第15話・同棲とか流石に気分が高揚します
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第15話です‼︎
いいなあ。ケージさんいいなあ。
よろしくお願いします‼︎
「なんっでだあああああアアアアアアアアア‼︎ 」
紅に染まり始める空に、圭二の魂の叫びが響いて消えていった。
え?主人公のシャウトから始まる話はつまらないって定評?
やめてくれよ怖いこと言うの。
っていうかさ、シャウトの理由は聞かないのか?
え?別に興味ないって?
いや、頼むよ聞いてくれよ。
そうしないと話進まないじゃんか。
仕方ないから聞いてやるって………。
なんでお前らそんな偉そうなんだよ………。
まあ、とりあえず理由なんだけどな。
三時間前の話だ。
「くああ、いくら貰えるんだろうな〜」
ギルドのカウンターなう。
一昨日の、フィルカニウム防衛の分の報酬を貰えるっていうから、奥に入って行ったミルさんを待ってる。
予想だけど、元々の報酬が12万イルで、それに慰謝料を入れて20万イル行けばいい方か。
家賃までは見てないけど、食い物の相場を見る限り20万もあれば2ヶ月くらいは家賃は何とかなると思う。
「お待たせ〜。はいよ、今回の報酬」
ミルさんから報酬が入っている封筒を受け取る。
「ありがとっす。これっていくら入ってます?」
「ん〜、52万イル」
「………52万⁉︎」
思わず口に出てしまった。
そ、そんなに貰えるだと⁉︎
52万って、日本でそこそこの部屋なら半年分くらいにはなるぞ⁉︎
予想外の金額に動揺を隠せない。
「え、そんなに貰えるもんなんですか?」
「ん〜まあ、今回はそのくらいじゃない? でも本来ならもっと貰えてもおかしくないよ」
ま、マジか………。
ギルドの力、恐るべし………いや、ギルドの力かは分からんが。
「普通なら街の防衛と魔獣討伐の依頼は別々にされるものなんだよ。どっちも簡単な依頼じゃないし、それを一気に1人でこなしちゃうんだもの。100万イル超えてもおかしくなかったんじゃないかい?」
なるほどな………。
………全然覚えてないんだよな、あの時の事。
とりあえず、もうあの時みたいに正気を失うような事はやめなければ。
それにしても、52万イルか………。
これだけあれば、そこそこ立派な部屋で暮らせそうだ。
「なるほど………。ありがとうございます。じゃ、俺は部屋探しに行ってきますね」
テリシアに貰った地図を持ち、席を立つ。
「は〜い、ごゆっくり〜」
そうそう、52万も貰った時はマジでビビったな。
で、この後よ問題は。
何があったか?
貰った52万持って、地図の通りいくつかの不動産に行ったんだけどさ。
なぜか全く借りられない。嵌められてるんじゃないかってくらいな。
多人数用の部屋しか空いてないとか、改装中だとか、とにかく手頃な部屋が全く借りられなかった。
ここまで来たら街中の不動産全部回ってやろうと思ってな。
ありとあらゆる店に行った。
結果か?
もうここまで来れば言わなくても分かるだろ?
惨敗だよ。
結局部屋は見つからなくて、ギルドに戻る途中でついつい叫んじまったんだ。
はあ、マジでどうしようかな………。
流石に野宿はキツいし、最悪宿かホテルに泊まるかどっちかだよなあ。
でも段違いに金かかるよなあ………。
重苦しい気分で、ふらふらとギルドに向かっていくケイジだった。
1時間後、ギルドにて。
「ギャハハハハハ‼︎ そんな事もあるんだな‼︎ 」
と、隣でデカい声で笑うのはガルシュ。
うるせえよアホゴブリンが‼︎
笑い事じゃないんだよ‼︎
ああ、マジでどうしよう今日………。
「え〜、でもそんな事ってあるものかな〜」
反対隣で喋るのはメル。
ってベロンベロンじゃんかよ………。
「分かんないけどさ………メル飲み過ぎじゃない?」
よだれを飛ばさないでくれ頼むから。
「え〜? 飲み過ぎじゃないよお〜? ほらほら、ケージももっと飲みなって〜」
「ああ、そいつはいつもそんなだから気にすんな‼︎ ギャハハハハハ‼︎ 」
こいつもこいつでかなり飲んでるんだよなあ………。
酒臭い………。
でもまあ、これだけ美味ければ分からなくもないか。
酒もつまみも、向こうとは桁違いに美味いんだ。
でもなあ………。
「マジで部屋どうしよう……」
「あ、皆さんお揃いで」
そこに来たのはテリシア。
片付け中であろうか、両手に食事の済んだ食器を持っている。
「ああ、テリシア………。仕事お疲れ様」
「テリシアおつかれえ〜」
おいおい、メルさん食い物散らかすなって………。
え?メルがどうなってるか?
あ〜、まあ酔っ払ってる。
文字通りベロンベロンで、服もただでさえ薄着なのに半分くらい脱ぎかけてる。
まあ、エロいな。
って何興奮してんだよお前ら‼︎
テリシアもいるんだぞ?
「ケージさん、そんな落ち込んでどうしたんですか?」
「ああ、それがさ……」
事情を説明。
そう、例の不動産事件な。
「そ、そんな事ってあるんですね……」
「ああ、俺も初めてだよこんなの……」
まあこっちで部屋借りるの初めてだけどね‼︎
こっちの宿とかホテルって、その日に泊まる事とか出来るのかな………。
出来なかったら野宿か………。
どんどん気分が沈んで行く。
とりあえず、早めに動かねば………。
「じゃあ、俺は泊まるとこ探しに行くよ。その酔っ払い2人よろしくね」
そう言って席を立った時。
「あ、あの‼︎」
テリシアが手を掴んで、こう言った。
「その、部屋が見つからないんでしたら、私の家に住みませんか⁉︎」
テリシアの顔が一瞬で真っ赤になる。
…………。
…………ん?
こ、この子はマジで何を言ってるのかな?
テリシアの家にって、つまり同棲って事か?
あのさ、聞きたいんだけど。
これ、どう返せばいいんだ?
泊まれるのはありがたいけど、っていうか住むって言ったよなこの子。
いやありがたいんだけど、良いのか?
幸せならオッケーです?
な、なんか聞いたことのあるフレーズだがまあいいか。
「え、良いのか?」
「は、はい‼︎ 1人で住むには広すぎるって前から思ってたので」
そう言って手を離そうとしないテリシア。
ん〜、そうじゃなくてこう、倫理的な問題が………。
いや、まあいいか。
1回寝たし、今更かもな。
「あ〜、じゃあ、悪いけど世話になろうかな」
まあ、何とかなるだろ………って、ああ、分かりやすく顔に………。
テリシアの表情がパアッと明るくなっていく。
そ、そんなに嬉しいか?
「はい‼︎ じゃあ、行きましょう‼︎ 今日のお仕事は終わったので‼︎」
あっという間に帰る支度を終え、手をぐいぐいと引っ張って歩くテリシア。
見てるこっちまで顔が綻んでしまう。
本当に、素直な良い子だ。
とりあえず、寝床が見つかって良かった……。
野宿には良い思い出がないからな………。
2人は夜になっても賑わう街の中を歩いて行った。




