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*第二話*

 雑草の撲滅は一週間かかった。

 本当に疲れた。しかしそのおかげで農地が姿を露わしたのだ。他にも雑草に混じってハーブや木苺なども発見。『はじめての農場』に色々な作物や植物の図鑑が載っていたからそれを参考にしている。

 赤い色のハーブはお湯で煮ると紅茶に、緑色のハーブは同じくお湯で煮ると緑茶になるみたい。後は香草にも使えるようだ。他にもブルーベリーに似た実、ブルベンやメリーベルというものがあったりとこの世界独特の食べ物も収穫した。甘酸っぱくてすごく美味しかった。


 さて、雑草も撲滅したことだし、農地に何かを植えたいんだけど。当然のことながら種がない。無一文だから雑貨屋で買う事もできないし、どうしよう? と悩んでいると農地が光輝き、ぽんっと何かが出てきた。それは小さな袋で開けてみれば手紙と共になにかの種が入っている。


『神様の加護その二、はじめての農作業。ようやく雑草を撤去できたみたいだね、おめでとう! さっそく何か植えてみたいと思っていると思うからランダムで種を送るよ! 頑張ってね!』


 神様の加護に感謝し、耕した農地に種を撒いて行く。するとまたきらきらと周囲が輝き、ぽんっと芽が出て来るじゃないか! そういえばこの農地にも神様の加護がかかっているんだった。他の場所より植物が育ちやすいとは書かれていたが、まさかの速攻。しかしそれ以上は育たないようだったので水を上げて、次の日を待つことに。

 午後は、残っているブルベンやメリーベルを収穫。腐らないように少しずつ摘む。これ、おやつにぴったりなんだよね。保存ができるような冷蔵庫なんかがあればよかったんだけど……。


 ぽんっ!


 籠を持って家の中をウロウロしていると突然小さな破裂音が鳴って、足元に箱が転がっていた。箱を開けると中にはまた手紙が。


『神様の加護その三、保存箱。冷蔵庫がなくてお悩みかな! そんな時はこの保存箱だよ。この中に生ものを入れればあら不思議、いつまでたっても腐らない! 注意*冷蔵庫が買えるようになったら消滅するよ。期間限定の加護だね。それとブルベンやメリーベルは今や希少な食べ物になっているから町で売ると良いお金になるよ! お風呂にも入り放題さ!』


 便利な加護ありがとう神様! それと最後の一文を読んで私は歓喜した。確かに神様の加護がない場所にはブルベンもメリーベルも生えていなかった。目からうろこだ。今日はもう遅いし、明日町に行って売ってこよう。そしてお風呂だ!




 次の日、朝食を終えて畑を見に行くと作物はぐんと大きく成長していた。この速度を見ると後三日くらいで成長しきるかもしれない。楽しみだ。

 私は保存箱から籠に入ったブルベンとメリーベルを取り出すと、町に向かって歩き出した。町までは徒歩で一時間弱。のんびりと景色を楽しみながら行こう。

 海でカモメさんが鳴くのを眺めながら、ひたすら歩いて町に到着。

 町の入口に立っている警備兵のルドガーさんと挨拶を交わして町に入った。ブルベンとメリーベルは食べ物だし、料理屋さんで売ってみようかとシェフを訪ねてベルを鳴らした。

 開店準備中だったシェフのアドリビルさんは、私の姿を見るとにこやかに微笑んだ。


「おはよう、コノハちゃん。早いね?」

「おはよございます、アドリビルさん。実は珍しい実が手に入ったので、買い取っていただけないかなと」


 布でかぶせた籠の中身を彼に見せるとアドリビルさんは驚いたように目を大きく見開いた。


「これはブルベンとメリーベルじゃないか! こんな希少なものいいのかい?」

「はい、えっと買い取ってもらえます?」

「もちろんだよ。これだけあればケーキが作れるね」


 すごく嬉しそうにアドリビルさんは二つの実を買い取ってくれた。ブルベンとメリーベル合わせてなんと2000G! たくさんお風呂に入れるね!

