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*第一話*

 朝のまどろみに身を任せ、うつらうつらしていると突然、けたたましいノックの音が聞こえ私はベッドから転がり落ちてしまった。

 なにごと!? 敵襲か!?


 寝ぼけた頭で慌てて立ち上がり、扉に向かおうとして途中通り過ぎた鏡に映っていた自分に驚く。髪が大爆発してる! わたわたとシンクに向かい、水と手櫛でなんとか髪を整えると服の皺を伸ばして、扉を開いた。

 そこにはちょび髭が立派な紳士がステッキをついて立っていた。

 男は私の姿を確認すると、きっちりと腰を折るお辞儀をする。


「どうも初めましてお嬢さん。私はこの島にあるメルト町の町長をやらせていただいております、エルスと申します。どうぞお見知りおきを」

「こ、こんにちは! 私は立花木葉です!」


 こちらも慌ててきちんとお辞儀。

 顔を上げれば町長、エルスさんがにこやかな顔で微笑んでいた。


「いやあ、若いとは聞いていましたが本当にお若いですな! あなたのような若者が寂れたこの土地に来て下さり本当に感謝しております。なにもない場所ではありますが、どうぞよろしく」


 手を出されたので私も手を差し出すと、がっしりと握手をされた。瞳に涙がたまっているのが見えて、本当にここに私が来た事を喜んでくれているようだ。

 しかし神様、あなたはどうやってここ買ったの?


「あなたの親御さんからは、きちんとお話は聞いておりますよ! 可愛い娘を独り立ちさせるなんて立派な親御さんですなぁ」


 そういうことか。親御さんって神様のことだよね? ということはここは話を合わせるべきだろう。あいまいに私はエルスさんに向かって微笑んだ。


「ところでコノハさん、一度町においでになられてはいかがですかな? 色々はじめてでありましょうし、道案内をしたいのですが」

「ぜひお願いします!」


 昨日来たばかりで右も左も分からない状況だ、道案内の申し出は大変ありがたいものだったので、強く頷いた。それに町にも行ってみたかったし!


「それでは馬車にお乗りください。町までは徒歩ではかなりかかりますからな」


 急いで身支度を終えた私が外に飛び出ると、ぶわっと風が吹き、思わず目を閉じてしまった。昨日吹いていた冷たい風とはうってかわってほのかに温かく、甘い香りを運んでくる。

 ゆっくりと目を開け視界がクリアになった瞬間、私はあんぐりと口をあけてしまった。一面ピンクの世界。そこかしこの木々がピンクに色づき、可愛い桜のような花が咲き乱れていた。


「綺麗!」

「そうですなあ、こんなに見事なイールスの花は他では見られますまい」


 どこか寂しそうな声音が響いて私は首を傾げる。


「他の場所では咲かないんですか?」

「ええ、ほとんどが枯れてしまいましたな。精霊の怒りをかったせいと言われております。ですから我々は少しでも精霊達の怒りを鎮める為に、供物をささげ祭りを行っているのです。まあ、なかなか成果はみられませんが」

「そうですか……」


 どうやら精霊達がいなくなったことは人間の人々は気が付いているようだ。少なくともこの島の人達は反省して色々行動しているみたい。私も、人生やり直させてくれた神様の為にも農場を発展させて精霊を呼び戻すお手伝いをしないとね!


 決意も新たにエルスさんが乗って来た馬車に乗せてもらった私は、軽快に進む馬車の中から外を眺めた。左手にはキラキラと光る青い海が広がり、右手には広大な土地が広がっている。奥の方には森もあり、さらに向こうには高い山も見えた。とても自然豊かそうだったが、生えているのは雑草ばかりで農業をしているような雰囲気はまったくない。これも精霊がいなくなった影響だろうか。


