖いって言った時、何で一緒に居てくれたの⁉︎」
「それは……」
答えに詰まる。
自分でも何故か分からなかった。
「私は、本当に嬉しかった。ケージさんが、側にいてくれて。優しい言葉を掛けてくれて」
胸が痛い。
こんなにも優しい彼女を泣かせてしまった自分が情けない。
「気付いたら、ケージさんの事が好きに、大好きになってた。なのに、もう二度と来ないなんて言わないでよぉ………‼︎」
再び泣き出してしまうテリシア。
そう、だったのか………。
俺なんかの事を………。
今まで、人に愛されたことなんて無かったのに………。
たまらなく嬉しい。
でも、本当にいいのか?
俺はまた、いつかテリシアを不幸にはしないのか?
大丈夫って?何でだ?
テリシアが好いてくれてる自分を、信じればいい、だと?
………。
そう、だな。
分かった。テリシアがここまでしてくれたんだ。
俺だって、頑張らなきゃ失礼だよな。
ありがとう。
「あ………?ケ、ケージさん?」
泣きじゃくるテリシアを抱き寄せるケイジ。
強く、優しく。
「勝手なこと言って悪かった」
「………うん」
「テリシアの気持ちが聞けて、すごく嬉しい」
「………うん」
「もう、二度と来ないなんて言わない。俺も、頑張ってみるよ」
「うん………‼︎」
今まで俺がやって来たことは消えない。消せない。
それでも。
この世界で、新しい一歩を踏み出してもいい。
そんな気がする。
「依頼も、絶対に成功させてまた帰って来る。だから、ここで、待っていてくれるか?」
「………もちろん‼︎ 私は、ずっと、ずっとここでケージさんを待っています‼︎」
涙目で、でも輝くような眩しい笑顔で、テリシアは言った。
たまらなく愛おしくなり、もう一度テリシアを抱きしめるケイジ。
「絶対、帰って来るから」
「はい‼︎ 行ってらっしゃいませ‼︎」
そうして、ケージはテリシアの家を出た。
間。
告白なんてされたの、人生初だった。
まるでドラマみたいなシーンだった。
たまらなく嬉しかった。
俺は、テリシアの事が好きなんだろうか。
そんな事聞くなって?
いや、分かってるけどさ。
ははは、そんなに不機嫌になるなって。
あ〜、なんかさ。自分でもよく分からないけどさ。
俄然、無敵な気分だ。
今まで経験したことのない高揚感を感じながら、ケイジは目的地に向かって行った。




