第二章Ⅴ クラウドの覚悟とクリスタの旅
更新遅くなり申し訳ございません。
最近バタバタしておりなかなか更新ができませんでした。
これからもう少し頻度をあげていけるように頑張って行くのでよろしくお願いします。
ではどうぞ!
会議から1日後…
「あ、クラウドさん!どうしたの?」
「あら、クラウド。よく来ましたわね。」
クラウドは彼女の知恵を借りようと思い尋ねていた。
因みに、彼女というのはエルネスト三姉妹の母親であるオリーシャのことである。
彼女は現在、自分の部屋にて末の息子であるリオンに勉強を教えていたようである。
リオンの方は首をコクリとかしげており、オリーシャは待っていたと言いたげな顔をしてクラウドの顔を伺っていた。
「先約がありましたか…。では、出直してきます。」
「いいえ、その必要はありませんよ。丁度ひと段落したところですから。」
そう言うと、2人の前にあるテーブルの勉強道具をリオンが素早く片付けて、話をしやすいような状況を自分から作ってくれたのだ。
さすがは、あの姉妹の弟でありながら良くできた子である。
そんな息子にオリーシャは笑顔で頭を撫でていた。
「リオンは本当にいい子ね。さすが私の可愛い息子だわ。」
「ちょ、ちょっと!お母さん!僕そんなに子供じゃないよ!?」
母親から突然頭を撫でられたことに驚いて顔を赤らめて可愛い反抗をしていた。
だが、クラウドの方もそんなリオンとオリーシャを見て微笑ましいなと思っていた。
それと同時に普段からオリーシャがここまで優しければいいのにとも感じていたのだ。
「何を言っているの?リオンはずっと私の子供よ?」
「むぅ〜。とにかく、僕はもう行くからね?」
確かに、オリーシャの言う通り、リオンはオリーシャの子供であるため間違っていないが、そんな言葉に顔を膨らませて不貞腐れていた。
そして、会議をするのだろうと悟ったリオンは邪魔にならないようにと部屋を後にしていった。
「リオンには申し訳ない気がしますね。」
「大丈夫よ。あの子は上の3人とは違ってしっかりしているから。
それよりも、バイゼルの件はどうなったのかしら?」
クラウドは自分たちに気をつかってでていったリオンに申し訳なさを感じているものの、オリーシャは息子の行動に納得をした表情をして、今エルネストの直面しているバイゼルとの戦いについてクラウドに尋ねた。
「はい。恐らく勝負は2日後になるでしょう。計画通りにいけば負けることはありません。」
「そうですか。クラウド、必ず勝ちなさい。あの娘のためにも。」
計画通りと言うのは、昨日のクリスタとクラリスを呼んで行った会議のことである。
クラウドは2人にそれぞれ別々の役目を与えたのだ。決して口外してはならない極秘のものを。
クラウド曰く、これが上手く行けば間違いなく勝てるとのことであるのだ。
しかし、当然リスクも存在しており、クリスタのものがそれにあたるのだ。
クラウドはオリーシャからの命令に頷き真剣な眼差しで見つめた。
「私におまかせを。必ず勝利をクラリア様に、そしてエルネスト王国のためにもたらして見せます。」
クラウドの覚悟にオリーシャは満足したのか、真剣な顔つきから、緩み笑顔を見せていた。
オリーシャはクラウドに信頼を寄せているため、自分からこのような軍事のことにはあまり口出しはしない。
「期待してますよ。クラウド・ヴィルヘルム。」
「はい。オリーシャ女王陛下。では私はこれで失礼します。」
そう言って一礼オリーシャに向けてするとドアの方へと向かっていった。
しかし、そんなクラウドを引き止めるようにして、オリーシャの口から言葉を発した。
「クラウド。最後に一つ良いことを教えましょう。」
「なんでしょうか?」
オリーシャからの思わぬ言葉に少し驚いた表情を見せながらも、踵を返してオリーシャの方を再び見た。
そして、振り向くとオリーシャは不敵な笑みを浮かべてクラウドにある一つのことを教授した。
「戦いにおいての真の上策は、味方を欺くことですよ?」
彼女の笑みは、かつて謀将として名を馳せていた女王オリーシャとしての顔であった。
誰もが予想をつかない謀略を行う、それがオリーシャであるのだ。彼女の謀略の中で特に恐るべきは、味方を翻弄するところである。それはまだ、クラウドが軍師なりたての時に、文字通りトラウマになるようなことを行ったことがある。
いつもニコニコしているオリーシャの裏の顔を知るクラウドは内心ゾッとしているのだ。
「はい。オリーシャ様の言葉、胸に刻んでおきます。」
オリーシャの言葉に微笑み返したクラウドの顔を見てすべてを悟った彼女は満足したような顔をした。
そして、その言葉を受け止めた後、クラウドはオリーシャの部屋を後にしていった。
オリーシャの部屋を後にしたクラウドは考え事をして歩いていた。