 外の景色に夢中になっている間に、町に到着。所要時間はだいたい三十分といったところだろうか。馬車から降りると、石畳の地面が広がり、たくさんの建物が軒を連ねている。


「それではご案内いたしましょう」


 エルスさんの後について、私はわくわくした気持ちを抑えられずあたりをキョロキョロしながら歩き出した。

 町の入口近くにまずあったのは、警備兵が勤務する詰め所。ここで町の安全を確保しているようだ。そして次に雑貨屋さん、色々なものが売っており、調理道具なんかもここで買い揃えられそうだ。けど今は無一文なのでなにも買えず……残念。他にも可愛い小物などもありインテリアにも使えそうだった。

 次は役場。町長さんの職場でもあり、平日のほとんどをここで過ごしているそう。土地や家の売買、住人の戸籍管理などを主に扱っているそうだ。受付にいた美人なお姉さんはなんと町長さんの娘さんだそうだ。仲良くなれるといいな。

 次は宿屋さん。島の外からの観光客用のようで、気の良い夫婦が経営していた。内装はとても落ち着いた雰囲気で、明るく清潔感のある気持ちの良い宿屋さんだった。お料理も美味しいらしい。

 後、重要なことが。それはお風呂! 家にはお風呂が備え付けられていなかったので、言ってみればなんとお風呂を貸出ししているそう。それはありがたい。ただし料金がかかり一回100G。今回は特別に入らせてもらったけど、次回からどうしよう……。

 あ、そうだ。お金の単位なんだけど、素直に分からないと言ったら優しく町長さんが教えてくれた。この世界での通貨は(ゴルド)、金貨一枚が10000G、半金貨が5000G、銀貨が1000G、半銀貨が500G、銅貨が100G、半銅貨が10Gとなるようだ。

 これはしっかりと覚えないといけないな。

 次はお料理屋さん。二十代後半くらいの若い男性のシェフがお出迎えしてくれた。朝ごはんを食べていなかった私はエルスさんにおごってもらって彼の料理を堪能した。ご飯に味噌汁、お魚のフライと日本人定番の定食があったことに驚きを隠せない。味も懐かしいお母さんのご飯をいただいているような優しい味わいだった。うん、いつか私の農場でも米を作る!

 次は洋服屋さん兼美容院。全身コーディネイトするにはうってつけの場所だね。ここの店員さんはオネエ系のお兄さんでした。後は可愛らしい妹さんが二人いて、一番下の子は私と同じくらいだったんだけど、恥ずかしがり屋さんのようででてきてもらえなかった……くっ、いつか絶対仲良くなってみせるからね!

 次は診療所。おじいさん夫婦が経営しているアットホームな感じの病院だった。患者さんがいたから挨拶はできなかったけど、なにか体に不調があったら頼ろう。

 次は教会。壮年のおじさんが神父を務めていて、祝福の言葉をもらった。ここでは住民の結婚式なども行われるようだ。結婚式と聞いて、歯の奥がぎりりとなってしまうあたり、私は終わっている。だ、大丈夫だ若返ったんだからまだチャンスはあるとも。

 女神様を象ったステンドグラスもとても素敵だった。

 最後に船着き場。ここから島と大陸を行き来するようだ。恰幅の良い船長さんが豪快に笑いながら手を振っていた。


 と、いう感じで矢継ぎ早ではあったが町の主な施設は紹介してもらった。


「住民との交流はこれからゆっくりなさればよろしいでしょう」

「はい、今からとても楽しみです!」


 それほど大きくもない町だ道にも少し慣れたし、次は一人で来ても大丈夫だろう。

 住人の人とはあまりおしゃべりもできず残念だったが、それはまた今度時間ができた時に頑張ろう。何人か友達になれそうな人をロックオンしたしね!


 太陽が中天に差し掛かる頃、私はエルスさんと別れて馬車で家に戻った。

 送ってもらった馬車を見送って、私は敷地内に鬱蒼と生える雑草を見渡す。腕まくりをしていざ準備万端。

 まずは雑草の撲滅だ!

 住人と仲良くなるにも、農場の方も発展させないと先に進めないしね。無一文では町に行っても何も買えないし、とりあえずこっちを優先させないと。


 気合一発、私は雑草を根っこから引き抜いた。




       *********************


≪課題≫

□町に行ってみよう! クリア




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