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第14話・言葉の重み

「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」

第14話です‼︎

いやあ、ミルさん、いい人ですねえ。

お嫁さんになってくれないかな。

よろしくお願いします‼︎


あ〜………。

体が痛え………。

お前らよくも人の話聞かずに戻しやがったな………。

っていうかこれちゃんと戻って来たんだよな?


目を開けてみろ?

ああ、分かった。


「ぬう……」


ああ、光が眩しい………灰になる………。

ここは、病院かどっかのベッドか………。


「すう………すう………」


デジャヴ‼︎‼︎


………テリシアさん?

な、何やってるのかな?

なんで俺のベッドの中にいるの?

いや、普通お見舞いとかって椅子に座ってやるものじゃない?


外の様子を見る限り、今は朝っぽいけど俺どのくらい寝てたんだろう。

確かテリシアを庇って背中やられたんだっけ。

どうりで動くと痛いわけだ………。


「ん………ケージ、さん………?」


あ、起きた。

ん?

なんか目元が赤いな。


………ほんとに泣いてたんだな。


「おはようテリシア。くああ、今日って何日だ?」


ああ、そういえば言い忘れてたけどさ。

何故か時系列も向こうの、しかも日本と全く同じみたいだ。

さすがは主人公補正。

そいつは一体どこにいるのやら。


「あ、け、ケージ、さん………」


ああ、また泣きそうな顔して………。


「ケージさあああああん‼︎ うわああああああああああああああん‼︎」


大声で泣き出すテリシア。


ぐおああああああああああああああ‼︎

耳がああああああああああああ‼︎


ケイジにクリティカルダメージ‼︎


あと、背中を圧迫しないでくれテリシアアアアアアアアアア‼︎


「えぐっ、ケージさん、ごめんなさい………わ、私のせいでえ……」


ようやく落ち着き、まだ泣きながらも言う。


ああ、気にしてたのか。

ていうかさ、あの怪我、意外とやばかった?


生死の境を彷徨った?

マジかよ………。

良かった、生きてて。


なんだよ。なんでそんな珍しそうな顔するんだよ。

当たり前だろ、まだこっちの世界をエンジョイしてないんだから。


「よしよし。テリシアのせいなんかじゃないって。それに言っただろ?俺は勝手に居なくなったりしないよ」


頭を撫でながら優しく話す。


「うう………うああああああああん‼︎ ケージさああああああん‼︎」


また泣きだしちまった。


やれやれ………。

なんだかんだ言ってもまだ子供っぽいな。

そういえば、テリシアって何歳なんだろうな。

見た目からだと高校生かそこらへんっぽいけど。


「おーい、テリシア、ケージさんは起きたかい………って、あらあら」


「あ、ミルさん。おはようございます」


ギルドにいた時と同じ服装の、ミルさんが病室に入って来た。


ミルさーん?

そのニヤニヤはなんですかあ?

やめてくださいよまだそういう事してるほど元気じゃないんで。


あとテリシアさんいつまでくっついてるのかな?

泣き止んでるっぽいけど。


「良かったねえ無事で。どこか痛むところはないかい?」


「ああ、まだ背中がちょっと。俺、何日寝てました?」


「えーと、1日とちょっとだね。2人が街を出た日の夜に、フィルカニウムの人たちがボロボロのケージさんを大急ぎで運んで来て。今はその2日後の朝だよ」


け、けっこう寝てたんだな、俺。

はあ、なんかそう考えるとすげえ疲れた。


って、テリシア寝てるし………。

とりあえず、出るか。


ベッドから体を引っ張り出す。

ああ、テリシアは起こさないようにな。


いだだだだだだだだ‼︎

ああ、やっぱりまだ痛え‼︎


ひー、歩くのも一苦労だなこりゃ。


「ケージさん」


ん?

なんかさっきとは打って変わって真面目な顔してる。

やっぱ綺麗な人だなーって思う。


「本当に申し訳なかった。今回の落ち度は完全に私たちギルド側にある。それはマスターも私も認めてるし、その気なら訴えてくれても構わない」


訴えてくれても、って。

そんな事するようなやつだと思われてるのか俺。

まあ、確かに依頼書の嘘を見破れなかった非はあるかも知れないけど。

いや、ちゃんとした機関だからこそこういう事はしっかり後始末までやらなきゃいけないのか。

訴えるつもりなんかないんだけどなあ。


え?