もうすぐ始まるであろうバイゼルとの戦いに備えて軍師として様々な準備をしなければならない。
今回の戦いは現状から見る限りこちら側が圧倒的に不利な状況である。
だからこそ、軍師である自分がしっかりと考えなければならない。
この大差をどのように覆すかを。もう戦いまでに時間は残されていない。いま持てるすべてをぶつけるのみである。
「おや?これはこれはクラウド殿ではないか?」
深くものを考えていたクラウドは突然自分の名前が呼ばれてハッとした。
よく名前が呼ばれた方を振り向くと、そこには長い銀髪に立派な銀色の髭を生やした老将のグランドルが立っていた。
だいぶ歳をとっているのだが、それを感じさせない若々しさを感じる。
「グランドル殿、どうしたのですか?」
「いや、何やら深刻そうな顔をしていたのでどうしたのかと思ってのう。」
どうやらクラウドは自分が深刻そうな顔をしているとは思わなかったのだろう。グランドルに初めて指摘されて気づいたのだ。
軍師であるクラウドが深刻な顔をするのも仕方ないのだろう。
もし、これで負けてしまえばエルネスト王国は終わりである。今まで先人たちが作り上げてきたものがすべて泡となるのだ。
「そんな顔をしていましたか…。申し訳ない…。」
「いやいや、今の状況を考えてみればそのような顔をして当然ですぞ?しかし安心してくだされ。このグランドルは老人ながらも生命に変えても、エルネスト王国を守ってみせますぞ?」
そう言ってグランドルは年齢を感じさせない己の肉体に拳をあててクラウドを元気づけた。
そんなグランドルの心遣いからか、少しだけ気持ちが楽になった。
「ありがとうございますグランドル殿。私は必ずエルネストをクラリア様を勝利に導いて見せます。」
「はっはっは!!流石、軍師殿!!そうでなくては!」
クラウドの言葉に満足した様子のグランドルは高笑いをした。グランドルは決してクラウドの言葉が上っ面の言葉ではないと知っている。
長年兵士としてエルネスト王国に仕えてきたグランドルだからこそ、言葉の重みがわかることができるのだ。
「おっと、忙しい軍師殿を呼び止めてすまなかった。では一緒に頑張りましょうぞ。」
グランドルはそう言うとクラウドの肩をトンと軽く叩いて激励クラウドの後ろの道を歩いていった。
その後ろ姿はまさに歴戦の名将と言えるものであり、頼りがいのあるものであった。
「よし。やるか。」
クラウドはグランドルの言葉に押されるようにして、廊下を走っていったのだった。
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一方クラウドにある支持をされたエルネスト三姉妹クリスタとクラリスは…。
クリスタ側
現在バイゼル王国モリガンの城下町にクリスタはいた。昨日の夜から出発していここまで到着したのだった。
当然歩いてつける距離ではないため、魔術具を使用したのだった。
そんなクリスタはモリガンにあるそこそこ有名な喫茶店でお茶をしていた。
部下に屈強な男性とクリスタよりも背が高く少し青みがかった髪をした女性を引き連れていた。
「ふぅ〜。いくら魔術具を使用したからと言って決して近くはないわね。」
彼女の言う通り、魔術具を使って1日かかるのであるため、徒歩であれはそれはとんでもなく遠いのである。
喫茶店のテラス席にて休憩をしていたクリスタは前に座っている部下2人に話しかけた。
他のテラス席には、若い男女のカップルがいたり、コーヒーを飲んで新聞を読む男性がいたり、日向ぼっこをしている老婆もいた
「そうですね。空飛ぶ絨毯を使ってもここまでとは思っても見なかったですね。」
「しかし、徒歩よりは何百倍もましでございますぞ?しかしクラウド様から指令というのは一体どのようなものですか?」
女性の方は自分の隣に置いてある魔術具をチラッと見て長旅について話した。
男性の方は、今回ここにきた目的であるクラウドからのとある指令について一体どのようものなのか気になっていたのだ。
しかし、クリスタは決して話そうとはしなかった。これはクラウドからの約束ごとでもあったからだ。
「ごめんねリック。それは言えないの。クラウドから口外するなって言われているから。」
「そうでしたか…。それは申し訳ございません。」
リックと呼ばれた男性は不用意な発言をしたと申し訳なさそうにクリスタに謝った。
しかし、クリスタは決して責めることなく笑顔でリックの方を見ていた。
「でも大丈夫よ。そんな複雑なものではないから。」
「そうなのですか?クリスタ様?」
「そうよ。」
女性の部下の方は、自分が思っていた内容とは少し違うということに反応を示した。
確かにここに来たからには、何らかのテロ行為をするのではと彼女は内心考えていたのだが、そうではないとすると一体何をするのだろうか?
