第10話・命短し恋せよ乙女
「隠密スキルカンストさせた俺、異世界生活始めました」
第10話です‼︎
悩むテリシアちゃんも可愛いなあ。
よろしくお願いします‼︎
「んー、どれがいいかなあ………」
仕事選びなう。
ほんとに、ゲームの世界にでも来たのかってくらい色んな種類の仕事がある。
例えば………。
畑を荒らす猪退治。これはちょっと報酬が安いな。
飛竜種の卵盗み出し?モン○ンか。やばそうだし却下。
ホストクラブのヘルプ?
………。
なかなかいいのが見つからない。
「あら、ケージさん。まだ決まらないかい?」
そう言って話しかけて来た1人のお姉さん。
あ、ミルさんだ。
って何仕事中に酒持ってうろついてんだこの人。
「あ〜、そうですね。なかなかしっくりくるのが見つからなくて」
え?
オススメのがある?
なになに、新しくできた銭湯の盗撮依頼………?
うん、憲兵さん呼ぼうか。
ってかよくこんな犯罪予告堂々と依頼するよな。
「あ〜。あ、そうだ。テリシア、ちょっとおいでー‼︎」
ん?なんでテリシア?
「はーい。どうしました?」
カウンターから出て来たテリシア。
「あんたたち2人で、この仕事行ってきな。報酬もなかなかいいし、テリシアがいれば道もわかるだろう?」
ミルさんから渡された依頼書を見てみる。
えーと、どれどれ。
隣町への薬の買い出し。
道の途中でモンスターが出現する恐れがあるので依頼。
報酬は、12万イル⁉︎
めっちゃ高い‼︎
こ、こりゃあ受けるしかない‼︎
ちなみに、さっき見た猪退治が1万イルだった。
「おお、いいな、これ。テリシア、ごめん、頼める?」
って、あれ?
なんかまたテリシア顔赤いんだけど。
熱でもあるのか?
「はいよ、それじゃ決まりだね‼︎ 依頼された薬はテリシアが分かるから、ケージさんはしっかりテリシアを守ってやんなね‼︎」
テリシアの返事も聞かずに手続きを始めるミルさん。
まあ、短めの護衛みたいなもんか。
それなら経験もあるし、大丈夫だろう。
「あ、そうそう、ケージさんはいこれ。私達からのギルドの入団祝いだよ!」
ミルさんから袋に入った細長いものを受け取り、取り出す。
お、剣か。
しかもかなりの上物じゃないか。
よかった、持ってきたナイフは刃がボロボロになっちまってたから。
「ありがとうございます!これ、すごい良い物ですね」
鞘から抜き、一振りしてみる。
おお、軽い。
使いやすい、良い剣だ。
え?
殺し屋に剣は似合わない?
いや、今は殺し屋じゃないし。
仮にこっちで殺し屋やるとしてもこれは使わないよ。
ちゃんとハンドガンも持ってるから。
「さ、あとはお2人でごゆっくり〜!」
そこから1時間。
現在地点、街の東側の出口。
なんかテリシアが支度したいから東の出口で待っててくれって。
地図を見た感じ、歩きで2時間、走れば1時間かからないくらいの距離だった。
でもまあ、テリシアもいるしモンスター?と戦うこともあるだろうから、2時間半から3時間くらいかかるだろうか。
今は午前10時半。
それなりに余裕はあるが、あんまりモタモタしてると帰ってこられなくなる。
さすがに夜の道は危険だろうからな。
「お、お待たせしました!」
あ、テリシアが来た。
相変わらず可愛いなあ。
今の服装?
えーと、なんて言うんだろうな。
そっちで言うショートパンツ風のズボンに肩のとこが出たワンピース風の服。
その上にコートを羽織ってる。
ああ、めっちゃ可愛いぞ。
そういえば、この世界に季節の概念ってあるのかな?
俺今長ズボンにコート羽織ってるけど、普通に快適なんだよな。
でも街中じゃタンクトップに半ズボンの人もいたし。
不思議なもんだ。
「じゃ、行こうか」
2人で歩き始める。
ああ、太陽の光が実に気持ちいい。
仕事がなければ、ゆっくり昼寝でもしたい天気だ。
え?
なんか会話しろって?
別に到着まで無言なんてことはないだろうし、こっちから話す必要はないんじゃないのか?
「あ、あの、ケージさん」
ん、もう来た。
「何だい?」
「あ、あの、1つ聞きたいのですが………。これは私の友人の話なのですが、その子はある日、初めて会った人に話があると言われ、2人で会うことになったそうです」
少し恥ずかしそうに、テリシアは話す。
「その子はその人と会おうとしたのですが、知り合いに会うことを反対され、しかもその人が嫉妬して襲われてしまったらしいんです」
「その時、話したいと言っていた人が助けてくれて、その人の優しさに、誠実さに、その子はどんどん惹かれていって………。気付いた時には、顔を見るだけで恥ずかしくなるくらい、その人のことが好きに、大好きになっていたそうなんです」
「ケージさんは、どう思いますか? その………会ったばかりの人を好きになってしまうのは、軽い、良くないものなのでしょうか………」
………なるほどなあ。
別に、そんなに悪いことじゃないと思うけどなあ。
一目惚れってのもあるくらいだし。
………え?
鈍感?俺が?いや何で?
分かってないならいい?
なんだそりゃ………。
でもまあ、人間ってのはままならない生き物だからなあ。
自分が思うように、自由に生きればいいと思う。
恋なんて、理不尽で、醜くて、哀れで、そして美しいものなんだ。
「んー、俺は、良くないとは思わないな」
「一目惚れってのもあるくらいだし、会ってからの日にちと、想いの重さは関係ないと思う。好意を寄せられて嬉しくないやつなんていないと思うし、自分に自信持っていけばいいと思うよ」
「これは受け売りの言葉なんだけどな。人は、誰かに恋してると、世界が虹色に見えるんだってさ。好きな人がいるから、自分を磨こうと努力する。好きな人がいるから、毎日が楽しくなる」
「そういうのって、すごく素敵なことだと思うな」
ああ。
素敵だとも。
人は恋をして、誰かを好きになるからこそ美しいんだ。
自分のことしか考えないやつは、結局は誰にも勝てない。
「そう、ですか……」
あれ、なんかテリシア、嬉しそうだな。
まあいいか。
結局、行きはモンスターに会うこともなく、問題なく目的地に向かって進んでいった。