 ケーキができたらごちそうしたいからまたおいでと言われた私は、それを楽しみにしながら宿屋でお風呂をいただいた。それからのんびりとお風呂上がりの牛乳を堪能したり、町を散策しているとアドリビルさんがやって来て、ケーキができたからおいで! と声をかけられた。

 うきうきしながら店内に入ると、そこには他にお客さんがいた。洋服屋さん兼美容院のオネエ系お兄さんヴィエラさんの妹であるメリエルさんとアリエルちゃんだ。


「あら、あなたも呼ばれたんのねコノハ」

「はい、こんにちはメリエルさん、アリエルちゃん」

「こ、こんにちは……」


 青紫色の長い髪を揺らせて手を振るメリエルさんと対照的に同じ髪色を持つアリエルちゃんは姉の背に隠れてしまった。


「彼女達も買い物にきていてね。せっかくだから希少なケーキを一緒に食べてもらおうと思って。良かったかな?」

「もちろんです!」


 アドリビルさんが運んできたブルベンとメリーベルのケーキはワンホールが大きく、これでもかというほど二つの実が乗せられていて、艶やかに輝いている。それを見たメリエルさんとアリエルちゃんはごくりと唾を飲んだ。


「こんなに沢山の希少な実を乗せたケーキ、初めて食べるわ。楽しみね!」

「どうぞ、お嬢さん方。たくさんお召し上がりください」


 綺麗に切り分けられたケーキを個々に皿に乗せ、私達はいたたきますと手を合わせると一斉にケーキをフォークで突き刺した。実と生クリームの甘い香りが鼻腔を掠め、ケーキを口の中に入れると、ブルベンとメリーベルの甘酸っぱい味が最初に舌の上を転がり、甘すぎない生クリームの深い味わいが口の中にとろけるようにして広がっていく。

 実と生クリームの絶妙なハーモニーに私達は天にも昇る幸せな時間を過ごした。


「ああ、本当に美味しかったわ。ありがとうアドリビルさん」

「お礼ならコノハちゃんに。彼女がブルベンとメリーベルを持ってこなかったらあれは作れなかったからね」


 三人に熱い視線を向けられて私は照れて真っ赤になってしまった。神様の加護で収穫できたようなもなので、私も後で神様にお礼を言っておこう。


「それでおいくらです?」

「お代はいいよ、誘ったのは私だからね」

「でも希少な実、お高いのでしょう?」


 そうだ、彼は私に2000Gものお金を払っているのだからこれがタダならとてつもない損失なのでは! と私が青くなっていると、彼は苦笑しながら首を横に振った。


「私はお嬢さん方に美味しいケーキを食べていただきたかっただけですよ。これからも我が料理屋をよろしくお願いしますね」

「ふふ、もちろんよ!」

「またご飯……食べに来ます……」

「私も! 私も行きます!」


 それで十分ですよ。と笑ったアドリビルさんに私は感謝の気持ちでいっぱいになった。美味しい料理を皆に振る舞うことが好きな彼は本当に良い人だ。

 料理屋さんを出た私達は途中まで一緒に歩いた。メリエルさんが、楽しそうに鼻歌を歌いながら軽やかにスキップしている。よほど機嫌が良いのだろう。アリエルちゃんは私より少し離れて静かに歩いていた。

 なにかお話できないかなと近づけば、彼女は小さくなってしまった。しかしここでひいてはいけない。勇気を持ってお話だ。


「アリエルちゃん、ケーキ美味しかったね!」

「…………うん、実……持って来てくれてありがとう…………コノハ」


 初めて彼女に名前を呼ばれて私は感激のあまり泣きそうになってしまった。ブルベンとメリーベル持って来て本当に良かった! アドバイスをくれた神様にも大感謝だ。

 町の入口で彼女達と惜しみながらも分かれると私は帰路についた。

 まだブルベンとメリーベルは残っているし、時々アドリビルさんの所へ持っていこう。そうウキウキとした気分で私は家に戻ったのだった。




        ********************


≪課題≫


□農場に生えた雑草を片づけよう! クリア

□物を売ってみよう!       クリア

□町の人と交流しよう!その一   クリア





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