ますます、わからなくなっていった。しかしここはクラウドの指令を直接聞いたクリスタに従うしかない。
「それにしても、バイゼルの国はなかなか発展しているわね。参考になるところがあるわ。」
突然話を切り替えたクリスタはテラス席からバイゼル王国の街並みを見ていた。
クリスタの言う通り、街は発展しており活気があった。それは当然、戦争に勝つことによって領土を増やしたり、腕のある職人を引き入れたりしているからだろう。
エルネストもここ最近発展しているのだが、まだバイゼルには劣っている。
「確かこの建物の作りも立派ですな。エルネストの名匠のヨルゲンセンのものといい勝負と見えます。」
リックはエルネストの有名な大工であるヨルゲンセン一族の作り上げた建物と比較していた。
バイゼルの方はどちらかと言うと、ヨルゲンセンのものより装飾が豪華である。
そして、デザイン的にもどこか惹かれるものがあった。いま座っているテラス席もそうである。
「クリスタ様の言う通り、バイゼルはココ最近戦争の連勝からかなり領土を広げていますね。」
「そうね。バイゼルのこれを見た限りではエルネストには勝ち目が薄いわね…。」
少し悲しそうな表情でクリスタは話した。しかし、なんとして勝たなければならないためそんな弱音も吐いていられなかった。
そんな話をしていると、店の方から女性の店員が3人の方へやってきた。
「お待たせしました。当店名物のバイゼルの珈琲豆で作ったコーヒーです。」
実は先ほど着いた時に注文をとっていたのだ。なんでもバイゼルのコーヒーというのはとても美味しいと他国でも評判らしく旅人がこぞって飲みに来るそうだ。
そのことを知っていた3人コーヒーを注文していたのだった。
「こちらお熱くなってますので気をつけてお飲みください。」
そう言うとプレートからコーヒーを置いていった。すでに濃厚な香りを放っており、鼻腔をくすぐられた。
テーブルに置かれたコーヒーの香りに3人は浸っていた。
「うん。いい香りね。一度飲んで見たかったのよ〜。」
「これは、噂を超えたものですね。」
「はぁ…。いい香り…。くせになりそう…。」
おのおの感想を述べたところで早速コーヒーを口にしていった。
「美味しい…。これがバイゼルのコーヒー…。」
「うん!うまい!」
「帰りにコーヒー豆買って帰ろうかしら。」
3人はコーヒーの虜になっていた。噂というもの超えたバイゼルのコーヒーはまさに上品な飲み物である。
ちなみクリスタは苦いものが苦手なのだが、何故かバイゼルのコーヒーは砂糖を大量に入れずに飲むことができたのだ。それくらい、柔軟に客一人一人に対応できるのがこのコーヒーの強みであるのだ。
「店員さん。これ美味しいわ!」
「さようでございますか?私も嬉しいです。」
コーヒーを褒められたのにまるで自分のことのように嬉しそうにしていた。
そしてしばらくその店員と話していると、なんでもバイゼルのコーヒー豆は現在バイゼル王国の領土で生産されているのではなく、植民地となった国 バーストリリア公国で生産されているらしい。
バーストリリア公国は元々、独立した国であったが数年前に攻め込まれてから、植民地支配を受けているのだ。
「へぇ…。でもどうしてバイゼルで生産していないの?」
クリスタは店員には苦いものが尋ねた。噂で聞いていたバイゼルのコーヒー豆がまさか、バイゼルではなく隣国のバーストリリアで生産されているとは思わなかったのだろう。
「勿論バイゼル産のものも充分美味しいのですが、バーストリリアの土壌がバイゼルのコーヒー豆に適合したらしいので、今ではそちらで生産されています。」
「なるほど、土壌で豆の質が変わるとは…。いい勉強になった!」
リックは店員の話から、何か掴んだような表情をしていた。
なぜかと言うと、リックの実家はエルネスト芋を生産している農家であるらしく、そういった知識は勉強になるのだ。