訴えて慰謝料ガッポリとれば暮らしていける?


お前らも俺と同じくらいぶっ飛んでるよな。

そんな事したらそれこそゴブリンしか喋れるやつ居なくなるっつの。


「ミルさん、顔を上げてください。そんな、訴えるなんてしませんよ。フィルカニウムの連中も、俺もテリシアも生きてる。それで良いじゃないですか。だから、そんなに気にしないで下さい」


確かに、ミスやトラブルを予防するのは大事な事だ。

だが、殺し屋なんてやってれば嫌でも気付く。


人は、死ぬ時は死ぬ。


死なない人間なんていないんだから、人間なんて弱い生き物、いつ死んでもおかしくない。


だから、この程度、俺は気にしない。

もし俺が今回の事で死んだとしても、それはそれで仕方の無いことだ。


結果としてみんな無事だったんだから、それでいい。


「ケージさん………。ほんとに、ありがとね」


「いえ。あの、テリシアって、どうしてました?」


え?いいだろ別に。

気になるんだよ。

泣いてたって言ったのお前らだろ?


「ああ、この子ね。ずっと、泣いてたよ。私が悪い、私のせいだって」


「………」


胸が痛い。

俺があの時、もっと注意を払っていれば………。


「面会の時間を過ぎても、私はここにいるって聞かなくて。仕方ないから、病院の人にお願いして、テリシアだけはケージさんにつきっきりになってたんだ。きっと疲れと安心で寝ちゃったんだろうね」


「………そう、ですか」


穏やかな顔で眠るテリシアの頭を、そっと撫でてみる。

んにゅ、と気持ち良さそうに反応して、思わずこっちまで顔が緩む。


でも、何故なんだろう。

俺みたいな会ったばかりの奴に、どうしてそこまで………。

家族ですら、俺の事を道具のように扱っていたのに、なんで………。


「なんで……」


つい、口に出てしまった。

聞き逃すはずもなく、ミルさんが言う。


「………分からないかい?」


「分からないです………。今までずっと、人に大事にされたことなんて無かった。死んだとしても、泣くどころか認知すらされなかっただろうに」


きっとそうだ。

俺が死んでも、俺の家族は何処かから代わりを連れて来て自分たちの理想を押し付けたのだろう。


「でも、ここの人達は違った。ガルシュもメルもミルさんも、そしてテリシアも。会ったばかりの俺なんかに親切にしてくれて……」


………俺は、主人公じゃない。

そうだろ?

そのくらい分かってる。

でも、その偶然、たまたま俺も巻き込まれたっていうこの偶然に、俺は救われたのかも知れないな。


「嬉しくて、嬉しくて。まだ来て3日しか経ってないけど、本当に毎日が楽しい。だからこそ、分からないんです……」


ビビってるのかって?


ああ、そうだよ。

俺はビビってる。

この居心地のいい空間が無くなることを。

俺を、佐霧圭二として扱ってくれる人達が居なくなることを。

面倒臭いなんて言ってたけど、実を言うと、向こうではそれが怖くて、人との関わりを避けてた。


ああ。

情けない話だ。


「………まあ、私から言える事はそんなに無いけどね」


そう言って、ミルさんは俺の手を取って言った。


「大丈夫だよ。私達は、ケージさんを裏切ったりしない。絶対にね」


………やばい。


何がって?

そんな事言われたら泣きそうになるだろ。

やっぱり嬉しいんだよ。

こんな、血に塗れた俺みたいな奴にも優しくしてくれるのが。


「あ、それとね、ケージさん。テリシアの前で俺なんか、とか言っちゃダメよ?その子怒ると意外と怖いから」


そう言ってぎゅっと俺の手を握り、笑うミルさん。


ああ、クソ………。

いかんせんこんな優しい言葉をかけられるのに慣れてないから、つい手を握り返しちまう。

温かい、暖かい手を。


マジで泣きそうになる。

勘弁してくれ。


涙目になってるのがバレないように、手を握ったまま俯く。

まあ、とっくにバレてるかも知れないが。


言葉ってのは、人間が進化の過程で得て来た物の中でも相当優れたものだと、俺は思う。


それだけで、全てが救われる奴もいるんだから。



その後、なんとか涙腺を抑え、テリシアを起こして3人でギルドに向かった。


まだ退院できないだろって?

無理言ってさせてもらった。

いればいるほど金かかるし、歩けないほどじゃなかったからな。




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