「褒めていただいてありがとうございます。それもこれも、領土を拡大してくださった女王陛下のおかげなのです。」
「そういえば、ここは王ではなくて女王が支配しているのだっけ?」
「はい、代々この国は王ではなく女王が国を支配してきました。それは、不要な後継争いを起こさないためです。」
そう、バイゼル王国は代々女王が支配してきた国である。勿論現在ほかの国でも、女王が国を支配しているところなどたくさんあるが、それは後継に男が生まれなかったり、第一子が王になる制度でたまたま女性になったり、というものである。
しかし、バイゼルは昔から、女王制であったのだ。勿論、王政の時代もあったがそれははるか昔のことである。
「確かに、バイゼルだけは後継争いが起こったことがないって聞いているわ。」
「失礼ですが、どちらから来られましたか?」
店員は発言からしてバイゼルの人間ではないと考えた。
そんな言葉に少し、ヒヤッとするものの、冷静な表情で言葉を発した。
「私達は諸国を旅している商人よ。エルネスト王国から今回はここによったの。」
とっさにでた言葉であるが、運良く荷物がたくさんあったことと、服装も派手なものではなく地味なものを来ていたことから特に怪しまれることもなかった。
「そうなんですか!?それは長旅ご苦労様です。」
店員は深々とお辞儀をして自称旅の商人に敬意を払った。
「そういえば、エルネストからこっちに来る時に妙なことを聞いたのよ。」
「一体どのようなことですか?」
妙なことに反応した店員はそのことがどのようなことか気になって尋ねてきた。
クリスタは2人と目を合わせて、黙っておいてという言葉をアイコンタクトで伝えた。
それが伝わった2人は特に喋ることもなく押し黙った。
「なんでもバイゼル王国の将の中でエルネスト王国に寝返りを企てようとしている人間がいるらしいのよ。」
「えぇ?それって本当ですか?」
あまりに衝撃的なことに店員はただただ驚いた。クリスタはあまり大きな声にならないように小さな声で話を続けた。
「それがなんでも、兵士長のオルガンと参謀のハーヴェイという人間が裏切りに加担しているって聞いたわ。」
クリスタの方は会話の内容に出てきた2人の人物。このふたりはいずれもバイゼルでは有名な人間であり、他国でも知れ渡っている名将でもあるのだ。
そんな2人がエルネストへの裏切りを加担しているなど、ただ事ではなかった。
もしこれが事実であればバイゼルは致命的な被害を被ることになる。
「そんな…。私達はどうしたらいいのですか!?」
「落ち着いて。これはまだ噂なのよ。根拠はないわ。でももしそうだったら時のために逃げる準備をしておいた方がいいと思うわ。」
狼狽えている店員をなだめるようにしてクリスタは言葉を発した。
ちなみに部下2人は店員と同様に内心かなり驚いていた。しかし、そこで初めて知ったような顔をしてはならないと思った2人はとにかく冷静な表情で話を聞いていた。
「これは噂だから大事にしない方がいいわ…。かえって混乱になるから。」
「わ、わかりました…。」
クリスタは今回のこの噂を誰にも話さないようにと店員に約束させた。
クリスタの言う通り、この噂を鵜呑みにして話してしまえば、かえって国中が混乱してしまうため判断として全く間違っていなかった。
そんな中テラス席に座って新聞を読んでいた男性は突然立ち上がって今までクリスタと話していた店員に会計を頼んできた。
それを応じて店員は店内へと入っていった。
「あの…クリスタ様先ほど噂というのは…本当なのですか?」
「ん?あぁ…あれね……。誰にも言っちゃダメだからね?」
部下の女性がクリスタに尋ねると笑顔で答えた。しかしその笑顔でというのはどこか怪しげで何か裏があるようなものであった。
しかし、それ以上は聞かない方がいいと考えた彼女は何も聞くことは無かった。
当然それはリックも同じであった。
「さて…。どう動くかしら?」




